気ままに

大船での気ままな生活日誌

山笑う

2007-03-30 10:59:31 | Weblog
俳句の世界に「山笑う」という季語があるそうですが、今頃の鎌倉の山々みたいなことを言うのかなと勝手に思っています。昨日の午後、電車の窓からみえる北鎌倉の山々が嬉しそうに笑っているように見えましたので、鎌倉駅に行く予定でしたが、つい北鎌倉駅で降りてしまいました。

山々は、全体が芽吹きの始まった木々の柔らかな薄緑に染まり、そして、その中に常緑樹の深緑と、白い花を咲かせている山桜の木々が散りばめられているのです。まるで、東山魁偉の、ぼんやりした緑色を主体とした、ほのぼのした風景画のようです。冬の間、眠っていて、むっつりしていた山々が、今、暖かくなって、起き出してきた、そしてお日様の光がとても気持ちよくて自然と顔がほころぶ、本当に山の顔の表情が笑顔にみえるのです。

電車の中でみた、山々に点在している山桜を間近で見たくなり、交番の横の路地に入り、山の方に向かったのでした。山桜は薄緑の葉っぱと一緒に、今が盛りと、白い花をいっぱいつけていました。大きい木が多くて、まるで大蛇のように太いねじれた幹に枝をたくさんつけているのもありました。まだ見ていないのですが、”大蛇(おろち)桜”と呼ばれている木もこの近くの山にあるそうですよ。

途中で、銭洗い弁天方面という表示がありましたので、そちらに向かいました。去年の今頃、源氏山を歩いたときに山桜がきれいだったことを思い出したからです。初めて歩く道でしたが、思いの外、早く源氏山公園に着きました。そこではソメイヨシノがまだ3,4分咲きでしたが、近所の方々の何組かが、お花見の宴を開いていました。私は、そこから、銭洗い弁天方面には行かず、北鎌倉の浄智寺方面の山道を下って行きました。

途中に大きな山桜を何本もみました。また、木々の間からみえる遠くの山々に散在している山桜も眺めることができました。遅い午後だというのに、まだ登ってくる人もいました。ころばないように、ゆっくり下りて、浄智寺に着きました。ここの、市の天然記念物の2本の大きなタチヒガンが、3,4分咲きでした。道路の反対側の崖っぷちには、大きな山桜が満開の花を咲かせていました。とても立派な木です、こちらも天然記念物にしてあげたいくらいです。

そして、北鎌倉駅を通り過ぎ、裏山の八雲神社まで登り、その石段で、さっきまで歩いていた山々(写真)をしばらく眺めていました。ほんとうに、遠くからみる山桜も美しい、まさに山笑うだ、と思いました。

山桜がこんなに美しいものだと感じるようになったのは、こちらに越してきた去年からです。それまで、住んでいたところは、地方の新興住宅地でしたし、そこから車で通った職場も新しくできた人工都市の中にありました。山桜をみる機会なぞあろうはずもありません。加えて、桜の季節は、仕事が一番忙しい頃で、山桜どころか普通の桜さえ愛でる余裕がなかったように思います。こうして、ゆったりとした気分で、美しい山桜の山々を眺めている今の自分の存在が不思議な気がします。

しばらくして、ぼくの心の中に目の前の”山笑う”の景色がいっぱい、たちこめてきて、自然とぼくの顔は、”ぼく笑う”になっていたのでした。
コメント
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