1.世界の石油・天然ガスの生産量(続き)
(2) 1970~2022年の生産量の推移
(50年間で2倍に増えた石油生産量!)
(1-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G02a.pdf参照)
1970年に4,800万B/Dであった石油の生産量は1980年には6,300万B/Dに増加した。その後も成長軌道を描き、2015年には9千万B/Dを突破、2019年には9,500万B/D弱に達した。2020-21年は新型コロナウィルス禍のため経済活動が低迷、石油需要も大幅に減退したため、生産量は9千万B/D前後まで低下した。2022年の生産量は9,400万B/Dに回復している。
(50年間で4倍になった天然ガス生産!)
(1-2-2)天然ガス (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G02b.pdf参照)
1970年の世界の天然ガス生産量は9,800億㎥であった。その後半世紀の間生産量は毎年大きく増加し、2022年には1970年の4倍強の4兆400億㎥に達している。この間、前年比でマイナスになったのは2009年、2020年及び2022年の3回である。
年間生産量が1兆㎥を超えたのは1971年であるが、その後は5~7%の成長を続け20年後の1992年に2兆㎥に達した。その後、増加のスピードは加速し、年産3兆㎥を達成したのは16年後の2008年であった。そして2021年には4兆㎥を超えている。50年間で生産量は4倍強増加している。
(天然ガスの比率が26%から43%に!)
(1-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G02c.pdf参照)
石油と天然ガスの1970年の合計生産量は石油換算で6,500万B/D、内訳は石油4,800万B/D、天然ガス1,700万B/Dであり、石油が天然ガスの3倍弱であった。その後、合計生産量はほぼ毎年増加し続け、2022年には石油9,400万B/D、天然ガス7,000万B/D、合計1億6,400万B/Dに達している。50年間の間に2.5倍に増加したことになる。このうち天然ガスの伸びは4.1倍で石油の2.0倍を大きく上回っている。この結果、石油と天然ガスの比率は1970年が石油74%、天然ガス26%であったが、2022年には石油57%、天然ガス43%と天然ガスの比率が大きく上昇している。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第1章 民族主義と社会主義のうねり(13)
029.イスラエル独立(その3):流入するユダヤ移民に押し出されるパレスチナのアラブ人(2/3)
パレスチナの土地は元々広くないが決して不毛の砂漠ばかりではなかった。耕作可能な土地はすでに先住民であるアラブ人たちによって耕作されており、耕作に不向きな土地では羊やラクダが放牧されていた。
新たなユダヤ人移民がまず必要としたのは農地だった。彼らはそれまで住んでいたヨーロッパのユダヤ人社会の中でも相対的に貧しい階層である。移民とはそもそも貧しいから移住するのであって豊かな者たちは移住などほとんど考えない。さらに言えば海外移住を希望する比較的裕福なユダヤ人たちは、パレスチナではなく米国など豊かな先進国を目指したのである。
彼らはいかにして農地を手に入れたのであろうか。ユダヤ人たちは先住者のアラブ農民を力づくで追い出したのであろうか。イスラエルと言う自分たちの国家がある現在ならいざ知らず、当時のユダヤ人にはそのような力は無い。かれらが取った手段は地主から土地を買い取ることであった。アラブ農民は小作農であり、土地はオスマン・トルコ時代からの不在地主のものである。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
(石油関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
(中東関連ニュース)
・トルコ大統領、穀物輸出問題打開のためウクライナ大統領と電話会談。
・イラク、コーラン焚書事件でスウェーデン大使を国外退去処分に。
・イランのタンカー臨検続発で米が艦艇3艘、海兵隊2,500人増派。
*「中東に広まるドローン(UCAV)の開発と軍事利用」参照。
*JERAプレスリリース参照。
・レバノン:TV討論番組で乱闘騒ぎ。対立あおるメディアと視聴者。
7/17 経済産業省
クリーンエネルギー協力のための日本-サウジアラビア王国間の ライトハウス・イニシアティブを発表しました
https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230717001/20230717001.html
7/17 TotalEnergies
TotalEnergies, Aramco and SABIC complete MENA region’s first processing of oil from plastic waste at scale to make certified circular polymers
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-aramco-and-sabic-complete-mena-regions-first-processing-oil
7/18 INPEX
アラブ首長国連邦アブダビ首長国におけるグリーン水素およびCO2を用いたe-methane製造事業の事業化検討に向けた共同調査契約の締結について
https://www.inpex.co.jp/news/2023/2023-7_b.html
7/18 INPEX
アラブ首長国連邦アブダビ首長国におけるカーボンリサイクルケミカル製造事業の共同調査に関する契約締結について
https://www.inpex.co.jp/news/2023/20230718.html
7/19 経済産業省
LNG産消会議2023を開催しました
https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230719001/20230719001.html
7/20 JOGMEC
アブダビ国営石油会社とMOU締結~上流バリューチェーンの脱炭素化に向けた技術協力を強化~
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00124.html
7/20 JOGMEC
ネットゼロに向けたLNGからのメタン排出削減のための連携~LNG事業ごとのメタン排出削減取り組みの共有~
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00125.html
7/20 石油連盟
木藤 石油連盟会長定例記者会見 発言要旨・配布資料
https://www.paj.gr.jp/index.php/news/726
7/21 Saudi Aramco
Aramco completes $3.4bn purchase of Rongsheng Petrochemical stake
https://www.aramco.com/en/news-media/news/2023/aramco-completes-purchase-of-rongsheng-petrochemical-stake
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第1章 民族主義と社会主義のうねり(12)
028.イスラエル独立(その3):流入するユダヤ移民に押し出されるパレスチナのアラブ人(1/3)
世界のユダヤ人口は約1,400万人であり、その大半は米国とイスラエルに住んでいる。イスラエルのユダヤ人口は630万人で全ユダヤ人口の45%に相当するが、イスラエル一国(総人口850万人)で見ると同国人口の4分の3を占めている。
しかしイスラエル建国前のパレスチナ時代にユダヤ人がこれほど多かった訳ではない。第一次世界大戦直後の1920年代初めのパレスチナの総人口は75万人で、そのうちユダヤ人は約8万人であり、総人口に占める比率は1割強にとどまっている。絶対数では現在の80分の1、比率でも8分の1程度だったのである。
シオニズム運動とバルフォア宣言の後押しにより第一次大戦前後にヨーロッパ各地から多数のユダヤ人がパレスチナすなわち「シオンの土地」へと移住した。それは「アリヤー」と呼ばれ19世紀末から1920年代までの第一次アリヤーから第四次アリヤーまでの間にほぼ20万人がパレスチナに押しかけている。そしてナチスドイツのホロコーストが始まるとユダヤ人たちは我先にヨーロッパを脱出、その多くは米国に向かったが、イスラエルに移住したした者も25万人に達した(第五次アリヤー)。この結果第一次大戦直後に75万人であったパレスチナの総人口はその後わずか20年たらずの間に150万人に倍増したのである。
(続く)
荒葉 一也
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(石油関連ニュース)
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(中東関連ニュース)
・岸田首相、湾岸歴訪の最後にカタール訪問。首長とエネルギー問題協議。
・サウジエネルギー相、ジェッダ寄港中の川崎重工製水素タンカーを視察。
*デジタル庁プレスリリース参照。
・サウジアニメ企業、グレンダイザービデオゲームを仏企業と開発。
(注)本レポートはマイライブラリーで一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0581WorldRank8.pdf
(世界ランクシリーズ その8 2023年版)
(上昇傾向の中国、カタール、大きく下落するUAE!)
3.日米中露と中東主要国の世界ランクの推移(2018年~2023年)
(図http://rank.maeda1.jp/8-G01.pdf参照)
2018年から2023年までの平和指数世界ランクの推移を見ると、アイスランドは6年間を通じてトップを維持している。2018年の日米中露と中東主要国のランクは日本が9位、UAE45位、カタール56位であったが、その他の国々はいずれも世界100位以下であった。
日本はその後2021年を除きベストテンを続け今年は世界9位である。米国の世界順位の推移は121位(18年)→128位(19年)→121位(20年) →122位(21年) →129位(22年) →131位(23年)と近年は順位が下がる傾向が見られる。一方中国は112位(18年)→110位(19年)→104位(20年) →100位(21年) →89位(22年) →80位(23年)と6年連続して順位が上昇、昨年からは100位以内にランクアップし、今回は世界164カ国の上位グループに食い込んでいる。
中東諸国の中ではカタールの伸びが著しく過去6年間を通じて毎年順位を上げ、低迷する他国との格差を広げている。同国の2018年の順位は56位であったが、今回は世界21位にランクされ同国の平和指数の改善には目を見張るものがある。これに対してUAEは順位の下落が激しく、2018年にカタールを上回る世界45位であったが、翌2019年には順位が逆転、その後両国の格差は拡大する一方であり、今年はカタールの21位に対してUAEは75位にとどまっている。カタールは2022年のワールドカップ開催のため治安の維持、平和イメージの向上に多大な努力を払ったことがうかがわれる。
2018年に129位であったサウジアラビアはその後改善の兆し見られ、2023年には119位にアップしている。イランとロシアはここ数年平和度が低下しており、イランは2018年の131位が2023年には147位にまでダウンしている。またロシアは2018年から2021年まで世界154位であり、世界最低レベルに低迷していたが、2022年、23年はさらに平和指数が悪化、2023年のランクは世界163カ国中の158位に落ち込んでいる。
(完)
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(アラビア語版)
(目次)
第1章 民族主義と社会主義のうねり(11)
027.イスラエル独立(その2):ユダヤ人とは(3/3)
以上のようなユダヤの歴史を振り返り改めて「ユダヤ人とは何か?」と言う問いに向き合ったとき一言で答えることは極めて難しい。
まずユダヤ人は生物学的な意味での独自の民族と言うことはできない。彼らの起源がセム語族の中の一部族であることは間違いないが、2千年近いディアスポラを経た現在のユダヤ人が「血」の絆を共有しているとは言えないからである。
それではユダヤ教と言う宗教でユダヤ人を定義することができるだろうか。否である。ユダヤ教からキリスト教に改宗した者たちも自らをユダヤ人と称している。米国のユダヤ人は大半がキリスト教徒である。「心(信仰)」の面でもユダヤ人は多義的である。
結局ユダヤ人とは他者が「お前はユダヤ人である」と名指しするか、或いは自らを「私はユダヤ人である」と自称する者がユダヤ人である、と言うことになる。これは同語反復であってとても定義などと言えるものではないのである。
近世までのヨーロッパでは白人たちが「お前たちはユダヤ人である」と決めつけてゲットーに閉じ込めようとした。それを嫌ったユダヤ人たちはユダヤ教を棄教してキリスト教徒として生きるか、或いはユダヤ人であることをひた隠しにして社会の片隅でひっそり生きてきた。
しかしロスチャイルドに代表されるユダヤ人の金融資本家が戦争遂行に一役買うほどの実力をつけ、またアインシュタインなどユダヤ人の優秀な頭脳が見直されると、ユダヤ人たちの間にアイデンティティを鮮明にする動きが起こり、「私はユダヤ人である」と自称する者すべてがユダヤ人とみなされるようになった。ホロコーストを経た第二次大戦後は「ユダヤ人である」と名乗ることで身の安全と将来の繁栄が保証されるようになったのである。その意味でソ連邦崩壊後にロシアからイスラエルに大量に移住したロシア系ユダヤ人の中には本来のユダヤ人とは縁もゆかりもない移民がいるに違いないという疑念はぬぐえない。
ともあれ他称、自称のユダヤ人たちによってイスラエルは建国され、今も版図を拡大し続けているのである。
(続く)
荒葉 一也
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(注)本レポートはマイライブラリーで一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0581WorldRank8.pdf
(世界ランクシリーズ その8 2023年版)
(世界163か国中で日本は9位、米露アラブ主要国は軒並み100位以下!)
2.2023年の世界ランク及び2022年との比較
(表http://rank.maeda1.jp/8-T01.pdf参照)
2023年の平和指数世界1位はアイスランドでスコアは1.124である。これに続く世界5位までにはデンマーク、アイルラ、ンドニュージーランド及びオーストリアがあがっている。ニュージーランド以外はいずれも西ヨーロッパの国々である。なお今回と昨年のトップ5の顔触れは同じであり2位と4位の順位が入れ替わっただけである。
日本を含む主要な国々の世界ランクを見ると、日本は9位(スコア1.336)でスコアは昨年と同じであるが順位が10位から9位に繰り上がっている。中国は80位であり、昨年の89位から9ランク順位をあげ、世界163カ国のほぼ中間に位置している。米国、インド、ロシアはいずれも世界100位以下であり、インドは126位、米国はさらに低い131位にとどまっている。両国の昨年の順位はそれぞれ135位及び129位であり、今回は順位が逆転している。ロシアは158位であり、ほぼ最底辺にとどまっている。最下位の163位はアフガニスタンである。
中東各国を見ると、トップはカタールで同国の世界順位は21位と世界的にみても平和指数がかなり高く、また前年と比べても指数、ランクともに上昇している。カタールは中東では群を抜いて平和指数が高く、カタールに次ぐのはUAEで世界ランクは75位である。昨年の同国のランクは60位であり、今年は大幅にダウンしている。
その他の中東諸国のほとんどは100位以下にとどまっている。カタール、UAEとともにGCCの構成メンバーである産油国サウジアラビアの世界順位は163カ国中の119位である。エジプトは121位にランク付けされ、イスラエルは143位、イラン及びトルコは共に147位である。これら各国の順位を前年と比較すると、エジプトはアップ、イラン、イスラエル及びトルコはいずれもダウンしている。
(続く)
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