公開土太王 vol46 最終章 (第92話)
龍城を占領した高句麗のタムドク王は、幽州を攻める策を考えていた。
船を使って兵を移動して、後燕軍に悟られないようにし、幽州に入った。
幽州を占領した後、後燕軍と北魏軍を挟み撃ちにする作戦を立てたのである。
タムドク王:動揺しているのは後燕と北魏のほうだ。
ここで抵抗する隙を与えてはならぬ
少しでも早く幽州を抑え、龍城に戻ってこい
モドウヨン将軍:挟み撃ちにすれば、敵は大きく慌てて勢いを失います。
ユリ副将:ウンシム副将以下、天軍の兵たちが命を落としました。
幽州を占領した敵軍がこちらに向かっています
タムドク王:幽州に残っている敵兵は?
偵察兵:北魏軍1万が城を守っています。
ファンフェ大将軍は今すぐ軍船で幽州に向かえ、急げ時間がない
ユリ(元契丹の女兵士):案内人が必要でしょ私も行きます
龍城に到着した後燕と北魏の連合軍。
コウン:馮跋将軍(フンバイチャングン)そう簡単には龍城を取り戻せぬぞ。
馮跋将軍:分かっております。高句麗軍は籠城戦で力を見せます。
それにタムドクは傭兵術に長けています。
どのような奇策を講じてくるか
コウン:ますは偵察兵を送り、龍城の周辺を徹底的に探れ
高句麗軍がどう動くか把握した後策を考えよう
城を取り戻す以外、今は何も考えるな
今や、我が軍は籠城戦になっても十分に勝てる状況にある
一方、龍城のの高句麗軍。
タムドク王:伏せ兵を置けそうな場所を城の外に探しておけ、
ヘモオウル将軍あえて危険を犯してまで兵を城から出すのですか
タムドク王:都である龍城を手に入れたとはいえ、後燕の領土に違いない
各地で後燕のために援軍が動いている
北魏の大軍まで加勢しているのだぞ
都を抑えたと言って重要なことを忘れるな
コウンを捕まえることだ。この戦での真の勝利はないと思うがよい。
コウンと主な武将たちを捕まえることに全力を挙げねばならぬ。
後燕と北魏の連合軍。
馮跋将軍:ここから龍城までは3日の距離です。
敵は我らの動きをつかんでいるでしょう。
ユジョン:今は龍城を攻めるより方法はありません
コウン:攻める前に偵察兵を送り、敵の動きをとことん調べよ
さらに龍城に残っている兵と接触せよ
部下:捕虜になっている兵を脱出させ、城内を混乱させます
龍城の高句麗軍。
タムドク王;兵の置けそうな場所を見つけたか
チョンミョン:4箇所ほどありました。
後燕軍を追い込めそうな場所も見つけました。
タムドク王;コウンは周到な奴だ。中途半端ではこちらがやられるぞ。
敵軍の動きは?
偵察兵:速度をあげて龍城に向かっています。あと3日で到着するかと
タムドク王;ファンフェ将軍たちは?
偵察兵:明日には幽州には到着します。
タムドク王;慕容雲(ボヨウン)と馮跋将軍(フンバイチャングンは全軍で龍城を取り戻そうとするはず
大将軍が幽州を占領して後燕の後方を討つまで龍城を守り抜くのです。
待ち伏せをして退却する慕容雲を捕まえる
モドウヨンとカルサムは、死力を尽くして龍城を守り抜け。
後燕と北魏の連合軍
伝令:幽州城が再び高句麗軍に奪われました。
馮跋将軍:どうやって高句麗軍は幽州に?
コウン:もしや船を使って幽州に向かったのか
伝令:幽州に着くや民の協力を借りて城門を開けさせて夜襲を
城を守っていた北魏の兵は戦死または捕虜に
馮跋将軍:もし奴らが幽州から龍城へ引き返せば、我が軍は前後を高句麗んい挟まれることに
ユジョン:陛下、何か策を立てねばなりません
部下:高句麗軍は大軍とみてよいでしょう。
そうなると、龍城にいる兵は少ないはず
早急に龍城を落とせば、戦況を有利に変えられます
コウン:すぐに兵を動かす準備を整えよ
隙を与えずに龍城を攻める。そして3日以内に落とすのだ
そうしなければ我らに残るのは死のみである
馮跋将軍:休みなく攻めます。
龍城の城外の伏せ兵と共にいるタムドク王。
タムドク王:周囲に目を向ける余裕がなくなった証拠だ
部下:城を守り抜けるでしょうか
タムドク王:十分に守り抜けるはずだ
後燕の民も力を貸してくれている
ヨソッケ:後燕の民の協力を得て龍城に入る抜け道も確保しました。
部下:ノサと天軍が密かに動いています。
タムドク王:(ファンフェ)将軍たちは?
部下:武具などを軽くして急ぎ移動してくるので明日の昼過ぎには到着します。
タムドク王:では、攻撃は明日だ。
ヘモオウル将軍:作戦通りにですか?
タムドク王:状況からして後燕は明日にも全軍で攻めてくる。
私はファンフェ大将軍と合流して守りが手薄な後方から後燕を急襲する
皆は後燕の指揮部隊が退却し始めたらおびき寄せて一網打尽にせよ
明日が最後の決戦になる。
いかなる失敗もゆるされぬぞ。
見張り以外は全兵を休ませておけ
コウン:一日経っても何の連絡もない。高句麗軍に慌てた様子もない。
馮跋将軍:我らの動きをすべて知られたのでしょう
ユジョン:休みなく移動した後、攻撃を続けてきました。
これでは兵の士気も落ち何の成果もありません。
コウン:このままでは、前後から挟み撃ちにされるだけだ。
兵を残す必要はない。全軍で総攻撃を仕掛けよ。
伝令:後方から高句麗軍奇襲攻撃を仕掛けてきました。
馮跋将軍:なぜ高句麗軍が城の外にいるのだ
幽州からはまだ到着していないはずだ
コウン:敵は我らが全軍で城を攻めるのを待って伏せ兵に奇襲を仕掛けさせた
我らが到着する前に城を出ていたのだ
馮跋将軍:我らだけでは、後方から来る高句麗軍に勝てません
全軍は城攻めの真っ最中です。我ら指揮部隊を守る兵が圧倒的に足りません。
ユジョン:今になって退去しては鮮烈が崩れるだけです。
指揮系統も乱れ兵を統制できません。
コウン:我らが捕まれば負け戦になるだけだ。
タムドクの狙いは連合軍ではない。我ら指揮部隊だった。
人数が減るのを待っていたのだ。
ユジョン:では、どこへ退却するのですか
コウン:高句麗軍が道をふさいでいるだろう
タムドクの策が読めたぞ。
我らを渓谷に誘い込む策だ。
馮跋将軍:その渓谷までなら近道があります。
コウン:逆に奇襲を仕掛けてタムドクを捕まえよう。
これは天が与えた最後の機会だ
険しい坂道だ。急いで移動するぞ
渓谷に誘い込むために、待ち伏せして、捕まるような策を立てたタムドク王。
(渓谷に着いたヨソッケは縄をほどき)
ヨソッケ:なめるなよ。ひざまずけ(馮跋将軍:ブンバイショウグン)
コウン:待っていたかのようだな。
タムドク王:お前と私で片付けねばならぬ問題があるだろう。
コウン:どちらか一方が死んでこそ片付く問題だ
今日ここで恨みを晴らす
タムドク王:独りよがりはよせ
コウン:最後まで愚弄するか
タムドク王:武将が剣を握るのは己の名誉と共に守るべき家族と国があるからこそだ。
だが、その一つでもお前にあるといえるか。
お前の父ケヨンスは夢見る国のため私に剣を向けた。
妹トヨンは高句麗と百済の戦を止めようと剣の犠牲になった。
だが、2人の想いなどお前には、とうに忘れ復習しか頭にない。
だが、お前は決して私には勝てなぬ
タムドク王:最後まであがくか
ユジョン(北魏の将軍):なぜ高句麗の王は我らを殺さぬのだ。
ましてや、牢屋ではなく使臣館に留め置くとは
ユジョンの弟(将軍):私にも真意が測れません
ユジョン殿、王様のお越しである。
タムドク王:北魏の使臣ユジョン殿。高句麗を甘く見ていたようだな
ユジョン:違います。王様。どんどん強くなる高句麗を恐れていたのです。
後燕との同盟は実利を得るために致し方なかったのです。
タムドク王:だからと言って高句麗を敵に回した言い訳にはんらぬ。
このまま、北魏を討つこともできるのだぞ
今ここには20万の高句麗軍が構えている。
後燕に陣を置いて攻め込んだとして、今の北魏が高句麗に勝てると想うか
ユジョン:我らが浅はかでした。
どうか我らと北魏の愚挙をお許しください。
このとおり考えがたりませんでした。
どうぞお許しください。
タムドク王:北魏への処分は、余と将軍たちで十分に検討して決定する。
このまま北魏に攻め込むか、それとも和親かを検討する
待つがいい。
着替えの着物を持ってきたソルチ。
コウン:なぜ罪人を縛らぬのだ。
ソルチ:王様のお心が分かりませんか
王様は一度もコウン様を恨みませんでした。
むしろコウン様の心の傷を、ご自身のせいだと悩んでいました。
マルガル族の者として王様の命を狙いました。
タムマン王子様が亡くなったときも私が手引きをしました。でも王様はすべてをお許しになった
高句麗と民を想えばこそ敵を作るよりも、すべてを受け入れようとされたのです。
ビリョ、マルガル、新羅、そして百済も。
もし、違うと言うのなら、より誓近い存在だからです。
コウン様は、王様にとって一番近い民だったのです。
友であったはず。
王様はもう友を失いたくないのです。
王様のお心から目を背けないでください。
着替えてタムドク王に会うコウン。
コウン:なぜ私を殺さないのですか
私はずっと王様を恨んできたのです。
王様も私と同じ思いのはず
タムドク王:もちろん恨んでいる。私も人間だ。
何度も私を裏切り、剣を向けてきたお前を何度も恨んできた。
命を落とした多くの民と兵たちを思うと、怒りではらわたが煮えくり返った
恨みや怒りでは何一つ解決しないのだ
それらの感情を乗り越えていくしかない
コウン:勝者の傲慢ですか
自分の懐が深いのだと見せつけたいのですか
今回は天が王様をひいきしただけです
天が公平ではなかただけです
タムドク王:そうかもしれぬ。だが、天の選択には理由があるものだ
なお勝敗にも理由がある
お前が決して皇帝になれぬのにも理由がある
コウン:私が負けて当然だというのですか
タムドク王:王たる者は民と同じ夢を見るべきなのだ
コウン、お前には命をかけてでも成し遂げたい民への想いがあったか
タムドク王:余にはある。父を、母を、そして兄と妹、多くの武将を失ってきた
だがそれでも譲れない大切な民がいた
お前にはそのような民がいるか
余は最初から民が抱く夢を成し遂げようとしてきた
その中で、お前という友を失いもした。
だが引き替えに、民は希望を抱くようになった
また同じ状況でも余は同じ道を歩むだろう
まだ分からぬか
コウン:今更、王差に許しは請いません。
不要な命乞いなどもしません。
願うのは一つです。
愚かな私は、己が道を間違えたとしりつつもこどることができなかった
その私に気遣いはもう結構です。
タムドク王:そのことなら案ずる必要はない。
お前は余の下に戻るからだ。
コウン、後津燕の新たな王になるのだ。
タムドク王:お前は偉大なる高句麗の魂を受け継いだ高句麗人だ。
元の名に戻って後燕の皇帝となり、民のために善政を行うのだ。
そして余と同じ夢を抱き、この広き世を共に駆けようではないか
よいか、お前に与えられた最後の使命だ。
コウン:王様の命に従います。
---
407年
公開土太王は、後燕の都である龍城と現在の北京である幽州の一帯を占領
刺史(チャサ)という役人を置き高句麗の地とした。
また、後燕を完全に服属させ新たな皇帝としてコウンを就かせた。
これにより後燕との長きに渡った対立が終わり、後燕は高句麗の属国となった。
そして王は堂々と高句麗に帰還した。
---