工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

ブラボー! ジプシー

2024年06月01日 | ときどき音楽
 5月は本業に、お出かけに、模型にと忙しく過ごしていたのですが、どうしても観に行きたいライブがありまして、行ってきました。それはジプシー・キングスの来日公演で、実に7年ぶりだそうです。前回はBUNKAMURAのオーチャードホールだったように記憶していますが、今回の東京公演は昭和女子大学人見記念講堂でした。
 ジプシー・キングスにはスペインのロマ(ジプシー)にルーツを持つミュージシャンで、彼らの親、祖父の代がスペイン内戦を逃れてフランスに逃れて定住したことから、彼らの楽曲はフランスに住みながら歌詞がスペイン語となっています。1980年代初頭にレコードデビューするも、フラメンコギターというのか、アコースティックなアルバムはメリハリとパンチに欠けてあまり人気が出ませんでした。この頃の彼らの写真を見ると、パリ・リヨン駅あたりに所在なげにたむろしている(できれば近づかない方がよい)お兄ちゃんたちという風貌です。1980年代後半にクロード・マルチネスというプロデューサーを迎え、ポップをはじめとして「味付け」を加えていくことでバンボレオ、ベン・ベン・マリアなどの曲がヒット、いわゆる「ワールドミュージック」の世界を牽引しました。最初はアコースティックで売れない、というのはサイモンとガーファンクルもそうでしたね。
 日本ではインスト曲の「インスピレイション」が時代劇のエンディングに使われているほか、カンツォーネの名曲をカバーした「Volare!」あたりがおなじみですし、「空耳アワー」で採り上げられた曲も多いのですが、CDを買って彼らの音楽を聴くようになったのは90年代初頭だったと思いますし、来日公演も2000年頃を皮切りに何度か観に行っております。哀愁と情熱のボーカル、そしてギターの巧みさと美しさに魅かれた、というところで、特に熱く、時に乾いた感じの演奏や曲もあって、都会的に洗練されたサウンドゆえか、東京に暮らしていても似合う音、と勝手に思っています。音楽に関しては雑食性なところがありますが、クイーンと同様、100m先から聞いてもジプシー・キングスの音楽だと分かりますし、そこが魅力なのだと思います。そういえば青森で津軽三味線の生演奏を聴いたときに、ジプシー・キングスの演奏を思い出したものです。あちらも哀愁と情熱、という感がいたします。
 さて、メンバーも昔と今日ではだいぶ違っていて、90年代にはチコ・ブーシキーが脱退し「チコ・ザ・ジプシーズ」を立ち上げ、こちらのライブも何度か見たことがあります。今回の来日メンバーも昔からだいぶ若返っていて「ジプシー・キングス feat,ニコラ・レイエス」として、オリジナルメンバーのニコラ・レイエスをフィーチャーした、という表記になっています。
 ライブの方は「定番曲」という感じのオンパレードで、久々の来日ですし、やはりみんなが知っている曲を、となったのでしょう。おそらく「インスピレイション」などは日本限定なのでは、と思います。どの楽曲においても情熱も、哀愁も今までより熱く、深くなっている感があり、そこはリードボーカルのニコラ・レイエスの年齢を重ねてこその成せる業のように感じました。フラメンコよろしくギターとボーカルだけ、といったコーナーもあって、ライブならではという感がありましたし、ちょっと他の曲とは毛色が違う「モンターニャ(山)」は、私の好きな曲ということもあるのですが、いい曲やいい演奏ってジャンルは関係ないよな、と思うのでした(この曲、演歌やベテランのポップスの歌手が訳詞をつけて歌っていたとしても不思議でないし)。もともとがフラメンコギターという伝統に根ざした世界の出身からか、年齢を重ねていくことで出る深みみたいなものがあり、そこは落語や歌舞伎といった世界にも通じるように感じました。
 コアなファンからすれば、レゲエっぽいアレンジの曲や変化球を期待したいところですが、年齢高めの客席はみんな大興奮、途中から立ち上がる人も多く、また興奮が過ぎて通路に出て前方に駆け出し、係員に制止される人(こちらは外国人が多かったですが)もいました。
 そんなわけで私も「バンボレオ」で「医者も手が空いちゃたまんねーな」と口ずさみ「バーモス・ア・バイラール」(日本語だと「さあ踊ろう」という感じですか)で踊っていたクチですが、スペイン語にはイタリア語と発音の近い単語もあって、そのあたりも楽しみながらの2時間でした。
 アンコールはアカペラの「マイ・ウェイ」で、この曲って日本では昭和のおじさんがカラオケで歌って部下から嫌われる曲というイメージになっているのですが(そんなことを知っているのも、私くらいの世代で最後かも)、私はオリジナルの「くさみ」みたいなものがなくなって、ジプシーバージョンの方は好きです(自分で歌ったりはしないけど)。ライブで聴くと鳥肌ものなんです、これ。
 あっという間のライブではありましたが、ステージからたくさんエネルギーをいただいて、会場を後にしました。

リードボーカルのニコラ・レイエス。ライブではスマホの撮影がOKでした。

 
 


 
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 静浜基地航空祭2024へ | トップ | 祝!  モナコ生まれのドライ... »
最新の画像もっと見る