工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

カラビニエリは人気者

2020年11月26日 | 工作雑記帳
 この2回でイタリア警察のパトカーやヘリコプターをご紹介しましたが、カラビニエリ(憲兵)は、その特徴的な制服やパトカーの見た目などもあって、模型や玩具の世界でも人気です。
 HO(1/87)の人形で有名なプライザーからも、カラビニエリの隊員セットと騎馬隊員のセットが出ています。
 隊員のセットは人形5体とバイク2台が入っていて、人形のうち2体はバイクのライダー姿です。


特徴的な制服も再現されています。こんな情景も手軽にできます。

(ずいぶん状態のいいチンクエチェントだねえ)
騎馬隊員の方は馬と共に2体入りです。こんな光景、ローマやフィレンツェを旅行された方なら見たことがあるのでは。

騎馬隊員は大都市で見かけることが多いので、イタリア型でレイアウトを作るにしても、路面電車が走る街中のシーンなど、用途が限られそうです。
 ちなみに国家警察のパトカーなどは、1/87でいくつか製品を見かけています。

左からフィアット・ティーポ、アウディA6(いずれもリーツェ製)、フィアットデュカート(ブッシュ製)ですが、それぞれ微妙に色調が違います。ティーポやアウディはドイツ語・イタリア語の双方が記載されており、こちらも場所が限定されそうです。
 プライザーではお隣のフランスの国家憲兵も製品化しています。フランスにも憲兵がいて、同じように警察業務を担っています。ケピ帽と呼ばれる特徴的な制帽姿の隊員が入っているようです。やはり特徴がある方が製品化しやすいし、人気もあるのでしょう。
 プライザーだけでなく、玩具の世界でもカラビニエリは人気のようです。前々回の記事に登場した1/24のミニカーはブラーゴ製で、カラビニエリだけでなく、国家警察、財務警察のパトカーも製品化されていました。玩具に近い出来ですし、おもちゃ屋さんで見かけることが多いわけですが、アルファロメオのパトカー、カラビニエリの塗装が一番決まっています。また、ドイツのミニカーブランドSiku(日本でも量販店などで売っていますね)でも、イタリア市場限定だと思いますが、カラビニエリの塗装に塗られたアウディのパトカーがラインナップにありました。フィレンツェの玩具店と模型店を兼ねた大きなお店で甥っ子のお土産として購入しました。
 ドイツのメーカーということではプレイモービルもイタリア市場向けと思いますが、カラビニエリ仕様の製品を発売しています。

 こちらのバイクの隊員ですが、ヘルメットにちゃんとカラビニエリの紋章が入っているあたりはプレイモービルらしい芸の細かさです。
 さて、前々回のテーマでしたNゲージサイズのイタリア警察関連のパトカーですが、いろいろ写真に撮ったりして遊んでみました。

トミーテックのレンガ造りの教会をバックにしています。教会も屋根やレンガの色を塗り替えたり、汚しをかけたりすることでより欧州風に見えます。
「大尉殿、こちらがラファエロの絵が盗まれた教会です」
「えっ。ここの教会ラファエロなんて持ってたの?どこかの国みたいに国立博物館に寄託してればこんなことにならないのに・・・。ところで財務警察も来ているみたいだけど、何やっているのかなあ」

国家警察のパトカーがいますね。お巡りさんは夏服です。右の車輛は昔出ていたワーキングビークルというシリーズのテレビ中継車を塗り替えて、イタリア公共放送仕様の中継車にしたものです。教会の入り口には立派な黒塗りのセダンがいます。
「司教様、随分立派な車に乗っているね」
「今度の教皇様は贅沢を慎めと言っているようだけど」

(写真はその教皇様です。プライザー得意の有名人単体ものです)

 いろいろ遊んでみましたが、そろそろ工作に戻りましょう。大きな声では言えませんが北北西に進路を取ったりしたものですから(分かる人だけ分かってくださいね)、だいぶ財布の方は厳しくなってしまっております。お金がなくても模型は楽しめるし、なにせキットもたくさんありますので、仕掛中のものから仕上げてまいりましょう。

この記事の締めくくりはは今月発売のRMモデルズの付録を使って、現場に急行の様子でございます。


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パトカーができたので、ヘリコプターも

2020年11月23日 | 1/150の周辺に
 前回、イタリア警察のパトカーなどを紹介しましたが、引き続いて1/144でヘリコプターも作ってみました。
 その前にイタリアの警察制度をちょっとお話しましょう。イタリアでは主に国家警察(Polizia di stato)、憲兵(カラビニエリ)、自治体警察(地方警察)、財務警察が警察業務を執り行っており、日本とだいぶ異なります。イタリアには20の州の下に100余りの「県」があり、国家警察は県単位で本部を持っています。交通取り締まりや鉄道警察の業務もこの国家警察が行っています。カラビニエリは国防省所管のため軍事組織でもあるわけですが、治安維持の業務もあり、重大事件の捜査を行うほか、国家警察の範囲が及ばない小さな自治体にも人員を配置しています。カラビニエリはイタリア軍の海外展開に合わせて派遣されるため、イラク、アフガニスタンなどで現地の治安維持なども行っています。自治体警察は大都市で軽犯罪の取り締まりを主に行っており、観光地で軽装のお巡りさんがパトロールしている姿を見かけたら、おそらくこの方たちでしょう。財務警察は税関、脱税捜査、密輸取り締まりなどを行っています。空港などでグレー色の制服の職員から荷物を開けるように言われたことがある方は、この財務警察のお世話になった、ということになります。税関業務はかなり本格的で、航空機や立派な警備艇を装備しています。
 
 では、国家警察のヘリコプターです。以前もご紹介したフジミ1/144のUH-1から作っています。側窓は開いていますが窓のパーツはありませんし、胴体には穴も開いていますのでふさがなくてはなりません。

 パトカーの時と同様に白とブルーに塗り分けます。「POLIZIA」はパトカーの時と同様に自作デカールです。

 窓ガラスに相当する部分はすべて塗装などで再現することになります。スモークグレーを塗ったり、ハセガワの曲面追従シートなどを貼って窓ガラスの代わりにしています。国籍標識のラウンデルは手持ちのデカールから、テールブームの機番ですが、なんと20年以上前に購入したインスタントレタリング(インレタ)です。昔は文房具屋さんに行くといろいろなフォント、サイズのインレタを売っており、模型用にと私もいくつか持っていました。裏紙をあててきちんと保管していたのですが、ダメもとでクリアデカールに転写したところうまく転写できましたので、切り出して貼ることができました。インレタなど、もう買うことは難しいと思いますので、これからも大切に保管、使用しようと思います。
 カラビニエリのヘリコプターです。こちらは「ヘリボーンコレクション」のベル412を塗り替えたものです。こちらは胴体をばらして透明パーツを外し、1000番のサーフェーサーを軽く吹いて元の塗装を隠します。その後、白のスプレーを吹き、パトカーと同様Mr.カラーの326番で塗って基本的な塗装は完了です。

「CARABINIERI」の文字はパトカーと同様自作デカールで、機番はインレタです。このヘリコプター、写真では写っていませんが胴体右側にホイストがついています。前回紹介した「秘宝を追え イタリア特捜警察」でも、主人公が海中で見つけた大理石の彫刻にまたがってヘリに吊り上げられるシーンがありました。
 そしておまけでもう一機。こちらは沿岸警備隊(Guardia costiera)の機体です。

こちらはただ塗り替えるというわけにはいかず、頭の上にレーダーをつけるなど、パーツを加えています。コクピット上のレーダーのパーツはフジミのUH-1のキットについていたイタリア海軍仕様のものから持ってきています。「GUARDIA~」の文字、イカリのマークやイタリアの船舶旗に使われる四つの海洋都市国家(ヴェネツィア、ジェノバ、ピサ、アマルフィ)の紋章を組み合わせたマークを自作デカールで再現しています。
 これらのヘリコプター、いずれも厳密に再現したものではなく、あくまで雰囲気重視ですので、そこのところはなにとぞご容赦ください。ヘリボーンコレクションの機体は素性がいいので、ガチガチに改造してより実物に近いものを作ってみたい、という気もしますが・・・。ちなみに今回使用したヘリボーンコレクションの機体ですが、イベントで袋に入って売られていたり、ブラインドパッケージ故にだぶってしまい、余ったものだったりということで、なるべく無駄にしないで活用しようという思いもあって作ったものです。
 パトカーはともかく、ベル412のように各国で使用されている機体もあります。鉄道模型で外国型を楽しまれているモデラーの方の中には、既に塗り替えを楽しまれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。レイアウトの中にこうしたパトカーやヘリコプターが登場する場面を見てみたいです。もちろん私も小さなトラムのジオラマと言わず、と思っているのですが、いつになることやら。
 イタリア警察ネタ、ここで紹介しきれなかった話を次回いたしましょう。


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カトーの90年代日産車でまだまだ遊んでいます

2020年11月21日 | 1/150の周辺に
 今年発売になったカトーの90年代日産車(セドリックとパルサー)ですが、色差ししたり、はたまた草レースのマシンに化けたりといろいろ遊んでまいりました。手軽に楽しめるものですから、そのあたりの遊びをまだやっています、というのが今回のテーマです。
1 ボディカラーの塗り替え
 以前、RMモデルズにもこういった記事が載っていましたね。分かりやすいというか、バリエーションを増やすにはこれが手っ取り早いわけで、実車のカタログカラーには無いかもしれませんが、メタリックカラーに塗り替えてみました。

私自身、鉄道模型や飛行機の模型がメインなものですから、たまに使用するメタリック系の色はどうしても使わないままになってしまいます。そんな手持ちのメタリック系の色で塗り替えたのがこちらでございます。

本来ならエアブラシ塗装を推奨しているものもありますが、筆塗りでもまあ及第点かなと勝手に思っています。個人的にはこのメタリックグリーンがとても好きな色で、パルサーに似合っていると思いますが、いかがでしょうか。
 メタリックの車は外国の風景に入れても似合いそうです。

 左の黄色い車は1/160フォード・カプリです。スケール的にはパルサーの方が少し大きくなります。ちょっと昔の探偵ものみたいな感じを狙ってみました。フォード・カプリが主人公の愛車で、パルサーの主は主人公の相棒なのか、情報をくれる男なのか、というところです。
「最近は赤いスーパーマンみたいなスーツ着た男が出てきたり、黒いバンにお尋ね者の元軍人たちが乗り込んできて事件を解決するもんだから、俺たちの出番が無いなあ」とぼやいております(笑)。

2 イタリア警察風パトカーを作る
 こんな情景も作れます。「はいはい、そこの車、止まってくださーい」

 ということでイタリア警察風のパトカーです。実際にはイタリアのパトカーはフィアットやアルファロメオを使っていますが、これもバリエーションを楽しんでみようということで作ったものです。

セドリック、パルサーともに色を塗り替え、国家警察を意味する「POLIZIA」のロゴをデカールで作って貼り、プラモデルの透明ランナーをあぶって伸ばしたものを輪切りにしてクリアブルーに塗って回転灯にしたものを屋根に乗せています。
 車体の青い色はそのものずばりのものがなく、今回大いに悩みました。光の当たり具合によっても水色っぽく見えたり、暗く見えたりするのですが、結局T-4ブルーインパルスのブルー色にしました。
 実車に近い感じはこちらの1/43のミニカーの色です。

見えづらいのですがこの車輛はドイツ語圏のトレンティーノ・アルトアディージェ州のもので、警察を表すイタリア語のPOLIZIAとドイツ語のPOLIZEIの両方の表記がしてあります。
 さて、1/150のモデルに戻りますが、POLIZIAの文字は白です。かつてのパトカーでは車体の白帯の部分に文字が半分かかっており、上半分を青、下半分を白にしていましたが、これを再現するのは難しいので実際とは異なり、車体に白文字のみの表記です。白文字を自作デカールで再現するのはインクジェットプリンターでは不可能ですので、今回はこんな風にしました。以前ご紹介したハイキューパーツの自作デカール用シートに白地のものもあり、白の地色を文字として使おうというわけです。
 ここで原稿づくりに使うのが表計算ソフトのエクセルです。私のようにお絵描きソフトなどが無い方でも文字のフォントがそれなりにありますし、文字の大きさも最小は4ポイントから作れますので、Nゲージの車体の番号、記号は無理にしてももう少し大きな文字のものなら作れます。
 セルの色を自分が貼る対象(この場合ならパトカーの車体の青色)の色に塗りつぶし、文字を白に指定します。セルの色は「その他の色」というのを選択すればかなり細かいニュアンスまで再現できます。


(エクセルの画面のイメージです)
 デカールをプリンターで出力し、よく乾かしてからMr.カラーのスーパークリアーをエアブラシで吹きます。このときに塗料はなるべく薄く溶き、何層かに分けて吹き付けることが大切です。一度に厚吹きするとデカールを切り出した際に吹き付けたクリアの塗料がはがれやすく、水につけたときにボロボロになってしまう危険があります。
 完成したデカールです。

 今回は国家警察だけでなく、カラビニエリ(憲兵)のパトカーも作っています。

左側が憲兵のパトカーです。車体は米空軍・サンダーバーズの下面色の紺色(Mr.カラー326番)で塗装し、屋根は白色です。現在ではこちらのミニカーのように赤い帯が入っていますが、1980年代頃までは車体は紺色一色でした。その昔は憲兵というくらいですから軍用車輛らしくオリーブドラブだった時代もあるようです。

 イタリアの憲兵というと思い出すのが1980年代にイタリアの公共放送RAIで製作され、日本でも放送された「秘宝を追え イタリア特捜警察」というドラマです。マカロニウエスタンの名優、ジュリアーノ・ジェンマがカラビニエリの美術品盗難専門チーム(これは実在する部門です)の大尉としてイタリア各地を飛び回って事件を解決するというもので、放送当時は彼の地の警察事情など知りませんでしたので「軍隊みたいな階級の呼称で変わっているな」という印象でした。主人公は制服ではなく、私服姿でたしかランチアあたりの乗用車に乗っていたと思います。
 イタリアを旅行された方なら黒い制服のズボンのサイドに赤いラインが入り、白い革のベルトをたすき掛けにしているお巡りさんを見たことがある方もいらっしゃるかと思います。トミーテックのザ・人間「警察署の人々」を塗り替えてあの制服も再現しました。

 奥のヘリコプターが気になりますか?あちらについては次回ご紹介しましょう。

 
 



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日本の鉄道史にもかなり関係があった話

2020年11月12日 | 鉄道・鉄道模型
 前回はアメリカの製鋼所で製造されたレールが日本に輸出されて・・・という話を書きましたが「おいおい、機関車をはじめとした車輛はどうしたんだ」と言われそうですので、そのあたりの話もしてまいりましょう。車輛に比べるとレールの研究をされている方は少ないですし、対象も次々と姿を消しておりますので、前回はあまり日の当たらないところにスポットを当てたというところです。
 車輛の研究に関してはこの世界の大先達の方々もいらっしゃるので、私などが特別なことを書けるわけではありません。そういう意味では誰でも知っている話になりますが、なにとぞご容赦ください。

 明治初期の鉄道開業以降、海外の技術、車輛等の導入から日本の鉄道がスタートしたことは前回も書きました。アメリカ製品はレールだけではなく、機関車をはじめとした車輛が数多く導入されました。特に北海道内の鉄道はアメリカ型が多かったのですが、本州でも英国、ドイツの機関車に混じってアメリカの機関車が活躍しました。鉄道国有化が進む以前のことでしたので、鉄道側もさまざまなメーカーに発注しており、それが形態のバラエティを生むことになりました。
 ボールドウィン、ピッツバーグ、ロジャース、ブルックス、スケネクタディなどのメーカーで生産された蒸気機関車は小型のタンク機関車から、本線用の旅客機、さらには山越えに威力を発揮したマレー式機関車まで多岐に及んでいます。ボールドウィンはフィラデルフィアで長らく生産を行い、後に同じペンシルベニア州内に工場を移設しています。そのものずばりの名称のピッツバーグをはじめ、ブルックスやスケネクタディのようにニューヨーク州に会社を構えているところもありました。東部、中西部がこうした工業の集積地だったことが分かります。
 ボールドウィンの機関車はドームの形に特徴がありました。また他のメーカーでも形式・車輛によっては黒一色ではなく(カラー写真が無いため確証はありませんが)ブルーや緑などに塗装された蒸気機関車が登場しており、鉄道名をローマ字で入れたりしながら全国で活躍することになります。中には原設計がイギリス型の機関車だったB6(2120形)のように量産が進む中でボールドウィンに発注されたものもあり、このグループは2500形とも呼ばれました。B6については日露戦争の軍事輸送のために作られたという面もあり、総勢500輛を超す大所帯でした。
 やがて日本国内でも機関車の製造技術が確立すると、外国からの蒸気機関車の輸入は大正期に入ってからはだいぶ減少しました。大正末期にやってきた8200形(のちのC52)が、本線上を走る「外国型」蒸気の最後になるでしょう。こちらはアルコ・スケネクタディで製造されているのですが、テンダー(炭水車)は日本製ということで、アメリカ型そのものの車体に地味な日本のテンダーがくっついているという感じです。

(模型はマイクロエース製)
パワフルな性能を活かして当初は東海道で、後に山陽本線瀬野~八本松の山越えに使われました。
 また、ちょっと変わったところでは日本統治下の台湾・阿里山森林鉄路のシェイギアード機関車がオハイオ州にあったライマというメーカーのものでした。
 もちろん電気機関車も大正期にウェスチングハウス、GEといった今でもお馴染みのメーカーのものが輸入され、電化の初期に貢献しましたし、電車についてはブリル社の台車はあちこちで使用されました。ブリルもフィラデルフィアに本拠地を置いていたそうで、フィラデルフィアというと大リーグの古豪フィリーズと映画「ロッキー」の舞台というイメージだったのですが、鉄道とのかかわりを再認識しました。ちなみにブリルは明治時代、九州鉄道のために豪華な客車を製造しましたが、これがのちに「或る列車」と呼ばれる編成でした(JR九州がこれにインスパイアされた列車を走らせていますが)。
 その後もアメリカ中西部のメーカーの技術に日本はお世話になっています。現在、ミシガン州に本拠を置くバッド社のステンレスカーの技術は東急車輛の製造した車輛に活かされます。東急7000系にはバッド社のライセンスを示すプレートが車内についていましたし、パイオニア台車もバッドの技術でした。バッド社自身は既に鉄道車輛の製造から撤退しているようですが、日本の鉄道車輛に及ぼした影響という意味では多大なものがあります。
(参考文献 1号機関車からC63まで 片野正巳著 ネコパブリッシング)
 


 

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日本の鉄道史にもちょっとだけ関係があった、という話

2020年11月09日 | 鉄道・鉄道模型
 アメリカの大統領選挙は民主党のバイデン候補が勝利宣言をしました。このゆるいブログでは大統領選と今後のアメリカや国際関係を論じるつもりは全くありません。ただ、前回から大統領選のキーワードとなっていたことと、日本の鉄道に少しだけ関係があった、というお話です。
 前回の選挙から「ラストベルト」という言葉が聞かれるようになりました。定義はいろいろあるようですが、アメリカ中西部を中心に、東海岸の一部も含んだかつての工業地帯を指しており、これらの地域を代表する産業だった工業が衰退し「Rust=錆びた」地帯となっていることからつけられた名前であり、ここでの得票が選挙戦を左右してきました。
 こうした工業地帯ですが、日本の鉄道史と少しだけ関係がありました。今のように錆びつくもっともっと昔の話です。ここで時計を130年ほど戻してみましょう。
 明治5年に日本で鉄道が開業しましたが、その時には車輛、設備といったものはイギリスからもたらされたものが中心でした。その後も日本の工業化が途上であったこともあり、しばらくの間は海外製品の輸入に頼っていたことはこのブログの読者の方ならご存知でしょう。こうした輸入品の中には鉄道に必須のレールもありました。明治30年代ごろから八幡製鉄所でレールの製造が始まりますが、明治から大正期にかけては官民問わず、どの鉄道も輸入のレールに頼っています。
 そんな中でイギリス、ドイツなどから比べれば数は少ないのですが、当時の新興国・アメリカのレールも含まれておりました。この時代、アメリカは南北戦争が終わってまだ日が浅く、テレビドラマ「大草原の小さな家」の時代だったと言えば分かるかもしれません。東部、中西部を中心に数多くの製鋼所があり、まさに成長しつつある国を支えていたわけです。その中の一部が日本にもやってきて、レールとして使われた後に、駅の柱などで長い第二の人生を送りました。

平成22年9月 富山地方鉄道東新庄駅で撮影
JOLIET 1888 Xとあります。レールには側面に製鋼所の名前、製造年月、規格、重量、発注者などの刻印がありました。
こちらはイリノイ州のジョリエット製鉄会社で、1888年10月製、を意味するものと思われます。

平成10年ごろ 名鉄本揖斐駅で撮影
SCRANTON STEEL Co 1? 88
こちらはペンシルベニア州にあったスクラントン製鉄会社のものです。スクラントンはバイデン氏の出生地でもあります。

平成元年 北陸鉄道 鶴来駅で撮影
6009 ILLINOIS STEEL CO SOUTH WKS
イリノイ製鋼会社のものです。年代や発注者までは分かりませんが、1900年前後に同社で生産されたレールの刻印に共通している書体です。SOUTH WKSとは同社のサウス・ワークス=南工場という工場名を指しています。
鉄鋼王カーネギーにまつわるレールもありました。

平成12年 近鉄畝傍御陵前駅で撮影
EDGER THOMSON STEEL 88 (以下不明)
カーネギースチールの前身、エドガートムソン製鉄所の1888年製ものです。ペンシルベニア州にありました。やがて社名がカーネギーになってこのようになります。

平成元年 JR東中野駅で撮影
CARNEGIE 1906 ET IIIIIIII
ETの文字は前述のエドガートムソン工場を指しています。その隣の縦棒は本数で製造月を示しています。
20世紀に入ると英国製よりも米国製のレールが目立つようになります。

平成元年頃?秩父鉄道影森駅で撮影
工 LACKAWANNA 600 6 1919
ラッカワンナ製鉄会社のものです。ラッカワンナはペンシルベニア州の郡(カウンティ)にその名前があります。文頭の「工」マークは国有鉄道(鉄道院)を指します。発注者が帝国鉄道庁→鉄道院→鉄道省と名称が変わってもこのマークは変わりません。
また、アメリカの製鉄所は日本だけでなく、ロシア向けにもレールを作っていました。

79 BS CO MARYLAND IIII 1917 TYPEIIIA 671/2 LBS
平成27年 西武鉄道中井駅にて撮影
ベスレヘムスチール メリーランド製鋼所のもので、BS COがベスレヘムスチールを指します。変わっているのが末尾の671/2LBSで、こちらが67.5ボンドという意味です。日本にはなじみがない重量で、これはロシアの東支鉄道向けのレールです。1917年がロシア革命の年ですから、何か事情があってロシアまで届かず日本にやってきた可能性があります。

同じく中井駅で撮影 ILLINOIS USAの文字が見えますが、イリノイ製でこちらも東支鉄道向けのレールです。

アメリカでは1920年代にかけて製鉄所の統合が進み、カーネギー系のUSスチールとベスレヘムスチールの二大グループに集約されます。一方、日本では国産のレールの生産が進み、昭和に入ると輸入はほとんどなく、国産で占められるようになります。
今回はラストベルトという言葉から、アメリカで作られたレールの話をしてまいりました。もともと古レールの探訪は20代の頃よくやっていたのですが、最近は駅の改築も進んでおり、人知れずこうした遺産が消えてしまっているほか、修繕のたびにペンキが塗り重ねられて刻印の判読ができなくなっているものもあります。このため、ここで紹介したものが現時点で残っている保証はないと思ってください(本揖斐のように路線がなくなったところもありますので、行ってみたけど無かったよ、とならないためにも申し上げておきます)。それよりも、今残っているものを記録していくことが大切かなと思います。また、鉄道事業者様が100年以上前の遺産を忘れずに、片隅でも構いませんので大切に保管していただけたら、とても嬉しいことと思います。
折に触れて古レールの話は今後もしていきたいと思います。
(参考文献 鉄道ピクトリアル レールの趣味的探究序説 西野保行 淵上龍雄 1977年1月号~3月号、WEBサイト 古レールのページ)


 

 

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