玉三郎の演じる”阿古屋”は、平成27年の10月に歌舞伎座の夜の部で上演されたが、(昼の部は見たのだが)、見逃していた。それがシネマ歌舞伎に取り上げられ、お正月から上映されるというので楽しみにしていた。昨日、辻堂の映画館でみてきた。
映画では、舞台の芝居だけではなく、稽古場の様子とか、舞台をささえるスタッフの仕事などが、ドキュメント映像で紹介された。これが、また面白かった。普段は余り気付かないが、大勢の方々の支えがあってはじめて、華やかな舞台が成り立っていることがよくわかる。
ナレーションは玉三郎が行ない、自身の過去や将来についても阿古屋に絡めて述べている。若き日、玉三郎の名を継承したときに、父親から、女形として生きてゆくには、あらゆる芸事に精通しておかねばならぬと言われ、実行してきたという。今回の、”阿古屋”は、舞台上で、琴、三味線、胡弓の三つの楽器を演奏しなければならないが、その頃、習っていたのだそうだ。女形の役者さんは多いけれど、これが出来るのは、玉三郎しかいないらしい。後継者の育成のこともいつも念頭においているという。
この役は、三つの楽器の演奏が出来ればいいと言うものはなく、気品や色気も必要だし、景清を想う心の内も表現しなければならず、女形屈指の大役と言われているのだそうだ。玉三郎もこの役ができるようにと目標にしていたようだ。
さて、その舞台の映像だが、歌舞伎座の一番前に座るより、もっとはっきり、仕草や顔の表情などを見ることができ、迫力満点。とにかく、玉三郎の、気品あるうつくしさには、改めて、びっくり、うっとり。琴、三味線、胡弓も見事に弾かれる。
あらすじは、平家滅亡後、鎌倉の源氏方に追われる平家の武将・景清の行方詮議のため引き立てられた、恋人阿古屋。景清の居場所を知らぬと述べる阿古屋に、代官・重忠(菊之助)は心に偽りがあれば演奏の音色が乱れるはずだとして、琴・三味線・胡弓の三曲を演奏させる。しかし、阿古屋は乱れの無い見事な演奏を披露し、解放されるのであった(サイトより)。
玉三郎は舞台に上がるときは、夢の世界に入ってゆくような気持ちになるという。観客のみなさんもきっと、現実世界をひととき離れ、夢の世界に浸りに来られるのでしょうね、と語っておられた。
夢のシネマ歌舞伎のひとときだでした。