パンサラッサがサウジカップを鮮やかに逃げ切った! 確かにその通りなのですが、何故日米のダートの猛者たちが最後までパンサラッサを捉まえられなかったのか、その理由をごく大雑把に考えてみたいと思います。まあ、内容的には何となく今さら感もあるでしょうが、改めてやっておくと気持ちがスッキリしますので(^^ゞ
整理するネタは例によって400mごとのラップタイムになります。JRAのように主催者が200mごとのタイムを整理してくれるわけではないのでアレですが、400m刻みでも大体の傾向はつかめるので問題ないでしょう。
では早速ですが、こちらが2023サウジカップでパンサラッサが刻んだタイムです。
2023 サウジカップ(G1/ダ1800m)
0-0400m 23.77
0-0800m 45.85
0-1200m 71.17(1.11.17)
0-1600m 96.66(1.36.66)
0-1800m 110.80(1.50.80)
パッと見ただけで気がつくのは、0-800mが45秒台ってムチャクチャ速いよなぁ?ということです。日本のダート中距離戦だと(1800mで1.50.8秒だけならまだしも)0-800mが45秒台ってのは聞いたことがないですよね(^^;) (もちろん、サウジのダート1800mはスタート地点からずっと直線を走るので、コーナーでの減速がない分だけ速くなることは考慮すべきですが、一方、日本では助走区間・スタートから約5mのタイムを計測しないので、0.5~1秒程度の下駄をはいていたりしますので…)
その上で、1600-1800mのタイムが極端に落ちて14.14秒となっていて、さすがのパンサラッサもゴール前は一杯一杯、ギリギリの状態で粘り込んだことが窺えます。日本式に上り3F(1200-1800m)で言うと39.63秒なのですが、勝手な想定で1200-1600を200mごとに分割すると、12.30-13.19-14.14秒みたいなラップになっていたのでは?と考えられます。
となると、常識的には『終いで失速した逃げ馬を差し馬が捉える…』というカタチになるはずなのに、今年のサウジカップはそうならず…。理由は単純でありまして、前半の0-800mが極端に速かったため、直線に入った時には後続勢にパンサラッサを交わすだけの余力がなかった、パンサラッサが失速し始めた時には、後続勢も一緒に失速していったからだと思われます。
そうなんです、これぞまさにパンサラッサの真骨頂、安カツさんが、分かっていても捕まえられない『魔性の逃げ』と形容したとおり、後続勢が『気付いたら、まんまと消耗戦の沼にハマっていた』ってことなんじゃないでしょうか。
でも、実際に追い掛ける立場になったら難しいですよね。あまり離れないようについていけばコチラもバテてしまう、かと言って離れてしまえばセーフティリードを作られてしまう恐怖があるわけで。。これが(日本の)芝コースであれば、どんなに離れてしまっても、イクイノックスのように3F32秒台の脚で追いつく可能性はありますが、そもそもダート戦で上り32秒台なんてありえないわけで、そりゃあ『ある程度はついていきたい』という気持ちになってしまいますよね。
ちなみに、今年のサウジカップがどんなペースだったかを理解するために、比較対象として米国最強スプリンター・エリートパワーが勝ったリヤドダートスプリントのレースラップと、地元サウジのコミッショナーキングが勝ったサウジダービーのレースラップを見てみます。エンブレムロードが勝ち、カントリーグラマーが2着だった昨年のサウジカップも載せましたが、今年のトラックは(チップの量が減って)米国やドバイのダートに近い仕様に変わっているらしく、単純タイム比較はしない方が良いでしょう。
2023 リヤドダートスプリント(G3/ダ1200m)
0-0400m 22.59
0-0800m 46.20
0-1200m 71.01(1.11.01)
2023 サウジダービー(G3/ダ1600m)
0-0400m 21.83
0-0800m 44.98
0-1200m 70.23(1.10.23)
0-1600m 98.38(1.38.38)
2022 サウジカップ(G1/ダ1800m)
0-0400m 24.80
0-0800m 47.86
0-1200m 72.80(1.12.80)
0-1600m 97.83(1.37.83)
0-1800m 110.53(1.50.53)
これを見ると一目瞭然、パンサラッサはスプリント戦でエリートパワーがマークしたタイム、1.11.01に遜色ないラップで1200mを通過していたんですよね。サウジダービーはコミッショナーキングとハヴナメルトダウンがテンからビッシリ競り合い、さらに前傾ラップが顕著でした。そのため前半が極端に速い代わりに終いは両馬ともバテバテ、上り3Fはおそらく40秒を超えているのではないでしょうか。当然のようにパンサラッサはこのレースより1.7秒ほど速いラップで1600mを駆け抜けています。
一方、昨年のサウジカップは0-800mが47.86秒と落ち着いた分、1600-1800mは12.7秒とあまり失速しておらず、いわゆる平均ペースに近いラップになっています。全く違うラップになった昨年と今年を連続2着したカントリーグラマーはやっぱりスゴイという話は別にして、とにかく、今年のサウジカップが常識外れのハイペースだったことは確かじゃないでしょうか。
サウジのダート戦におけるテンの速さをさらに実感するために、昨年パンサラッサが勝った(同じワンターン1800mの)ドバイターフのレースラップと、日本のレースからもうひとつ、ジュンライトボルトが勝ったチャンピオンズC(こちらはコーナー四つの競馬なのを考慮する必要があります)のラップも載せておきます。
2022 ドバイターフ(G1/芝1800m)
0-0400m 24.29
0-0800m 47.06
0-1200m 69.60(1.09.60)
0-1600m 92.68(1.32.68)
0-1800m 105.77(1.45.77)
2022 チャンピオンズカップ(G1/ダ1800m)
0-0400m 23.9
0-0800m 49.8
0-1200m 75.0(1.15.0)
0-1600m 99.6(1.39.6)
0-1800m 111.9(1.51.9)
なんと、パンサラッサ自身がドバイターフで刻んだ0-800m:47.06秒よりも、今回のサウジカップの0-800mは1.2秒も速いんですね。。確かに、本来ハイペースに慣れているはずの米国馬も追走に苦労していましたし、地元サウジ勢が、後方にいたままスタミナを削られてしまったのも仕方がないかもしれません。(1400mのG1を勝つようなテイバですら大変そうでしたから…)
また、チャンピオンズカップのレースラップを見るにつけ、今回のサウジカップで一番割りを食ったのはジュンライトボルトじゃないかと思えてきます。何しろチャンピオンズCでは、0-800mが49.8秒、0-1200mが1.15.0秒という、ゆったりした流れを4角10番手から差し切ったわけで、そんな競馬が得意な馬に、いきなり0-800m45秒台のレースに対応しろというのはさすがに無理があるかもなと…。(ジュンライトボルトが走った芝のレースもザッと見ましたが、0-800mが46秒を切るレースは見当たらず(^^;))
話が発散しそうなのでこの辺にしますが、要するに今年のサウジカップは、パンサラッサが作りだしたハイペースの罠に後続がハマり、まんまと消耗戦の沼に引き込まれてしまった結果、終い200mが14秒台の流れを誰も差し切れなかったレース…ということだと思います。これはもう良いとか悪いの話ではなく、パンサラッサが出るレースには今までの常識が通用しないということであり、おそらく今後もパンサラッサの対戦相手たちは頭を悩ませることになるでしょう。
次走がもしもドバイワールドカップだとしたら、1Fの距離延長がどう影響することになるのか…。1800mで終いが14秒台なら、2000m戦ではもっと歩いちゃうはず…というほど競馬は単純でないだけに、いろいろ想像するのがとても楽しいですね。(メイダンの2000mにはコーナーが四つあり、絶対に0-800mが45秒台になったりはしませんが、その分、コーナリングが大好きなパンサラッサには有利かもしれず。。それに、どうせいつでもどこでもやることは決まっていますし、あとは楽しく妄想するだけ!)
一方、ライバル陣営にとっては、今年のキングアブドゥルアジーズとメイダンのダートはどの程度違うのか、絡み合う相手関係とペース読み、パンサラッサがさらに状態を上げてくるのかなど、考えることがたくさんあって大変そうです。果たして矢作先生はそのあたりをどうお考えになるのか、次走の決定・発表がいつなのか、再びワクワクしながら見守りたいと思いますm(_ _)m
最後に、あえてドバイワールドカップでの強敵を挙げろと言われたら、カントリーグラマーは文句なしの強敵、どの程度強いか分からないながらも、一応、敬意を表してアルジールス、あとはパンサラッサのペースに楽々ついてきたうえに、それほど失速しなかったジオグリフでしょうか。。もちろん他の日本勢も強敵ですが、そこは何とかしちゃうしかありません(^^ゞ
下は、主催者さんが上げてくれた、常識はずれの暴走(?)を終えたパンサラッサと池田さんの写真です。やはり、こういう絵面は本当に良いですし、リラックスできているようでホッとしました。
PANTHALASSA's been hungry! 🌱 😋#TheSaudiCup🏆 #サウジカップ🎌 #パンサラッサ pic.twitter.com/I3ZK0hJvuO
— The Saudi Cup (@thesaudicup) February 27, 2023
PANTHALASSA パンサラッサ!!!
— The Saudi Cup (@thesaudicup) February 25, 2023
Japan have their winner of #TheSaudiCup🏆 #サウジカップ🎌 pic.twitter.com/OpUu5S4itc
やっぱり、前半超ハイペースだった訳ですね。
次戦がどちらになるかですが、以前書いたように得意距離、ワンターン左回りということで、適性はドバイターフだと思いますが、今年後半を矢作先生がどう考えておられるかの要素が抜けていました。
おそらく、BCクラシックで名実共に世界一を狙いに行くことをお考えでは無いかと思うと選択肢はドバイワールドカップ一択になるはず。
サウジカップと全く異なる4つのコーナーですが、主導権はこちら、参加有力馬にはこのラップを見て大いに疑心暗鬼になっていただきましょう。その時点で沼にハマっていることに気づかないまま、、、。
サウジカップの前半1000mだと58秒台前半、日本式に補正すると57秒台になると思います。芝で前半1000mを57秒台で突っ込むパンサラッサの良さが、ダートで活きましたね!(とはいえ芝並みの前半には驚きです)
このようなアメリカダートのようなラップを重いとも言われるミスペンバリー血統(モンジュー&サドラーズウェルズ)が逃げて勝利するのですから、血統も競馬も奥深いです。
いえいえ、恐縮です。
凄いハイペースだったんじゃないの?的な話が結構出ていましたし、自分なりに整理しておこうかと。
でも、ワンターンの1800mという条件は意外に少ないので、そこが難しいですよね。
いずれにしても、ドッカン系ハイペースだったのは間違いなし。さすがパンサラッサです!(^^)
日本式に1000m通過何秒、上り3F何秒と出してくれた方が直感的に分かりやすいですよね(^^;)
どちらにしても、パンサラッサ以外がこれをやったら怒られるレベルかも…
追い込んできたカントリーグラマーはもちろんですが、食らいついてきた日本のダート馬たちも強いですよね(^^)
米国馬が早々に騎手の手が激しく動き出したのは意外でしたが、ラップタイムを見れば納得。ハイペースの米国競馬でもこれはさすがに異例でしょう。
そう考えると最後までついてきた他の日本馬たちは思っていた以上に強いと思います。特に初ダートだったジオグリフ。次は一番の強敵になるかもしれません。
カントリーグラマーは沈んだと思ったのですが、直線で巻き返してきました。何なんでしょうね。馬の地力もあるでしょうが、なんかデットーリしか持っていない変なスイッチを押したような(笑)
きっとめちゃくちゃ消耗したはずです。ドバイでの敵はまたしてもルメールではないでしょうか。
天皇賞・秋:後続がついて来なかったパターン。
サウジカップ:後続がついてきたパターン。
芝、ダートの違いはありますが、パンサラッサがやったことは全く同じ。でも、これだけ見た目が違うというのがすごく面白いです。
パンサラッサのトレードマークは『大逃げ』ではなくあくまで『ハイペース逃げ』なんですよね。
その上で、やはりジオグリフは強敵に思えますよね…
仰る通り、ダート適性はかなりのものだと思われますし、ルメールさんもいろいろ考えてくるでしょうし…
それに、やっぱりカントリーグラマー&デットーリさんのコンビは相当に強そう…
パンサラッサ&吉田豊コンビに対するメラメラもあるでしょうし、『デットーリスイッチ』の発動は常に脅威ですよねぇ(^^;)
パンサラッサのレースでは、香港みたいにラップタイムを表示しっぱなしにして欲しいです😅
あのラップで走れたということは、パンサラッサにとってはサウジのダートもドバイの芝も府中の芝も同じ地面なんですかね。
中山の砂は、ちょっと好みじゃない…ってとこでしょうか。
海外競馬だと、なかなかJRAさんと同じサービスとはいきませんよね。
でも、400mごとのタイムもなかなか新鮮で面白いです(^^)
師走Sの11着に関しては、中山の砂というより本格化前だったことの方が大きい気がします。
成長による地力強化と逃げ戦法の確立、これにより、ようやく本来の能力が開花したということでしょう!
ちなみに、真偽は別にして、パンサラッサと吉田豊騎手が『地面の素材は関係ない』と思っている可能性は高いですね(^^;)