石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(39)

2023-08-16 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 民戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界(1)

 

039.対照的なフランスと英国の植民地支配(1/3)

 第一次世界大戦時のサイクス・ピコ秘密協定により、フランスはトルコ南部からシリア全域、さらにイラク北部及びレバノンを勢力圏に収め、英国はイラク南部、ヨルダン、サウジアラビア北辺及びクウェイトを勢力下においた。両国はそれぞれの地域に宗主国として君臨した。

 

 しかし第二次世界大戦を境に各地で独立の機運が高まった。この時、フランスと英国が認めた各国の独立後の政治体制は対照的なものであった。レバノンとシリアはフランスが第二次大戦でドイツに占領され海外植民地まで手が回らなくなった間隙を縫って1941年に共和国として独立を宣言した。これに対して英国はフセイン・マクマホン書簡の約束に従いヨルダンとイラクを王国、しかも預言者ムハンマドにつながるハシミテ家の子孫を国王とする王制国家として独立させた。

 

 フランスは共和制国家を樹立させ、英国は王制国家として独立させたことは興味深い事実である。一つの理由は両国自身の政治体制にあると考えられる。両国は共に議会制民主主義国家であるが、英国はその正式国家名「United Kingdom(連合王国、略称UK)」が示す通り王制(もちろん立憲君主制の)国家である。従ってヨルダンとイラクを王制国家として独立させることに抵抗はなかったと思われる。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(8)消費量2

2023-08-16 | EIエネルギー統計

2.世界の石油・天然ガスの消費量(続き)

(2-2) 1970~2022年の消費量の推移

(1970年の消費量5千万B/D弱が50年後の2022年には1億B/D超え目前に!)

(2-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02a.pdf参照)

 1970年の全世界の石油消費量は4,540万B/Dであったが、5年後の1975年に5千万B/D台に、そして1980年には6千万B/D台と5年ごとに大台を超える急増ぶりであった。その後1980年代は横ばい状態であったが、1990年以降再び増加に勢いがつき、2000年代前半には8千万B/D、2014年に9千万B/Dを突破した。2020年はコロナ禍の影響で消費が急減したが、2022年は1億B/D目前の9,730万B/Dに達した。

 

(1970年以降の半世紀で消費量4倍に急成長!)

(3-2-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02b.pdf参照)

 1970年に9,600億㎥であった天然ガスの消費量はその後1992年に2兆㎥、2008年には3兆㎥の大台を超え、2022年の消費量は4兆㎥に近づいている。1970年から2022年までの間で消費量が前年度を下回ったのは2009年と2020年の2回のみであり、52年間の増加率は4.1倍に達している。

 

石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプラインであれば生産国と消費国が直結しており、またLNGの場合もこれまでのところ長期契約の直売方式が主流である。そして天然ガスは一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。これに加え最近では地球環境問題の観点からCO2排出量の少ない天然ガスの需要が増加している。天然ガス消費量が一貫して増加しているのはこのような特性によるものと考えられる。

 

(天然ガスの比率が27%から41%に!)

(3-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02c.pdf参照)

 1970年から2022年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると、1970年の石油と天然ガスの消費量は石油が4,540万B/D、天然ガスは9,620億㎥(石油換算1,660万B/D)であった。合計すると石油換算で6,200万B/Dとなり、両者の比率は石油73%、天然ガス27%で石油の消費量は天然ガスの2.7倍であった。

 

 その後、半世紀の間天然ガスの消費量はほぼ右肩上がりに増加しており、2022年の合計消費量は石油換算で1億6,500万B/D(内訳:石油9,700万B/D、天然ガス4兆㎥)であり1970年の2.7倍に達している。石油と天然ガスそれぞれについて見ると、石油は2.1倍、天然ガスは4.1倍と天然ガスの伸び率は石油の2倍であった。この結果、2022年の消費量に占める石油と天然ガスの比率は59%対41%であり、天然ガスの比率は半世紀の間に14ポイント上昇している。

 

 

(続く)

 

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     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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