工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

ピギーバックの行進 その3 自作デカールを試してみる

2020年06月27日 | 鉄道・鉄道模型
 前回の最後にお見せしましたが、見慣れない事業者のトラックについて今回は紹介しましょう。
 模型のジャンルは問いませんが、製品にないマーキングなどを作りたい場合、手描きをしたり、デカールを自作したりということになるかと思います。インレタやデカールを外注で作るという選択肢もありますが、原稿作成の手間や値段のことを考えると容易ではないという方もいらっしゃるでしょう。そんなときに味方になってくれるのが自作デカールになるかと思います。かつてはハセガワやモデラーズからクリアーデカールが発売されており、これらはどちらかと言えばデカール面に塗料で手描きすることを想定していたもののように思います。モデラーズのそれはイタリア・カルトグラフ製という高品質なもので、理想科学から発売されていたプリントゴッコ(懐かしいですね)のハイメッシュインクと組み合わせて作った自作デカールの記事がその昔の「とれいん」誌に掲載されており、私も試してみたことがあります。
 パソコンやプリンタの普及でパソコンで作れるデカールも近年は増えており、特にインクジェットプリンターが家庭に普及するにつれ、本来水に弱いインクでも使えるデカールというのも増えてきました。
 だいぶ前置きが長くなってしまいましたが、今回の作例はまさにそのインクジェットプリンターを使った自作デカールが主役です。
 「ハイキューパーツ」から「水転写式デカール自作用用紙/家庭用インクジェットプリンター用」が発売されており、今回はこちらを使ってみました。透明ベースと白色ベースの二種ありますが、今回は透明ベースを使用しています。
 
A4サイズが5枚入っています。詳細な説明もあります。

Nゲージの工作ではA4サイズで使うこということは少ないので、A5サイズに収まるように原稿を作ってみました。インクジェットですので白色は無いわけですし、薄い色は発色が厳しく、貼る面の地色に負けて透けてしまうと思いますので、作例では明るく濃いめになるよう心掛けました。出力したら丸一日乾燥させます。
 出力した後にクリアコーティングをしなければいけませんが、ここでは模型用のラッカークリア(Mr.カラーのスーパークリアⅢなど)をエアブラシで吹き付けることが推奨されています。缶スプレーの場合、吹き付け量が多くなり、インクが溶けやすいので、エアブラシによるコーティングを推奨しているようです。
 コーティングが十分乾いたら(ここでも丸一日待ちました)、マーキングを切り出して貼っていきます。

(切り出した後の写真で、そのうえ90°回転してますね。すみません)
一台は緑南通運という事業者にしました(写真右)。

黄色い帯は市販のものを使用しています。以前「女性の日」に合わせて記事を書いた際、ミモザの花をイメージした架空の鉄道として「緑南交通」というのを紹介したと思います。緑南交通は貨物輸送も行っているため、その流れで物流部門の会社を持っている、という設定です。前回の中越運送や新潟運輸のトラックと同様にバン部分にピギーバックのトラックであることをアピールしています。キャブは黄緑6号で塗装しました。
 隣の「インターシティ急行便」ですが、こちらの赤帯部分も市販のものを使用しています。キャブはGMカラー27番・レッドAと28番アイボリーBということで、昔の西武レッドアローのカラーリングです。自作デカールについてはそれぞれ色透けもなく、軟化剤にも対応して凹凸になじんでいます。
 もう一台は「ORANGE EXPRESS」です(写真右)。

こちらはもともと旧ロットの製品にカンガルー便のデカールを貼っていたものだったのですが、経年変化でデカールの余白部分が黄変して見るも無残な姿になっていました。そこで、デカールを極力はがし(はがすというよりはこそげ落とすという感じでしたが)、バン部分は改めて銀色を塗りました。この銀色はGSIクレオスの「荒野のコトブキ飛行隊」カラーの「パーカッションジュラルミン」という色で、通常の銀色よりもかなり輝きが強い色です。文字部分はデカールで、オレンジは手描きです。キャブはガイアノーツのエメラルドグリーンに塗りました。運送事業者とは思えないくらいポップな感じですね。「ORANGE EXPRESS」の由来ですが、渡辺貞夫さんの名曲から拝借しております。余談になりますが、あの軽快なメロディーに乗って渡辺貞夫さんと草刈正雄さんが出演されていた資生堂のコマーシャルは今でも印象に残っています。
 この三台はいずれも、バン部分についてデカールが乾いた後にデカールの保護のため半光沢のトップコートを吹き付けています。

 さて、ハイキューパーツのデカールですが、これまで他社から発売されている同様の製品と比べてフィルム部分が薄く、貼った時の段差があまり気になりませんでした。もちろん、エアブラシでコーティングを薄く吹き付けていることも影響しているのかもしれませんが、いろいろ応用がききそうです。また、発色も良く、思った以上に色透けも少なかったので、もう少し薄い色で、濃い地色の上で試してみようかなと思います。
 なお、貼り付けてから3か月以上経ちましたが、他社のデカールでみられたような端の部分がはがれたりといった変化もなく、耐久性についても今のところ満足しております。

 ミニチュアの街をトラックが走っていきます。画面左奥のグレー色の何かはともかく、赤と青の乗用車についてはピギーバックの時代にもマッチしておりまして、こちらは近々ご紹介したいと思います。

 

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ピギーバックの行進 その2 さまざまな事業者を再現する

2020年06月20日 | 鉄道・鉄道模型
 前回のブログでT-SQUAREの東京公演が・・・というお話を書きましたが、残念ながらツアーは中止、代わりにネットでの無観客ライブ配信の予定がアナウンスされました。まだまだ予断を許さない状況ですし、会場では「三密」は避けられないところですので、今、中止を発表したことは英断だったと思いたいです。

 さて、前々回はクム80000の積荷であるピギーバック輸送のトラックを仕上げる、という話を書きました。製品はカンガルー便のデカールが入っていましたが、それ以外の事業者のトラックもピギーバックに参加していました。今回はコンテナやラッピング車両のデカールを各種販売しているR-工房というメーカーのデカールを使い、いくつかの事業者を再現してみました。

 ピギーバック輸送というと、個人的にはトナミ運輸や福山通運のイメージがあります。R-工房さんのデカールですが、糊もしっかりしていますので、一度貼ってから修正をしていくよりはきっちり位置決めをして無理に動かさないようにしたほうがきれいに仕上がります。また、デカール軟化剤も使えますので、特にバン部分の凹凸になじませるようにしましょう。
 トナミ運輸のキャブはGMカラー21番・アイボリーAと同26番・マルーンAの塗り分けとし、バンパーの青い部分はMrカラーGXのスージーブルーにしました(Mrカラー65番・インディブルーでもよいでしょう)。
 福山通運のキャプの緑色はスペインの塗料・ファレホのグリーンスカイを塗りました。福山通運のライトグリーンは明るいけど濃い、という感じの色です。GMカラーで再現したいという方は、黄緑6号や34番・ライトグリーンBなどから調色してはどうでしょうか。

バン部分に文字を書き込んだものもいくつか見ることができました。中越運送のそれもデカールが発売されており、左側は分かりづらいかも知れませんが「ほほえみキャッチボール」と書いてあります。中越運送のキャブ部分はGMカラー26番・マルーンAで塗りました。
右側のものもそうですが、ピギーバック輸送のトラックであることを示すかのようにバン部分に「ピギーバック」と書き込まれたものもありました。

新潟運輸のトラックにも(写真右側)ピギーバックと表記されています。
ほとんどのトラックがバン部分は銀色に輝いていましたが、フットワークのように白く塗装されたものもありました(写真左側)。余談になりますがフットワークはF1チームを所有し、レーシングカーも赤と白のストライプでした。
 白く塗りかえる場合ですが、先にMrホワイトサーフェーサー1000で下地を整えておきます。サーフェーサーが乾燥した後で白を塗ると色透けを防ぐことができます。

 タイトルにピギーバックの行進、と書きながらクム80000に積載した状態の写真を用意していなかったですね。


 我が家ではEF81一般形が先頭に立つことが多いです。
 ピギーバック貨車だけで長い編成を楽しむもよし、コキ50000などのコンテナ車と組み合わせてもよし、ではありますが、象さんのマークの第一貨物のトラックは別として、前の三台は見慣れない事業者のトラックです。


緑南通運?、インターシティ急行便??、さらにはオレンジエキスプレスって・・・これらのトラックについては次回また、ご紹介しましょう。

 
 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中止とか、やっと出会えたとか・・・梅雨の日々に

2020年06月14日 | 日記
 前回、ピギーバックのトラックの話を書きまして、今回はその続きのつもりで写真なども準備していたところですが、予定を変更して新型コロナウイルス関係でこの話を書こうと思います。
 鈴鹿サーキットで10月に予定されていたF1日本グランプリが中止となりました。海外(それぞれのチームひとつとっても現代のF1は多国籍です)から関係者を招くにしても10月までに入国制限が解かれるかどうかは現時点で不透明なわけですから、正式にその知らせを聞いたときは「ああ、やっぱり」という思いの方が強かったわけですが、それでもずっと続いていたイベントが今年に関しては中止、というのは残念でなりません。F1についてはとりあえず欧州で8戦を開催し、他のサーキットとも一部は交渉中と言われています。世界選手権が始まった1950年代は年間10戦にも届かず、取って付けたようにインディ500マイルを選手権の中に含めていました。インディとF1に関しては人も、マシンも全く交流が無く、F1が欧州だけで行われていたので「世界選手権」という名前を保つためにインディ500を入れたなどと言われています。今年が全体で何戦開催になるかはわかりませんが、このところの肥大傾向からはだいぶ絞られたものになるようです。F1を五輪やサッカーのW杯と同列に扱う向きもありますが、自動車の選手権やレースにはF1と同じくらい魅力を持ったものが他にもあります。F1はお金の動きも(日本でF1ブームと呼ばれた頃に比べても)桁違いであり、そのあたりの功罪も以前から語られているわけですが、新型コロナウイルスがこういったスボーツビジネスに冷や水を浴びせる形となったわけで、今後否応なくF1にも変化が生じるのではないでしょうか。特にこの10年くらいはF1もより華美になっている印象を受けます。改修後の鈴鹿サーキットを見ても、施設そのものが昔に比べてかなり立派になっており、観客にとってはありがたいことでもあるのですが、その分チケットも値上がりしているのも事実です(ただし、最近では子供連れや若いファンのために安く設定しているチケットもあり、こういった取り組みは昔は無かったので素晴らしいことと思います)。1970年代のように簡素なピットガレージで十分、とか昔の鈴鹿サーキットのように仮設トイレがずらっと並ぶ光景に戻ってほしいとは言いませんが、安全対策さえ十分に取ってくれていれば、必要以上に華美にならず、参戦・開発コストを下げ、開催国の地元ドライバーがスポットとして簡単に参加できたり、中古のマシンがレンタルできるくらいのレギュレーションだったらいいのに、とちょっとだけ思うことがあります。
 私は1997(平成9)年から日本GPは「皆勤賞」だったのですが、これで今年は三重の美味しいお酒も、美味しい食べ物も、宿泊地の名古屋名物も買って帰れないので家族は残念がっています。来年こそはぜひ鈴鹿でF1を観て、思いっきり応援して、楽しむんだ、と思っています。

 東京も緊急事態宣言明けで店舗が開くようになっていますが、それでも飲食店などは以前ほどの客足が戻っていないようです。個人的によく行くお店が以前に比べると寂しい限りで、たくさんお客さんがいて賑わっていた頃が懐かしいです。簡単に入れるというのはお店にとっては決してありがたいことではないので、応援できる範囲で食べたり、飲んだりしたいところです。
 
 さて、コロナウイルスの流行に関連して発売が遅れていたT-SQUAREの新譜「AI FACTORY」がようやく発売となりました。以前なら発売日と同時にCD屋さんに駆け込んだものですが、近くにこうした店もなくなり、今年は通販で注文したものを宅配ボックスで受け取る、という今時な入手方法となりました。今年はキーボードの河野啓三さんが病気から復活、サポートキーボードの白井アキトさんも加えて6人での編成ですが、都会的なカチッとしたナンバーあり、珍しく伊東たけしさんのフルートをフィーチャーした曲もありと早速楽しんでおります。都会的なサウンドは一昨年の「CITY COASTER」でも堪能できましたが、今回のアルバムも「ハズレ」の曲が無く、ライブで聴いてみたいと思う曲も多いです。東京公演が7月に予定されておりますが、無事に開催されることを祈りたいです。
 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ピギーバックの行進 その1 クム80000の積荷をディテールアップする

2020年06月11日 | 鉄道・鉄道模型
 ごぶさたしておりました。公私とも少々忙しかったのと、ブログのための仕込みもございまして、なかなかパソコンの前に座れませんでした。2月、3月に作っていた飛行機の模型もまだ紹介できていませんので、書きたいことはいろいろあるのですが・・・。
 緊急事態宣言も解除され、生活が元に戻り始めている方もいらっしゃるでしょう。私も再開した模型屋さんを覗いたりしましたが、一部のお店では副資材と言われる塗料、うすめ液などが品薄となっていました。通販で巣ごもり消費が堅調だったのか、こういったものは不要不急のものとして生産・流通が止まっていたのか分かりませんが、困られている方もいらっしゃるのではと思います。日頃から醤油とオリーブ油とうすめ液は必ずストックが1本ずつ(もちろん前二者とうすめ液は別々の場所に保管していますが)あるように気をつけていましたので、私は今のところ支障なく模型作りを続けています、と言いたいところでしたがマスキングテープを切らしてしまい、いくつかのお店を回って入手しました。
 さて、今日は自動車の話なのですが、鉄道模型に出てくる自動車が主人公です。トミックスからクム80000という貨車が発売されています。最近では1年半ほど前に再販されまして、何輛か買いました。クム80000というのは国鉄末期に登場したピギーバック貨車で、4tトラックをそのまま貨車に乗せ、貨物列車として長距離輸送ができるようになっておりました。この頃の日本は好景気に沸き、物流も盛んではありましたが、長距離輸送は大型の10tトラックを使い、地域の輸送は4tトラックに積み替えておりました。このため、4tトラックを貨車に乗せて長距離輸送することで積み替えの負担を軽減できるようになり、運送業者からは歓迎され、各事業者のロゴやマークの入ったトラックが貨車に乗せられ本州各地を行き来しておりました。
 やがてバブル崩壊後の景気低迷で需要も落ち込み、またトラックの自重も含めて貨物運賃に含まれることからコストも高くつき、運送業者からは敬遠されるようになり、平成12年にはピギーバック列車は全廃されました。ピギーバック開始当初はテレビニュースでも取り上げられ、なかなか興味深い試みと思いましたし、環境にも優しい輸送形態でしたが、なにか寂しい最後だったように思います。
 模型を見てみましょう。貨車と4tトラック2台、デカールがセットされています。貨車の方も常備駅やナンバー、形式など、狭いところにどうやって貼るの!?と言いたくなるくらい難易度が高い作業が待っています。
 貨車に載せるトラックが今回の主人公です。

シャシーとバン、キャブは外すことができます。キャブには透明プラスチックのブロックが窓ガラスとしてはめ込まれています。

外せるとは言っても軽く接着されているようです。また、古いロットの製品はキャブを外すことが難しいものもあります。窓ガラスのパーツをキャブから引き抜くのもコツがいりますので、無理に力をかけたりしないよう気をつけてください。もし、どうしても外せないようならあきらめて次の作業に進みましょう。
 デカールは西濃運輸のものが用意されています。

そのまま切り出してもよいのですが、バン部分は凹凸が多いためなじませるのが難しいこと、余白部分が経年変化で黄変するおそれもありますので、文字、ロゴ、帯などに分けて極力切り出して余白部分を減らしておきます。

水にくぐらせたデカールを丁寧に位置決めした上で貼り、マークソフターなどの軟化剤を塗り、なじませます。
キャブもカンガルー便になるよう塗り分けていきます。クリームはGM鉄道カラー28番(アイボリーB)、青い部分は同16番(青20号)です。ヘッドライトを銀に、グリル部分をつや消し黒に塗ってあります。

デカールを貼ったバンは最低でも一晩乾かし、半光沢の水性トップコート(クリアー)を吹き付けます。
ホイールも銀色に塗ります。
十分に乾いたらバンをシャシーに固定して完成です。

カンガルー便だけでなく、他の事業者のトラックも別売りのデカールで再現できます。次回はそれらを紹介しましょう。

参考文献 RM LIBRARY84 車を運ぶ貨車(下) 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする