東京ナイト

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「ペヨトル興亡史」

2010-06-04 23:20:15 | 
本は「ペヨトル興亡史」。



かつて、ペヨトル工房という出版社があって、高校生の頃、この出版社が出す雑誌「夜想」を耽読していた。

「夜想」は異端的、耽美的なテーマを特集する雑誌で、今から考えてもかなり先鋭的な内容だったと思う。
「オペラ」ではクラウス・ノミを知り、「テロ」では都市で孤独な戦いを繰り広げる革命戦士を想像し、「畸形」では禁書を読んでいるかのような静かな興奮を覚えた。

もう20年以上前に読んだ雑誌なのに、いくつかの特集の内容ははっきり思い出すことが出来る。

で、この本は、2000年に解散したペヨトル工房主催者、今野裕一さんが書いた創業から解散にいたる20年の記録。
懐かしい特集の思い出話だけでなく、解散に至る生々しい取次とのやり取りなども記録され、出版業界の裏話としても読めた。

高校生の頃あれほど読んだ「夜想」もある時期からまったく読まなくなっていて、ペヨトルが解散したことも知らなかった。
読まなくなったのは、僕が大人になったと言うこともあると思うけれど、「雑誌」という媒体の持つパワーが落ちてきたからかもしれない。
解散の頃は、ちょうどインターネット黎明期で、この本にもテレホーダイとか懐かしい言葉が出てくるけど、そうした情報やメディアの変革期を迎えたこの時代と「夜想」の様な、ある意味「指導的」な雑誌が合わなくなってきたのかもしれない。

情報の量は今のほうが圧倒的に多くて、例えば「夜想」の誌面から想像するしかなかったクラウス・ノミの歌う姿もネットであっという間に検索できる。
でも、僕は、細かい級数で書かれた「夜想」で、ノミの事を想像していたあの時間を持てたことを幸せに思う。
情報はあればいいってもんじゃないよね。
iPadやその先の電子書籍が普及した次の時代、紙の本を後生大事に溜め込んでいた今の事をたぶん懐かしく思うんだろう。


で、「夜想」。
当時のスタッフ達が集まって復活してたみたい。
イベントとかも頑張っているみたいですごいです。
http://www.2minus.com/index.html