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ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

文部科学省は日本に革新的イノベーションを起こす政策を発表しました

2012年10月07日 | イノベーション
 文部科学省は、ここ数年間、日本企業が大きなイノベーションを起こしていないとの課題を解消するために、来年度の平成25年度から日本にイノベーションを起こす新施策を始めると、発表しました。

 その新施策の名前は、その名の通り「革新的イノベーション創出プログラム」です。2012年10月4日に東京都千代田区で、文科省は「日本再生を牽引するセンター・オブ・イノベーション(COI)の構築」という事業説明会を、大学や公的研究機関(研究系独立行政法人)向けに開催しました。



 この事業説明会は、大学や公的研究機関(研究系独立行政法人)などを対象に事前説明し、大学や公的研究機関などに産学連携を実施する大規模型拠点型などの事業計画を準備するガイドラインを示すためです。

 革新的イノベーション創出プログラムは複数の構成要素施策で構成されています。その主要施策である「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」(仮称)は、日本の大学や公的研究機関などに、大規模型拠点型を約4カ所、フォーカス型拠点を約8カ所程度選定する計画だそうです。拠点の数は、現時点では目安だそうです。

 大規模型拠点型とフォーカス型拠点は、原則3年~9年間にわたって運営され、革新的イノベーションをつくり出す産学連携拠点です。このため、文科省などは、大規模型拠点型に対して、1年当たり約7億円、フォーカス型拠点に対して同3億円の運営資金を提供する計画です。その上、大規模型拠点型とフォーカス型拠点には、それぞれサテライト拠点が約10カ所設けられる仕組みです。各サテライト拠点にも、1年間当たり3000万~5000万円の運営費が投入されるそうです。この結果、大規模型拠点型は総員約70人で、サテライト拠点を含めると約100人程度で運営される見通しです。

 ただし、大規模型拠点型とフォーカス型拠点の拠点数や運営費などは「総額予算の中で柔軟に対応する」と、文科省のCOI構想検討タスクフォースは説明しています。

 さて、ご説明が遅くなりましたが、分野融合・新領域での産学連携事業である革新的イノベーション創出プログラムの最大の特徴は、目指すイノベーションの課題設定を、文科省などが設ける「COI推進委員会」(仮称)が日本の政策課題を反映してトップダウン型で定めることにあります。

 このトップダウン型で提示された課題に対して、大学や公的研究機関などが解決案を提示して公募に応じるそうです。COI拠点の課題の例示としては「ヒトとロボットの境界を消し去ることで高年齢社会を支えるCOI」などが示されています。

 革新的イノベーション創出プログラムは3段階程度のステージを持ち、最初の第一ステージでは、文科省などの行政側がリスクマネーを投入します。ステージが進むに伴って、参加する企業はマッチングファンドとして応分の投資マネー負担を増やていく運営資金の考え方を導入します。これによって「事業終了後も拠点として自立し、イノベーションを持続的に創出する仕組みを確立することを目指す」と、文科省のCOI構想検討タスクフォース)は説明します。

技術革新の着想が得られる発想支援型データベースを開発し始めた話です

2012年10月04日 | イノベーション
 2012年10月2日に東京都台東区上野の国立科学博物館の日本館講堂で開催された公開ワークショップ「生物多様性を規範とする革新的材料技術」を拝聴した話の続きです。

 全体で10件程度発表された講演の中で、一番インパクトを感じたのは、北海道大学大学院教授の長谷山美紀さんが説明した、技術革新の着想が得られる発想支援型データベース開発に着手している話です。

 長谷山さんは「生物学と工学の連携基盤になるバイオミメティクス・データベースを構築します。このデータベースでは、技術革新の着想が得られる発想支援型の仕組みを組み込んだ“知の構造化”を実現します」と発表しました。



 文部科学省が平成24年度(2012年度)の科学研究費の新学術領域として設けた「生物多様性を規範とする革新的材料技術」プロジェクトは、3つのグループで構成されています。中核となるのは、生物規範設計を実際に担当する「B01」グループです。具体的には、生物が持つ機能などを解明して革新的材料技術を産み出す研究グループです。

 生物規範設計を担当する「B01」グループに、新しい発想を産み出すツールとなるデータベースを提供するのが、長谷山さんが所属する「A01」グループです。生物規範の基盤となるデータベースを構築するのが目標ですが、「専門分野が異なる研究者に対して、形式知になっていない暗黙知のクラスターを提供し、暗黙知クラスターから形式知を見いだす“気づき”を提供することを目指しています」と説明します。分類されたデータを提供するのではなく、新しい発想を提供するツールとなる生きているデータベースだそうです。

 長谷山さんの研究グループは、科学技術振興機構(JST)の研究ファンドを受けて、既に先行研究を始めているそうでうす。10月2日の講演では、発想支援型仕組みを盛り込んだバイオミメティクス・データベースの先行事例として、昆虫の身体の微細構造を示す、走査型電子顕微鏡(SEM)の画像データベースを発表しました。この画像データベースから関連するクラスターを作成した際に、予想したクラスター以外に、別のクラスターがつくられている実例を示しました。「用いた画像データには簡単なタグ(基本情報)しか付けていないが、異種データベースを横断検索すると、暗黙知クラスターを作成する能力を持っている」と説明します。

 日本には大学などの学術組織が作成したさまざまなデータベースが多数あります。ところが、これらを横断的に検索し、本当にほしいデータや、予想もつかなかったデータを提供するスーパーデータベースはまだ発展途上です。まさに、“ビッグデータ”をどう使いこなすかという根本的な課題になります。

 生物規範設計を担当する「B01」グループの技術シーズを受けて、3番目の生物規範社会学を担当する「C01」グループは、生物規範工学を、社会に安全かつ効果的に普及させる役割を担うそうです。この中では、TRIZ法という発想術を用いた革新的問題解決法などを確立する研究も実施される計画だそうです。



 人間は、昆虫などの多様な生物から多くのことを学ぶ時代を迎えています。その生物が持つ多様性から形式知を抽出するツールとなるデータベースの構築は、始まったばかりです。今後は、予想もしなかった知識が産まれてくる可能性があると、なんとか学びました。専門用語の海で、おぼれかけましたが。

公開ワークショップ「生物多様性を規範とする革新的材料技術」を拝聴しました

2012年10月03日 | イノベーション
 2012年10月2日に東京都台東区上野の国立科学博物館の日本館講堂で開催された公開ワークショップ「生物多様性を規範とする革新的材料技術」を拝聴しました。

 文部科学省が科学研究費の新学術領域として「生物多様性を規範とする革新的材料技術」というプロジェクトを立ち上げたことを記念するキックオフの公開ワークショップです。



 この「生物多様性を規範とする革新的材料技術」プロジェクトが目指すものは壮大な目標です。人間は現代文明を機械や電気、情報、化学、材料などの工学技術を基に築いていますが、そのエネルギー効率や廃棄物の再生などは、昆虫などの生物にはかなわないという現状認識です。この公開ワークショップでは、例えばノミは体長の50倍も跳躍できます。人間はできないばかりか、人工の機械では足元にも及びません。

 人間はサメの皮膚をまねた水着やガ(蛾)の目の仕組みを利用した光の無反射フィルム(「モスアイ」と名付けています)などを実用化しています。一番有名な生物模倣(バイオミメティクス)は、ハスの葉表面の撥水(はっすい)現象の模倣です。人類は、昆虫などの生物から学ぶ始めた段階としては、入り口に入ったばかりの状況に過ぎないとのことです。

 「生物多様性を規範とする革新的材料技術」の領域代表をお務めの東北大学教授の下村政嗣さんは「単純な生物模倣(バイオミメティクス)から、生物の本質から学ぶ生物規範工学に進まないと、人類は成長できない」と主張します。例えば、アリやハチの情報交換の仕組みそのものは単純ですが、これを基にかなり複雑な社会システムを構成しているそうです。現在の人間が情報科学に基づく複雑なコンピューターシステムを用いているのに対して、アリやハチは、簡単な仕組みを使って高度な社会システムを実現しています。地球上の生物種の半分以上を占める昆虫が、長い間の進化過程で獲得した機能は、人間の想像を超える高性能・高機能を獲得しているそうです。

 生物が持つ高性能・高機能を利用できるようになれば、現代の文明社会を、自然のメカニズムを取り込んだ“自然化社会”を築ける可能性が出てくるそうです。昆虫などの生物が持つエネルギー変換や食料生産などを一部でも獲得できれば、本当の持続可能な社会ができると、「生物多様性を規範とする革新的材料技術」というプロジェクトに参加している大学などの教員・研究者は考えています。

 当面は細胞より少し小さいサイズの「サブセルラーサイズの構造」での生物規範工学を目指すそうです。例えば、昆虫が持つ接着機能を実用化できると、水中でも強力な接合強さを持つ、有機物系接着剤が実現できるなどの提案がありました。実用化までには、かなりの紆余曲折(うよきょくせつ)がありそうです。

 その一方で、ドイツを中心とした国々がバイオミメティクス(生物模倣)の国際標準化が始まりました。日本としても、この国際標準化への対応しなければならないのだそうです。壮大な話過ぎて、長くなったので、この続きは明日にします。

イノベーション・ジャパン2012では、さまざまな研究成果が展示されていました

2012年09月28日 | イノベーション
 東京都千代田区有楽町の東京国際フォーラムで9月27日から28日までの2日間にわたって、大学見本市のイノベーション・ジャパン2012が開催された話の続きです。

 大学や工業高等専門学校などの研究成果300件を展示し、企業や個人などに技術移転する技術シーズを示しました。



 現在、日本ではライフイノべーションの一環として、医療機器の研究開発が盛んになっています。イノベーション・ジャパン2012でも多数の研究成果やその試作品が展示されました。

 その一つが北九州工業高等専門学校が開発した、ロボット技術を利用した注射薬の自動仕分け装置です。多種多様な注射薬を、画像処理技術で正確に分類し、整理するシステムです。



 まずCCD(電荷結合素子)カメラで対象物を測定し、その位置や姿勢を測定し、貼ってあるバーコードを読み取って正確に、その注射薬の種類を判断します。その測定結果を基に、水平多関節ロボットの手が対象物の注射薬をつかんで、分類に従って所定の場所に置きます。



 病院などでは、医者が患者の溶体に合わせて、注射薬を選んで治療しようと準備している内に、患者の溶体が変わって治療法が変わることがあり、使いかけた注射薬を約30%は使わずに戻すそうです。

 この使いかけた未使用の注射薬を元に戻す作業は、薬剤師にとってはかなり大変な作業であるため、これをロボットに代行させるシステムを開発したそうです。開発されたシステムは、セントラルユニ(東京都千代田区)が製品化し、2010年2月に病院に第一号製品が納品されたそうです。日本が得意とするロボット技術と画像処理を組み合わせた医療向けの製品です。

 独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は自律型の海底無人探査機「ゆめいるか」を展示していました。



 日本周辺の海底には、メタンハイドレートやレアメタル(希少金属)などの資源があると考えられています。この海底無人探査機は姿勢を水平に保ちながら、合成開口ソナーによって、海底の地形を高精度で測定できるそうです。

 将来、製品に採用されると、それなりの製品・サービスになりそうな研究開発成果が並んでいました。ただし、自分の研究開発成果を、専門用語をあまり使わずに、分かりやすく説明する科学技術コミュニケーション能力が高い説明員は相変わらず少なかったです。

東京国際フォーラムで、大学見本市イノベーション・ジャパン2012が始まりました

2012年09月27日 | イノベーション
 東京都千代田区有楽町の東京国際フォーラムで9月27日から28日までの2日間にわたって、大学見本市のイノベーション・ジャパン2012が開催されています。

 このイノベーション・ジャパン2012の謳い文句は「大学などの最先端技術シーズと産業界のマッチングイベント」です。大学などの研究成果に基づくシーズと、企業などが求めているニーズのマッチングを図るとのことです。



 大学や工業高等専門学校などの研究成果300件を展示し、企業や個人などに技術移転するプレゼンテーションをすることを目指しています。



 「情報通信」「ライフサイエンス」などの10分野別に、各研究成果は展示されています。各研究成果は最先端技術シーズであるだけに、その内容はなかなか難解です。その研究成果の中から、見た目で分かりやすい研究成果を紹介します。

 見た目で印象に残ったのは、和歌山大学システム工学部光メカトロニクス学科の研究成果である「パワーアシストスーツ」です。10キログラムから30キログラムの重量物などを持ち上げて運ぶ重作業を支援する、腰や股関節をアシストする“装着型ロボット”です。





 腰や股関節の関節角度や靴底にかかる力の変化を基に、パワーアシストスーツを装着した人の動きを制御用コンピューターが推論し、その動きをアシストするように、電動モーターを動かして、力を支援する仕組みです。

 用途としては、ブドウやモモの収穫作業、袋かけ作業、果物の花の摘花作業などの農業用途です。その各作業の負担を軽減することを目指しています。