工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

僕の好きな車

2019年03月31日 | 自動車、モータースポーツ
 きょうは自動車の本の話です。
 横山剣著「僕の好きな車」(立東舎)を読みました。昨秋出版されている本ですので、だいぶ経っていますが、本日ご紹介する次第です。
 著者はクレイジーケンバンドのリーダー、ボーカルとして活躍されており、ご存知の方も多いでしょう。また、大の自動車好きとしても知られ、楽曲のタイトルや歌詞に自動車がよく出てきます。そのような車と音楽の関係もあって、一昨年のF1日本グランプリでは、国歌斉唱の大役も務められています。
 本書は雑誌「POPEYE」の連載をまとめたもので、各章1車種ずつ、合計71の「好きな車」について、あべあつし氏の美しいイラストともに紹介されています。
 本書に紹介されているのはほとんどが乗用車で、著者が子供の頃に憧れた車から、実際にハンドルを握った車も含めて登場します。私も図鑑で見たり、ミニカーを持っていたり、中には助手席に座ったことがある車種もありました。いわゆる傑作と呼ばれた車だけでなく、著者が「ダメ車」と呼ぶさまざまな理由で成功しなかった車種や、博物館に収蔵されているレアな車まで、愛情をもって書いているあたりに、著者の自動車への深い愛情を感じ取ることができます。これから自動車の主流となるであろう電気自動車についても、エンジンの占めるスペースの制約がなくなった分、デザインが自由になるので楽しみ、と言われているあたり、本当に自動車が好きなんだなと思わせます。
 また、こうした自動車をめぐる話の中に、自身の生い立ちやミュージシャン仲間との交流も描かれ、時にはほろ苦い思い出も出てくるあたりも、長年自動車とつきあってきた著者ならではでしょう。
 ミュージシャンらしく、それぞれの車について、こういう風景で、こういう音楽を聴きながら走ってみたい、という記述もあり、キット化されている自動車なら、モデラーの皆様の中には自分も模型で試してみようか、となるのではと思います。
 
 著者は本当ならトラックなどの商用車も紹介したかった、と言われています。きっと著者が語ったら、また面白いものになるのでは、とどこかでそういった本が出ることを期待しています。そして、鉄道に対する造詣が深いというのも著者を語るうえで忘れてはいけません。横浜市電を歌った「路面電車」や「夜のヴィブラートKQ仕様」なんていう鉄道ネタの曲もあります。私などは鉄道関連の文章を読んでみたいなあと、とも思うのです。

 こうしたエッセイというのは、静かな音楽が流れる喫茶店で、コーヒーでもすすりながら読むのがお似合いです。そんなときに本書に出てくる自動車が窓の外を走っていたら、思わず「ィイネ」と言ってみたくなります。久しぶりに大好きな喫茶店に本書を持って出かけてみましょうか。

 本書の各章の見出しを借りれば、私の好きな東急8000系は「15歳の春、銀色に輝く車体に偉大な平凡の持つ素晴らしさを知った」ということに、新幹線の500系なら「28歳の夏、線路の上を疾走するレーシングカーに出会った」となるのでしょう。自動車が好きという方以外にも、乗り物への深い愛情を理解されている方に、ぜひ読んでいただきたい本です。

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池袋 鉄道模型芸術祭へ

2019年03月24日 | 鉄道・鉄道模型
 池袋にあります東京芸術劇場で開催中の「池袋鉄道模型芸術祭」に行ってきました。
 このイベント、「日本鉄道模型の会」の主催イベントとして今年で4回目を迎えています。同会がかつて主催し、現在は別の形で引き継がれている「国際鉄道模型コンベンション」に比べますと、会場内での物販などが無いこともあってこじんまりした印象はありますが、その分ベテランモデラー諸氏を中心とした質の高い展示を見ることができますので、いつもインスピレーションを受けております。
 一つ一つ紹介する価値はあるのですが、その中でも印象に残ったものをいくつか。
 「懐かしの西武電車+ギミック2019」では、その名のとおり「赤電」と呼ばれた旧性能車輛やそれ以前の西武の車輛たちが走っています。進駐軍専用車を連結した黄色と茶色のツートンカラー時代の編成や、戦中戦後の西武鉄道を語るうえで避けて通れない貨車「ト31」を連ねた編成も展示されているほか、この「ト31」に特殊な荷物を積み込む施設も再現されていました。また、移動変電車「サ1」の模型も展示されていました。こういった車輛は見た目の珍しさもあってイベントでは特に目を引きますね。
 「これがレイアウト/ジャン・ロン原画展」はこのイベントではおなじみの松本謙一氏の港町のセクションに加え、昨年のこのイベントで予告されていた「遠野物語」の世界を表現したレイアウトが徐々に姿を現していました。もともとアメリカ型の印象の強い松本氏ではありますが、蒸気機関車が現役の時代には撮影等で昔の風景が残る日本各地を訪れていらっしゃったでしょうから、氏の手になる日本の風景がどのように出来上がっていくのか楽しみです。また、ジャン・ロン原画展というのは、アメリカのナローゲージ誌の表紙を飾ってきたジャン・ロン氏の鉄道絵画展で、詩情や生活感がある美しい水彩画、リトグラフが展示されていました。いずれも松本氏と平井憲太郎氏のコレクションということで、イギリスの鉄道絵画とも違った魅力があります。個人的にはこういった美しい絵画を見ることができたのは収穫でした。
 実在の風景、鉄道からレイアウトを作られていた中で印象深かったものを二つ。「TJ倶楽部」では東武日光線のレイアウトが展示されていました。市販のストラクチャーにも丁寧に手を入れてあり、このところ訳あって路面電車のレイアウトを注意深く観察している私にとってはとても参考になりました。「武蔵府中の鉄道立体2019」は昨年も出展され、小さなモジュールを組み合わせながら巧みに再現された風景が印象に残りました。
 他にも、アメリカ型やナローゲージなど、普段、自分があまり触れることがない模型というのは、こういう機会でしか見ることができませんので、なかなか興味深いものがあります。
 学生さんや若いモデラーの展示も目を引きますが、全般的にベテランモデラーの展示が多く、それぞれが肩の力は抜きつつも手は抜かない模型ばかりですので、年数だけはベテランの域に達しつつある私も大いに刺激を受けました。
 
 

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今年も開幕

2019年03月19日 | 自動車、モータースポーツ
 先週末に今シーズンのF1グランプリが開幕しました。海外現地観戦など私には遠い夢ですので、当ブログでは今シーズンのお気楽な予想でも、と思っていたのですが、開幕戦が行われるメルボルンで、まさにこれからレースイベントの週末が始まるという木曜日にFIA(国際自動車連盟)のレースディレクターとして各グランプリに帯同しているチャーリー・ホワイティング氏が急逝されるという悲しい出来事があり、そんな気分ではなくなってしまいました。
 チャーリー・ホワイティング氏は、私が初めて鈴鹿のF1決勝を観戦した97年シーズンからF1の技術部門・安全部門の責任者であるレースディレクターを務められていました。私が初めてF1を見に行った95年のパシフィックグランプリでもすでにFIAの技術委員としてプログラムに名前が掲載されています。毎レース違う場所で行われるグランプリが安全に、フェアに行われるためにはルールの遵守やサーキット側の対策など、さまざまな努力が払われている訳ですが、レースディレクターというのは言うなればこうした現場を取り仕切る人物ですので、チーム、ドライバーに関係なく慕われ、また頼りにされており、開幕戦の決勝スタート前にはその突然の訃報を悼むチーム、ドライバーら関係者から黙祷が捧げられていました。普段はライバルとして戦い、時には醜い足の引っ張り合いすらもある世界ですが、一つの「共同体」として結束したり、一緒に何かをする、ということはF1では時折見かけることがあります。私たち観客がレース観戦を楽しむことができるのも、こういった人たちの有形無形の支えがあってこそですので、私のような一ファンにとっても、何か他人事ではない感があるのです。

 さて、レースの方ですが、ホンダエンジンが復帰後ようやく表彰台を獲得ということで大いに盛り上がりましたね。ティフォシ(フェラーリファン)の私でもやはりこれは嬉しく、レース翌日などは郵便配達のスーパーカブですらカッコよく見えてしまうほどで、我ながら相当単純です(汗)。
 私自身、ホンダの復帰に際しては「最初の1年はなかなか厳しいだろうし、表彰台に上がれるのは2年目の後半くらいかな」と思っていたのですが、現実はもっと厳しく、ホンダだけの要因ではないにせよ、いばらの道を歩むことになってしまいました。もちろん、市街地コースの開幕戦だけで判断はできないのですが、上位で走れるだけの性能、耐久性のあるエンジンができたというのは楽しみではあります。今シーズンからトップチームの一つ、レッドブルと後方を走るトロ・ロッソの2チームにエンジンを供給しており、両チームともドライバーがまだ若いという不安材料はありますが、1年間を通した活躍を期待しています。
 決勝のメルセデスの速さを見ると、やはり今年も・・・と思ってしまいますし、精彩を欠いてしまったフェラーリが私などは心配です。巻き返しはできるのでしょうか。また、中団チームの争いも熾烈になっており、優勝経験のある(元チャンピオンも含めて)ドライバー達もひしめいていますので、1ポイントをめぐる争いも、激しくなりそうですし、またこういったドライバー達がレース巧者ぶりを見せて時には上位に顔を見せたりしたら・・・という期待も持てそうです。
 そして、今シーズンからはレース中の最速ラップに対して1ポイントが与えられる制度が60年ぶりに復活しています。1950年にF1グランプリがスタートした際には、1~5位と最速ラップに対して得点が与えられていたのですが、後に1~6位が得点対象となったという経緯があります。最速ラップに得点が与えられたことで順位だけでない楽しみも生まれ、早速開幕戦でもレースの終盤まで目が離せなくなっていました。
 ということで今季はどうなっていくか、シーズン中も折に触れてこのブログで書いていくことにしましょう。

 

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女性の日

2019年03月08日 | 鉄道・鉄道模型
 3月8日は「国際女性の日」として、それにちなんだ話題が各種メディアで報道がされていました。もともとは100年以上前のアメリカで婦人参政権を求めるデモがこの日にあったことがきっかけだそうですね。その後ロシア革命でもこの日に合わせて蜂起があったことから、当時のロシアの暦を取って2月革命などと呼ばれ、記念日として特に旧ソ連などの社会主義国を中心に祝日となったところもありました。などと書いていると「あらあら、今日は脱線してどうしたんですか?」と言われそうですが、ちゃんと乗り物の話も出てきますので最後までおつきあいくださいね。
 この「女性の日」、特に社会主義の国では男性から女性に花を贈るといった習慣がありますが、まだ本格的な春の訪れが遠いソ連、東欧諸国では造花や花柄のカードなどを贈ることが多かったようです。
 社会主義の国だけでなく、いわゆる「西側」の国でもこの日に花を贈る習慣があるのはイタリアです。この日は別名「ミモザの日」と言われるほど、男性が女性に黄色くて小さなミモザの花を贈るのが習慣となっています。
 数年前、ちょうどこの時期にイタリアを旅行した時のこと、まさに3月8日にミラノの街中にある小さな食堂で私と連れ(女性)がお昼を食べた後、お会計を済ませようとするとお店のウエイター氏が私の連れにミモザの房をプレゼントしました。状況が飲み込めていない私の連れに、今日は男性から女性にミモザの花をプレゼントする日なんだよ、ということを説明したのをおぼえています。東洋からやってきた旅行者だけでなく、常連客らしい若い女性にもミモザの花がプレゼントされていましたので、女性客限定のお店からの粋な計らいだったようです。この日、私たちはヴェネツィアから日帰りでミラノを訪れていましたので、ミラノの街を歩いた後で列車に乗り、ヴェネツィアのホテルに帰り着くまでずっとミモザの花と一日を過ごしました。
 日本のバレンタインデーやホワイトデーのような習慣となっているようですので、さまざまな企業等もこれに合わせたキャンペーンを行っています。鉄道事業者とて同じで、日本のJRに相当する旧国鉄のトレニタリア(Trenitalia)は、私たちが旅行したときには花の販売・宅配業者の割引きキャンペーンとタイアップを行っていたようで、クーポンコードの入った案内が列車内に置かれていました。
 他にもトレニタリアでは女性の日に合わせた割引チケットのキャンペーンなどを行っているほか、今年は一部の高速列車の乗客のために、ミモザの花に見立てたレモンのキャンデイーをプレゼント、という企画もあったようなのですが、こちらは急遽取りやめとなった、というような記事をみかけました。私のイタリア語の理解力では詳細は分からないのですが、そもそもこの日にストライキなども予定されているようです。
 いずれにしても、男性から女性に花を贈る習慣、などというのは日本では一般的ではなく、私はこういうのがあってもいいんじゃないかなと思っています。
 それから、このミモザの花からインスピレーションを受けて、私は「緑南(りょくなん)交通」という架空の私鉄を模型で作っています。車輛たちは鉄道コレクションや一部完成品を塗り替えたものですが、黄色と緑のイメージを再現したくてこの塗装になりました。

トレニタリアE402型電気機関車(A.C.M.E製)をバックに、旅をしたミモザとキャンペーンの案内

緑南交通の車輛たち




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映画ファースト・マンとアポロ宇宙船

2019年03月04日 | 飛行機・飛行機の模型
先日、映画「ファースト・マン」を観に行きました。今年は人類初の月着陸から50年ですが、そのアポロ11号のニール・アームストロング船長とアポロ計画を描いた作品です。
私の場合、物心ついたときにはアポロ計画は終わろうとしておりましたが、その後のボイジャー計画、スペースシャトルなどを通して、宇宙開発や宇宙飛行には子供の頃から興味がありました。アポロ11号やアポロ計画についてはさまざまな文献も出ており、読んだこともあります。また「アポロ13」のような映画もありましたし、その主演だったトム・ハンクスが製作総指揮を執ったテレビシリーズ「人類、月に立つ」もあって、私も観ておりました。そんなわけで、2月のある日、映画館に足を運びました。以前このブログでも触れましたが、映画館ではオスカー4冠に輝く「ボヘミアンラプソディ」がロングラン大ヒット中でして、ファースト・マンの方は小さなスクリーンでの上映となっていました。
アポロ11号の場合、初めての月着陸というのは紛れもない偉業ですが、アームストロング船長も決して華やかなで逸話の多いというようなキャラクターではなかったようですし、アポロ12号のようにクルーの仲が良く、地上でも揃いの車を乗り回し、宇宙でも友情に包まれたミッションだった、というわけでもありません。また、アポロ13号のような危機と克服があるわけでもありません。このため、このミッションをどのように描くかは少々気になっておりました。映画でもアポロ計画の技術的な成功やアポロ11号の飛行そのものよりもアームストロング船長の内面に迫ろうという感じでした。全編を観て思ったのは家庭も仕事も大切にする一人のまじめなアメリカ人が自分の仕事として月に行って無事に帰ってきた、という感じで、それ以上でもそれ以下でもない、という感想を持ちました。もちろん、月面のシーンの美しさ、一人の父親、夫として時折垣間見せる人間的な部分など、心理描写などは秀逸ではありましたが、私にとってはX-15に搭乗してのテストの様子や、アポロ計画以前にジェミニ8号で宇宙に出た際にトラブルに遭遇し、九死に一生を得て帰還したというエピソードの方が印象に残りました。主人公の人生が山あり谷ありで音楽を通してさまざまなドラマが展開する「ボヘミアンラプソディ」に比べればはるかに地味ではありますが、X-15でフライトができるというのは数多のパイロットの中でも特別な存在ですから、そういった人物の半生を知るという意味で、興味深い作品ではありました。
 アポロ計画そのものを技術面も含めて知りたい、ということであれば前述の「人類、月に立つ」を観ることをお勧めします。アポロ11号に至るまでの悲劇も含めた人々の苦闘も、11号以降、さまざまな役割を与えられて月に降り立ったミッションも技術開発史を含めて詳しく描かれています。
 さて、模型店でもアポロ宇宙船は(宇宙船を運んだサターンロケットを含めて)数多く発売されています。私の手元にもいくつかあります。まずはエアフィックス1/72の「APOLLO LUNAR MODULE」です。着陸船とスーパーで売っている冷凍ピザのような月面パーツが入っています。かなり古いキットで出来も年代なりというところですので、難しいことを考えずにストレートに組んでしまった方がよさそうです(そう思い続けて〇十年経っている)。
 近年ではドラゴンも1/72で着陸船、司令船などを発売しています。こちらはエッチングパーツもついていて、プラ製とはいえ、立派な台座もついています。日本のメーカーからも各社が製造、発売し、あのタミヤ模型もアポロ11号のミッションの直後に司令船、着陸船などを発売しています。古いキットではありますが内部構造までかなりリアルに再現されたキットでした。ただし、熱しやすく冷めやすい人々の性向が表れてしまったのかこのキットも2年で製造中止になり、長くカタログ落ちしておりました。おそらく10年前の月着陸40周年の時だったと思いますが、司令船、着陸船、そしてサターンロケットの先端部分を含めたセットが再販されています。
 宇宙船の場合、耐熱素材のメタリックな質感、色を再現するのがネックとなり、なかなか手を付けられないでおりましたが、最近はメタリックの塗料も各種出ておりますし、のりつきのメタルシートも各種出ておりますので、言い訳ができなくなっております。ということで、50周年に合わせて、まずはこのうちのどれかを組んでみたいところです。製作のBGMはT-SQUAREの「Man on the moon」にしましょうか。
 アポロ計画と言いますと、地球に帰還したカプセルを回収するシーキングヘリコプターも各社からキットが発売されています。Nゲージサイズに近い1/144でもSWEETの「おまけキットつきデカール」のラインナップに入っていましたね。あなたのレイアウトの海面でも回収シーンが再現、と言いたいところですが、実際にはカプセルは陸地から遠く離れた海面に着水しています。
 アポロというともう一つ。明治のアポロチョコレートも子供の頃のお気に入りでした。こちらは司令船の形と似ていることからこの商品名がついたそうですね。今でもコンビニの棚で見かける商品ですから、こちらは大ロングセラーですね。

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