気ままに

大船での気ままな生活日誌

シネマ歌舞伎 刺青奇偶

2021-12-10 10:38:49 | Weblog

おはようございます。

辻堂でシネマ歌舞伎を見てきた。演目は”刺青奇偶(いれずみちょうはん)”。長谷川伸の戯曲。長谷川伸といえば、一本刀土俵入りと瞼の母。両方とも歌舞伎座で観ているはずだが、ブログ記事には前者しか残っていない。いずれにしても、今回の刺青奇偶(いれずみちょうはん)は初めて見る。2008年4月、歌舞伎座公演のものである。涙なくしては見られない人情もの。おまけに、中村勘三郎が半太郎、妻のお仲に玉三郎、政五郎親分に仁左衛門という豪華な布陣。感動的なすばらしいシネマ歌舞伎でした。

生来の博打好きで江戸を追われた半太郎が、身投げをした酌婦のお仲を救う。ふてくされたあばずれ女の玉三郎の演技が上手で、面白い。どこへでも連れておいきなさいよというお仲を無視して立ち去ろうとする半太郎に、本当の男気から自分を救ってくれたことを知り、半太郎の後を追う。

こうして半太郎とお仲は夫婦となり楽しい日々をおくっていたが、半太郎は博打を止められない。やがてお仲が死病に罹かっていることを医者から知らされる。黙っていたが、お仲はすでに自分の死が近いことを察していた。そして最初のクライマックスがくる。看病する半太郎に墨と針をもってきてくれと頼む。そして、愛する半太郎の右腕に心を込めて、一針、一針、何かを彫り込んでゆく。大写しの勘三郎の目に涙が溢れてきて止まらない。鼻水まで出している。まさに名演技。出来上がった絵はサイコロだった。私が死んでも博打だけは止めてというお仲の願いだった。

そして、大詰め。博打を絶った半太郎だったが、お仲の最期を飾ってやりたいと賭場に出かける。しかし、難癖をつけたため、叩き出され、殴られ、血だらけになってうずくまる。そこへ、仁左衛門親分がやってくる。いきり立つ子分どもを抑え、半太郎の話を聞いてやる。事情を知った親分が、よしお前の命とわしの巾着を賭けて、丁半の勝負をしないかとサイコロを渡す。半太郎、最期の大勝負。お地蔵さんの茶碗を借りて、丁か半か。半太郎は半!(笑)。親分は静かに丁。息詰まるシーン。茶碗をとる。半。喜ぶ半太郎。仁左衛門は懐から大金の入った巾着を渡し、たしか近くに駕篭場がある、そこまでは歩いて行けるだろう、と静かに立ち去ってゆく。

血だらけの身体をやっと動かしながら、涙ながらに花道を立ち去る勘三郎。幕が下りる。

最後に、演出家、寺崎裕則のこのシネマ歌舞伎の感想文の一部を紹介しよう。とてもぼくには思っていても、こうは書けないので。

私は長谷川伸の戯曲が大好きだ。『瞼の母』『刺青奇偶』『一本刀土俵入』を演出して思うことは、先生の戯曲には、日本人の心の奥底を揺さぶる、理屈ではない、"理"を超えた"情"の"愛"の世界がある。たとい刺青され意見されても、親分の鮫の政五郎の骰子で対決した時、その刺青がチクリと痛んでも、日本一好きな女に夢を持たせてあの世へ行ってもらいたい、という半太郎の熱い"情"が、見る人の心の奥底を揺さぶるのだ。愛薄き人に、愛を与える素晴らしさ。そこに長谷川伸の戯曲のいつに変らぬ魅力がある。
と、同時に、今の時代こそ、日本人の心の奥底にあるものは、こうなんですよ!日本人ならではの"心"を目覚めさせたい。訴えたい

刺青奇偶

それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!

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4 コメント

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・・・ (アナザン・スター)
2021-12-10 13:11:27
・・・あ・これは涙が。
いいですよねえ。
あんまり見てもいないのですが、勘三郎の演技を生で観たことがあります。
壺阪霊験坂だったかな?
その時には、若かった頃の橋之助もいましたね。

役者って、これでなきゃ!!
いよぉ、中村屋。
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Unknown (marbo0324)
2021-12-10 13:29:12
アナザン・スターさま

映画ならではの大写しで勘三郎の演技力がよく分かりました。いなくなるのが早すぎましたね。
返信する
Unknown (小父さんK)
2021-12-10 23:07:34
>中村勘三郎が半太郎、妻のお仲に玉三郎、政五郎親分に仁左衛門という豪華な布陣

この名だけでも見入ってしまいそうです。

>私が死んでも博打だけは止めてというお仲の願いだった。

この一文だけでも泣かせますね。

>半太郎は半!(笑)

この書きれはmarboさんの作りですか?(笑)

>・・・理屈ではない、"理"を超えた"情"の"愛"の世界がある

いいですね~、果たして私はどう生きているでしょう?

稀勢の里、とほほの2敗の「遊行寺 踊り念仏」素朴さの中に感動がありました。

有難うございました。
返信する
小父さんKさま (marbo)
2021-12-11 05:58:52
勘三郎、玉三郎、仁左衛門と豪華なメンバーで楽しめました。先日、吉右衛門がいなくなり、玉三郎、仁左衛門のご両人には長生きしてほしいです。

>半太郎は半!(笑)

これはぼくのつくりではなく、本当に半でしたよ。

>"理"を超えた"情"の"愛"の世界がある

現代人は理ばかり重視しているような気がします。反省しなければ。

遊行寺 踊り念仏の方まで見て下さったのですか。稀勢の里が一生懸命がんばっている頃ですね。

ありがとうございました。
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