気ままに

大船での気ままな生活日誌

中井貴一さん映画を語る

2007-03-04 10:31:52 | Weblog
ひな祭りの土曜日、近くの鎌倉芸術座で中井貴一さんのトークと中井さん出演の映画三本立てがありましたのでワイフと一緒に観て、そして聞いてきました。鎌倉同人会により企画された「春一番!映画は楽しい」シリーズのものです。

中井貴一さんのトークは、同人会の会長である山内静夫さんの司会で進められました。山内さんは、鎌倉にお住まいだった作家里見さんのご子息で、かって松竹大船のプロジューサーを勤められた方で、中井さんのお父さんの佐田啓二さんと親しかった方です。ですから、山内さんからみると、中井さんは親友の息子さんという関係になります。そんな親しい関係から、中井さんがこんなことは初めてしゃべりました、と言うような話を、山内さんがうまく引き出していました。

中井貴一さんは、生まれたときはあまり可愛くなく、四角い顔をしていて、渥美清さんにそっくりな顔をしていたそうです。お姉さんの貴恵さんは、子供のときから美人で皆さんに「可愛いね」と言われましたが、貴一さんの場合は、ほめる言葉が見つからず、皆さん、仕方なく「元気な子ね」と言っていたそうです。今日の二本目上映の「男はつらいよ、口笛を吹く寅二郎」(山田洋治監督)に出演したとき、ロケ地の岡山県高梁(たかはし)で、渥美さんと初めてお会いしたそうです。

中井さんは、大船撮影所がなくなる日、父たちが営々と築き上げてきた財産を、自分たちの時代に食いつぶしてしまう気がして、悲しくて、無念で、涙が止らなかったそうです。ちょうど、今日3本目上映の「ラブレター」(森崎東監督)が大船での最後の撮影になったそうです。お母さんの益子さんは、大船撮影所前の食堂「月ヶ瀬」(今のミカサの隣にありました)のお嬢さんでしたし、37才で交通事故で夭折されたお父さんのお墓は円覚寺にあります、そういう関係で中井さんにとって、大船は忘れられないところだそうです。

19才で映画界入りしましたが、父親の亡くなった37才で終わるつもりで、一本一本全力投球でやってきたそうです。掛け持ちの仕事はやらなかったそうです。最初に上映された「壬生義士伝」(滝田洋二郎監督)が50本目になります。どれも思い出に残る作品でしたが、誰も憶えていないような、小さなテレビドラマが自分にとって一番心に残っているそうです。このとき、初めて役になりきることができたと実感できたそうです。それが、自分の芸の上でのひとつのエポックだったと、中井さんは言います。でも、まだ、これでいいと思ったことないそうです。試写をみても、あの場面で瞬きをもうひとつやるべきだったか、反省点ばかりだそうです。

「壬生義士伝」の撮影で、こんなエピソードがあったことを教えてくれました。映画のクライマックスに、主役の中井さんが切腹する前に家族の思い出を語る、涙なしにはみられない感動的シーンがあります。このシーンは17分もの間、2台のカメラが回り放しで、ワンカットの撮影だったそうです。迫真の演技でスタッフも涙を流しながら撮っていたそうです。完璧の撮影でした。ところが、翌日、スタッフの様子がどうもおかしい、自分と目を合わせない、何かあるなと思っていましたら、1台のアップ用のカメラのビスがゆるんでいて、微妙に顔が揺れてとれていたのだそうです。血だらけの格好で、17分の演技をもう一度やってくれとは誰も言い出せないでいたのです。数日後、滝田監督が「この責任はカメラマンではなく監督の私にある、このままの状態で出しても十分感動は伝わる、このままいこうと思うがどうか」と中井さんに相談にきたそうです。中井さんは監督の心中を察し、5日後に再撮影することにしたそうです。

南部藩随一の剣の使い手でありながら、赤貧洗うがごとくの生活で、そのため妻(夏川結衣)が自殺未遂まで起す状況のもと、妻子を養うために脱藩し、壬生浪(みぶろ)と呼ばれた新選組に入隊する。守銭奴とまでいわれても、しゃにむにお金を稼ぎ、家族に仕送りを続ける、そして鳥羽伏見の戦いで敗走、南部藩の下屋敷に逃げ込む、家族のためには自分は最後まで生き続けなければならないと思う、しかし幼なじみの家老(三宅裕司)に切腹を申し渡される、そして、17分のクライマックス、家族ひとりひとりに語りかけ、自分が死んでいくことを許してもらう、自分が死んでも、地獄にも極楽にもいかんぞ、おまえたちのすぐそばにいつもいるからな(”千の風になって”みたいですね)、そして、三宅の温情で与えてくれた名刀も使わず、おむすびも食べず、自分のぼろぼろの刀で自害する。

まっすぐに泣ける生き方がある、これはこの映画のキャッチコピーですが、まさにその通りでした。愛する家族のために自分をころして生きる、「おもさげながんす」(申し訳ありません)のお国言葉が心にしみる、とてもいい映画でした。

・・・・・
中井貴一さんは、翌日から舞台の練習だそうです。三谷幸喜さんの、パリを舞台にしたゴッホらの後期印象派画家たちの群像劇に、スーラーの役で出演するとのことです。でもまだ、脚本が出来ていないそうで(三谷さんは遅筆だそうです)、中井さんもふくれていましたよ(笑)。是非、観にいきたいですね。西武パルコでやるそうです。

・・
トークのとき写真OKというアナウンスがあったので、撮ってみましたが、うしろの方の席でしたので、あまりよく写っていませんでした。で、この日はモモの節句の日ということで、大船フラワーセンターのモモの花(温室で咲かせてから屋外に植えています)をのせました。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする