工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

あの箱絵を忘れない

2023年07月26日 | 鉄道・鉄道模型
 長年グリーンマックス(GM)のキットの箱絵、組立説明図を手がけられ、近年では鉄道模型趣味(TMS)誌での連載で親しまれていた小林信夫さんが亡くなりました。今月発売のTMS誌上にも製作記事が掲載されており、編集後記で訃報について触れられていましたので、急なことだったのでしょうか。
 氏の名前を知ったのはだいぶ後になってからでしたが、GMキットの箱は、車輛、ストラクチャー問わずその昔は氏のイラストが描かれていました。

(今では完成見本の写真が使われるので、こうしたイラストの箱絵ではありません)
また、車輌キットの組み立て図やイラストなども手掛けていましたので、GMキットのあるところ氏のイラストあり、という感じでした。



 私が思い出深いのは、お名前はクレジットされていないものの、氏の才気が誌面すべてにあふれていた「G.M. CRAFTSMANS MANUAL」(GMマニュアル)という86年刊行の本でした。全般に工作ガイド的な役割の本ではあり、当時のGMのカタログと同じ横長の判型が特徴でした。
 この本で特に印象に残っているのは、実感的な河川の表現(これは河川だけでなくその周辺の構造も含めて、という意味です)について解説した「川をレイアウトする」という記事と、Nゲージのサイズに近いスケールの飛行機模型を採り入れた「1/144スケールノススメ」でした。

(河川敷のトロッコとその働きについても触れられていました)
川と河川敷には何があるのか、どうしたらリアルで自然な風景になるかなど、いまでも大いに参考になります。

(このイラストが、以前もブログで描きました「在日米軍トマソン基地」の構想に刺激を与えております)
学生時代、鉄道研究会のレイアウトに「空港」や「飛行場」、「基地」を出現させたものです。巻末にはその時点で入手できる旅客機のキットガイドも出ていました。

 近年ではTMS誌で身近な材料から作る模型の記事を執筆されていたのを思い出します。身近な材料、というのが実は一番難しく、そこから生み出される自由型の車輌を見るにつけ、自分ではこんな風には作れないよなあ、と思うことばかりでした。
 また、トミーテックの「ノスタルジック鉄道コレクション」のイメージイラストも描かれていたので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

 
 この細密感がありながらどこか楽しいイラストと会うことができないのは甚だ残念ではあります。小ネタのように仕込んであったりする乗り物などを見つけるのも楽しみでした。来月のTMS誌上でこれまでの足跡も含めた記事が掲載されるそうですので、それを読みながら改めて故人を偲ぶことといたしましょう。


(「この部分自作した方が速い」というフレーズで、この車輛を問わず、どれだけのファンがチャレンジしたことか・・・。






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生きながらフュージョンに葬られ!?

2023年07月22日 | ときどき音楽
 三連休の最終日の17日、東京ドームシティホールで開催された「JAZZ FUSION SUMMIT」というライブに行ってきました。このイベント、このブログでも時折登場しますライブハウス、ブルーノート東京の35周年記念として開催されたもので、出演者もカシオペア、DIMENSION、T-SQUARE、ブルーノート東京オールスターズという日本のフュージョン界の代表とも言える三つのバンドと、エリック・ミヤシロさんが率いる凄腕そろいのビッグバンドが登場ということで、チケットも早々にソールドアウトだったそうです。この手のイベントですと、2003~2005年にかけて「クロスオーバージャパン」というフェスがあり、こちらは70年代、それ以前から活躍しているミュージシャンをはじめ、歌ものも含めてたくさんのミュージシャンが参加していました。今回のライブは4組ですから、厳選された質の高いバンドが見られるということで、いやが上にも期待が高まります。既に公式ライブレポが出ており、セットリストも出ていますが、私なりの感想なども記していきたいと思います。ということで一部ネタバレも含みますが、ご容赦ください。
 会場の東京ドームシティホール、15年くらい前にスクエアのライブでお邪魔して以来です。その頃はJCBホールと名乗っていました。ライブ当日は猛暑で、外で開場を待つのもかなりきつかったのですが、会場に入り、席に着いてからは空調も手伝い、だいぶ楽になりました。1ドリンクついていましたが、こういうときにお酒は危険なので、スポーツドリンクにしました。
 確かこのホール、どの位置から見てもステージと等距離になるよう作られていると聞いたことがあります。アリーナ席から見るとステージを見上げる感じでした。今日の出演者全員の席、楽器のスペースがステージ上にありますので見えづらいところもありましたが、大きなスクリーンもありますので、こちらが助けてくれそうです。
 ライブのオープニングはカシオペアの鳴瀬喜博さんを筆頭に、DIMENSIONから二家本亮介さん、スクエアはおなじみ田中晋吾さんのベースセッションが始まりました。ドラムにはスクエアの坂東慧さん、途中からショルダーキーボードでカシオペアの大高清美さんが入り、ヒートアップです。坂東さん、カシオペアのTシャツ着てましたね(笑)。
 バンドとしてのトップバッターはカシオペアでした。カシオペアですが、ドラムが神保彰さんから今井義頼さんにバトンタッチして「CASIOPEA P4」と名乗っています。「第4期カシオペア」ということだそうで、私もライブで「第4期」を見たのは初めてです。第3期、第4期の曲が中心となりましたが、最後は第一期からの代表曲「DOMINO LINE」と「ASAYAKE」で締めました。「ASAYAKE」で拳を突き上げたのは言うまでもありません。ドラムが若い今井さんになって、神保彰さんの後任というのもプレッシャーじゃなかったかと思いますが、元気があって、しかもこのバンドのドラムとして求められているテクニックもある演奏は、後ろから前の三人にパワーを送っている感じもしました。もちろん、リーダーの野呂さんのギターをはじめ、これまでのメンバーも「スリル・スピード・テクニック」と言われたデビュー当時のフレーズそのままの演奏で、こうなりますと「板前は途中で変わったけど、いつもの味も、新しい味も美味しい」お店ほ思い起こさせます。
 カシオペアの後はドラム対決です。カシオペアの今井さんに、DIMENSIONに参加している元スクエアの則竹裕之さん、スクエアの坂東さん、「オールスターズ」の川口千里さんです。川口さんのことはメディア等で聞いていましたが、ライブの演奏を聴くのは初めてで、あの若さ(と小柄な体)でパワフルかつ、唯一無二の独創性を感じさせる演奏は、すごいの一言しかありません。他の三人ももちろん「第一人者」であり、たいへんなプレーヤーなのですが、そこに堂々と渡り合う姿は、言葉でうまく説明できませんが「この人、すごいなあ」としか言えないわけです。とても小柄な女性ですが、どこにパワーが隠されているんだろう、という感じでした。
 私の席は端っこだったので則竹さんはほとんど見えず、また小柄な川口さんもあまり見えなかったわけですが、大きなスクリーンがとても役に立ちました。ついでに言えば隣のオ〇チャンが高い位置で拍手をするから私の視線の邪魔になってしまい、スクリーン越しに観る格好になってしまったというのもあるのですが・・・。かなりぎゅうぎゅうになった「密」な状況のライブなので、周囲の邪魔にならないように、とは思いますが、私も誰かの邪魔をしていたら申し訳ないので、あまりどうこう言えません。
 次はDIMENSIONの登場です。現在の二名+サポートの体制になってからは初めてというくらい、ライブで観るのは「お久しぶり」です。勝田一樹さん(sax)、増崎孝司さん(ギター)のユニットは、もともとレコード会社ビーイングのインスト部門、という位置づけと捉えていたのですが、長年ライブも続けており、CDも出し続けています。ご本人たちは「両巨頭(カシオペアとスクエア)に挟まれた中間管理職」と言っていましたが、この日のライブで個人的に大きな収穫だったのが久しぶりのDIMENSIONでした。音もお洒落ですし、流れるような演奏あり、キーボードやベースのソロも素晴らしく、ということで、密度の濃い演奏をしばし楽しみました。見つけやすかったり、大きく輝いていたりする星座の間で、渋く輝いている星座、という感がいたしまして、またこの二人の演奏をライブで聴きたくなりました。
 そしてこの二人がステージに残ります。増崎さんが「ASAYAKE」や「TRUTH」を弾いているうちに、ソロでスクエア初期の名曲「TOMORROW'S AFFAIR」を演奏します。素敵なバラードで鳥肌ものです。ここでスクエアのメンバーも合流して「MEGALITH」を演奏しました。サックスに伊東たけし、本田雅人、勝田一樹という、フュージョン界の三巨頭と申しますか、何とも夢のような豪華な組み合わせです。伊東さんが6月のライブで「勝田と本田の三人でバトルとかやるのかなあ」と言っていたのがこれでした。DIMENSIONのお二人はここまでとなり、スクエアのステージは先月と同じくギターは外園一馬さん、キーボードは松本圭司さん、ベースは田中晋吾さんでした。今年のアルバム「幸せの風」からの演奏が中心です。アップテンポの曲が続いた中で「海の見える坂道で」が気持ちを落ち着かせてくれるようないいスパイスになっていました。ラストは「FLY FLY FLY」、そして「TRUTH」ということで、当然拳を振り上げて、となりました。ウインドシンセですが伊東さんは相変わらずewiで、本田さんはNuRadでの演奏でした。本田さんの「伊東さんがewiのままに二万カノッサ」というのは本当でしたね。
 スクエアの管楽器二人が残る形でブルーノート東京オールスターズの登場です。最初はブラスアレンジされた「宝島」と「OMENS OF LOVE」の二曲でした。いずれも故和泉宏隆さんの代表曲にして、吹奏楽アレンジでも有名な曲ですが、当然凄腕のプロぞろいのビッグバンドの演奏となれば、アマチュアの吹奏楽とは全く違いまして、一流どころの料理人が揚げた天ぷらを食しているようなものでございます。
 ここからはブルーノート東京オールスターズの演奏が続きます。本田雅人さんもメンバーの一人なので残ります。私の母が進駐軍の持ち込んだビッグバンドを聴いて育った世代で、私もJAZZとの出会いはビッグバンドで、高校生の頃はよくビッグバンドジャズはよく聴いていました。「オールスターズ」ですが、様々な年代、男女を問わず在籍していて、スクエアの本田さんもメンバーではありますが、ベテランの管楽器奏者の小池修さんや、トランペットの山崎千裕さんといった既に名前を知っている方から、若手の演奏者に至るまで、みなさん(当たり前ですが)鉄壁のアンサンブルと高い技術で、日本のビッグバンドも世界に自慢できる、と思いました。亡母に聴かせてあげたかったな。
 この日はチック・コリア、スティービー・ワンダー、ジャコ・パストリアス、ステップス・アヘッドら、まさにクロスオーバー、フュージョンと言える人たちの曲を中心に演奏していました。サックスの渡辺瑠奈さん、現役の音大生とのことですが非常にテクニックのある印象的なソロで、そういえば本田雅人さんも音大生時代に既に「原信夫とシャープス&フラッツ」に参加したことを思い出しました。これからが大いに楽しみな才能と出会うことができて、とても幸せな気分になります。また、ステップ・アヘッドの「ベイルート」という曲で小池修さんがewiを演奏されていたのも印象的でした。スクエア以外の方がewiを演奏されるのも珍しいですからね。ステップ・アヘッド、CD持っていたなあ・・・。
 アンコールは「バードランド」でした。この日演奏したミュージシャンの多くも参加して大団円です。トロンボーンの中川英二郎さんも飛び入りで参加です。リーダーのエリック・ミヤシロさんは誕生日を迎えたばかりだったそうで、ステージ上で祝福されていましたね。
外園一馬さんのツイッターによれば、急遽参加が決まったアンコールだったそうですが、DIMENSIONの増崎さんと共演できた喜びをつぶやいていました。ミュージシャン同士のつながりや驚きもSNSに上がっており、本田雅人さんはかつてカシオペアのファンだったということで、昔聴いたあの音のまま、と喜びを隠せない様子が伝わってきますし、前述の渡辺瑠奈さんも大先輩たちとのショットをアップして喜びと感激の気持ちを表しています。
 ということで、演奏する側も、もちろん客席の私たちも大感激のライブでした。4時間のライブでしたので途中で「中だるみ」にならないか心配でしたがそんなことはなく、あっというまでしたし、すべてメインディッシュというか、中華の満漢全席というか、どの演者も素晴らしくてお腹いっぱい、となりまして、自分が見たライブでもかなり印象に残るものでした。来年以降も機会があればぜひ、というイベントですし、私も万難排して見に行きたいです。生きながらブルースに葬られ、というのがありましたが、この日ばかりは「生きながらフュージョンに葬られ」な一夜でした。演者の皆様、ありがとうございました。それから、ブルーノート東京様、頻繁にはお世話になっておりませんので偉そうなことは言えませんが、これからも素敵なライブが見られることを期待しています。


こんなお洒落なパスケースも売っていました。ちなみにタイトル画像はTシャツのバック部分です。

 



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南の島の小さな鉄道にようこそ

2023年07月14日 | 鉄道・鉄道模型
 毎日暑いですね。いつのまにか真夏というか、ジメジメした暑さなので体もまいっています。この暑さ、世界的な熱波らしく、心配なところです。せめて気分だけでもさわやかな南の島に、ということで以前ご紹介した車輌もも含めて、Nゲージの加工や塗り替えによる南の島の架空の鉄道を走る車輌をご紹介します。
 太平洋上の小さな島、ここはセントなんちゃらという正式な国号もあるのですが、みんな愛称である「FRUITS ISLAND」と呼んでいます。日本ともアメリカとも友好的な国ではありますが、さきの大戦でもちょうど地理的に「重要ではない」とみなされたのか、戦火にさらされることもなく今に至っています。農漁業、そして観光が主な産業だそうです。
 そんな島の唯一の港と首都(といっても小さな島ですから大きな町は首都しかない)、さらに島で唯一の空港を結ぶ鉄道が「FRUITS ISLAND RAILROAD」です。

 この鉄道の一番大きな機関車がこちらのRS-3です。中古でKATOのRS-3を見かけました。箱からするとかなり古い感じがしました。ユニオンパシフィックの鮮やかな黄色い塗装でしたが、走りもまずまずでしたし、何より価格も新品を買って塗り替えるよりお得でしたので即決で買いました。

 塗装はこの鉄道のイメージカラーであるガイアノーツのエメラルドグリーンとMr.カラーのサファリオレンジに塗り替えました。車体を動力から外し、窓ガラスやハンドルなども外した後に白の1000番のサーフェーサーを吹き、そのあとでオレンジ、エメラルドグリーンを吹きました。先に白のサーフェーサーを吹くことでオレンジの発色をよくしています。「FRUITS ISLAND」の文字は自作デカールによります。
 以前もご紹介しましたが、島の石油会社「ISLAND OIL」所有のタンク車による輸送この機関車がよく使われているそうです。

 今度は小さな有蓋貨車を牽引しています。


 よく見るとお分かりかと思いますが、これらは日本型の二軸貨車たちです。結構昔にプリントゴッコを使ったデカールを試したくて作ったものもあります。
「ISLAND FRUITS 」、「Penguin's Beer」、「LEONE BANK」がそうです。ペンギンや獅子のイラストはヴェネツィア生まれ、在住の私の友人である活版工房のご主人の版から印刷したものを縮小コピーし、さらにプリントゴッコに製版したものです。「Islet coffee」のイラスト部分は手描きです。コーヒー豆に見えるかな?果物やビール、コーヒーなど、農産物や関連する製品を積み、港に、空港に向かうのでしょうか。銀行の貨車は現金輸送車なのでしょうか。一応、現金輸送車を連結する際はカブース(車掌車)も最後尾に連結するようです。

こちらの機関車だけは他の島から譲り受けた経緯などもあって、前の所属への敬意からか色は塗りなおしていません。もっとも、この塗装が似合うから、ということも理由としてはありそうです。昔懐かしい香港製のCタイプディーゼルですが、後年、再販されたものを使用しています。たしかこちらも随分前にJAMの会場で購入したような・・・。

ノスタルジック鉄道コレクションのご紹介の時にも出てきた二軸ディーゼル機関車とカブースです。カブースの方はジャンク品で、おそらくアリイが出していたアメリカ型の製品ではないかと思われます。もともと窓ガラスなどもないようですので、GMキットの残りから窓セルを切り出して貼り付けました。こちらもサーフェーサー吹き→オレンジ、エメラルドグリーンに塗装しています。
貨車もけん引しています。

機関車はいずれもややオーバーなウェザリングを施し、ちょっとくたびれた感じを出してみました。ところでこの鉄道、貨物輸送がメインのようですが、その昔はSLがオープンデッキの小さな客車を牽いていたようですし、車庫の中にバッド社のRDCの影響を受けたようなディーゼルカーがいるようです。今回はそこまでご紹介できませんでしたが、またこの小さな島の話、続きができたらなと思います。
 暑い日が続きますが、皆様もご自愛ください。







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さよなら、中野サンプラザ

2023年07月03日 | 日記
 中野駅前のランドマーク的存在だった中野サンプラザが、7月2日付で閉館となりました。2日は山下達郎さんのライブで締めくくったそうで、その後閉館のセレモニーなどもあって、サンプラザ中野くんが登場したと報道にありました。
 サンプラザについては、物心ついた時分にオープンした建物でしたし、子供の頃は中野ブロードウェイの明屋(はるや)書店やおもちゃのポニーなどにお世話になっていたので、近くにあったサンプラザは小さな私にとって自ずと見上げる存在でした。駅前の風景として私が子供の頃から50歳を過ぎた今に至るまでずっとあり続けていた、とも言えます。インパクトのある三角形のフォルムは決して新宿の高層ピルほど高くないのに存在感抜群で、当たり前のようにそこにあったものがなくなってしまう、というのはやはり寂しいものを感じます。

(写真は6月に撮影)
 サンプラザというと、大人になってからはコンサート等でお世話になりました。ホールの入口前に並んでいる人たちを見ながら、今日は誰が出るのかな、などと気になったこともありました。1994年のことだったか、セルジオ・メンデスの来日公演を観に行ったことがあります。パワフルな女性ボーカルや観客を楽しませよう、というパフォーマンスが随所に見られ、楽しいステージだったことを覚えています。
 私の大好きなT-SQUARE(スクエア)もツアーでよくサンプラザ公演を行っています。一番遡れる記憶では1996年の「B.C~A.D」のツアーの時で、ベースの須藤さんだったかが「難しすぎて本当は演奏できないんだろうと思っている人に、ちゃんと生で演奏できるところを見せます」と言って本田さんの「難曲」である「Ciao!」を演奏したのが印象に残っています。スクエアのライブでは2010年代に印象に残っているものが多く、2015年だったかはライブの後、その足で東京駅に向かって東北新幹線に乗り込んで青森に行ったこともありました(翌日の三沢基地航空祭が目当てだったのです)。また、基本は場内の撮影が禁止のところを、2017年のように特別に観客に撮影の許可が出て撮影したものもあります。


(2017年のライブより)
 サンプラザは大きな会場としての良さがあり、他の都市の会場(例えばZEPP名古屋など)はそれほど大きくないことから、サンプラザとは別の一体感のようなものが感じられます。また、サンプラザの場合はちょっと早く着きすぎたとしてもブロードウェイを覗いたり、近くに大きな書店などもあって、時間をつぶす場所にも苦労しません。
 演奏する側のメンバーも思い出が多いそうで、当時のキーボード、河野啓三さんは「中学生のときにシャカタクのライブをサンプラザで見た」と言っていましたし、安藤正容さん、伊東たけしさんについては「ユーミンのツアーのバックをやっていたときに、サンプラザでもコンサートがあって、ユーミンが象(!)に乗って出てくる演出があって、あれには驚いた」と語っていました。初期のスクエアは歌もののバックバンドを担当していたこともあり、松任谷由実さんの「マジカル・パンプキンツアー」に参加した時のひとこまだったようです。象というのは小象だったようですが、それでもステージに象、というのはインパクトありますね。
 コンサートホールのイメージが強いサンプラザなのですが、何年か前に仕事であの建物の中にある研修室にお邪魔したことがあります。あの建物の中にそういう施設がある、というのが少々意外で、本当にあのサンプラザなの?と招待のメールを何度も確かめたものです。
 50年間、中野のシンボルだったサンプラザですが、老朽化と隣接する区役所などの移転等も含めた再開発で解体となります。作っちゃ壊しが東京の都市計画にはつきもので、特に自然災害や戦争などの影響も受けやすいことから、同じ建物がずっと残るのが難しい街ではあるのですが、なんでも更地にして高層ビル立てて、どこでも見かけるようなテナントが入って、という今日の再開発の在り方も決して好きとはいえません。海外(特に欧州)の古い街並みを見ると、東京の再開発もなんとかならないかなあと思ってしまいます。サンプラザという名前を残しつつ、跡地には大きなホールも入った高層ビルも作られるということでしたが、せめてそのホールが個性豊かな街、中野を象徴するものとなるよう願っています。



(2018年のスクエアのツアーTシャツより。各会場のイラストが描かれており、下段のEとRの文字のあたりにサンプラザがあります)



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T-SQUARE アルバムリリースライブに行ってきました

2023年07月03日 | ときどき音楽
 6月のことになりますが、T-SQUAREのニューアルバムリリース記念ライブがブルーノート東京で開催されたので、私も観てきました。なお、私は初日を現地で、二日目を配信で楽しみました。アルバムの感想とともに、ライブのことなども触れてまいります。

 デビュー45周年の節目の年のアルバムということで、メンバーも歴代の方々はもちろん、ゲストに渡辺香津美さんや鳥山雄司さん、TOKUさんや山崎千裕さんらも参加した豪華なものとなっていますが、ライブでは私が観に行った初日は伊東たけし(sax,ewi)、坂東慧(ds)、宮崎隆睦(sax,NuRad)、松本圭司(key)、田中晋吾(b)、外園一馬(g)という陣容で、二日目の管楽器が宮崎さんから本田雅人さんに替わっていました。
 ブルーノート東京周辺の道は、いつもなかなかお目にかかれない自動車を見かけます。この日もマイバッハのリムジンとか、ロールスロイスが作ったSUVを見ました。


(美味しいカクテルで乾杯)
 ライブの話に戻しますが、オープニングは今回のアルバムタイトル曲「VENTO DE FELICIDADE しあわせの風」といい、ブラジルっぽい感じのメロディの坂東さんの曲です。サビのところでコーラスが入るのが特徴です。たしかに口ずさみたくメロディなんです。これって。二日目は本田さんがフリューゲルホーンで演奏されていました。
 2曲目の「かぼちゃの馬車に乗って」もライブで聴くと(当然ですが)音に力があって、良かったです。3曲目の「Stratosphere」は松本さんの曲。アルバムでは8曲目です。個人的にはこういう曲好きなんです。最近のスクエアの曲ではありそうで無い感じで、キーボードが疾走感を際立たせています。最初の比較的静かなスタートとは裏腹に大きく盛り上がってエンディングとなります。
 そのあとは故・和泉宏隆さんの音源を元に、鳥山雄司さんがアレンジされた「Rooms with a view」です。この曲が流れると涙があふれてくるのはなぜだろう。鳥山さんの手がかなり加わっているとはいえ、作曲していると和泉君が降りてくる、とインタビューで答えていたくらいですから「今回のアルバムのために、和泉が書いてくれました」と伊東さんがMCで紹介してももおかしくないくらい「スクエアの曲」になっています。アルバムではラストに入っています。和泉さんと鳥山さん、さらに神保彰さんは高校生の頃からの友人、音楽仲間であり、鳥山さんの方が学年が1つ下らしいのですが、和泉さんが生前「鳥山君は後輩なんだけど最初に会った時からタメ口だった」と言っていたのを思い出します。
 次は「海の見える坂道で」。こちらもCDよりライブの方が断然いいな、という印象を持ちました。曲にとんがったりしたところが無い分、ライブできちんと聴こう、という気になりました。
 初日はここから宮崎さん、松本さん時代(99-2000年)の曲をということで「Dali's Boogie」、「A dream in a daydream」を演奏していました。特に前者なんて1999年の「Sweet and Gentle」のツアー以来じゃないかというくらい、久々に聴きました。「このお二人がいたときの曲を」と紹介されたMCの坂東さんに、このバンドへの深い愛情を感じました。
 二日目は本田さん作曲の二曲「Marverick Moon」、「Believe」という二曲になりました。本田さん曰く、タイトルに「Moon」がつく曲は難曲とご本人が認めるくらい(BAD MOONが有名ですよね)、Maverick Moonも「難しい曲」でした。でもこういう曲があると「本田さんのスクエア」らしいんですけどね。「Believe」は別の意味で本田さんらしいバラードで、こちらも自分の中ではヘビーローテーションになっています。このサックスのプレイは伊東さんでも宮崎さんでもなく、本田さんがしっくりくるという感じです。
 いよいよライブも最終コーナーへ、ということで河野さんの二曲が続きました。「CLIMAX」はプレステでおなじみグランツーリズモの実写映画版で日本語版の主題曲になっているとか。つづく「Into The Spotlight」とともに疾走感あふれる曲で、私のお気に入りです。
 アンコールは「FLY FLY FLY」でした。このところプレイされることが多い曲です。こういうライブだとお客さんもある程度耳と目が肥えている人たちばかりだから、いつもの「TRUTH」でもないでしょ、というところでしょう。ただ、この曲、各パートで聴かせどころもあるので盛り上がります。何と言ってもウキウキしてくるようなメロディが、こういうところには合うように感じます。二日目の配信を観ていたら宮崎さんも入って三代の管楽器奏者そろい踏みでしたね。
 CDとライブの印象をまとめて書いてまいりました。ライブではギターの外園さんが良く見える位置に座っておりまして、以前「魅せるギター」と書きましたが、芸もさることながら華も感じさせるギタリスト、という印象を持ちました。安藤正容さんについては、学生時代の音楽仲間で、後に「モデルワーゲン」という模型メーカーを興した森川幸一さんが「安藤君は芸はあるけど、華の方は横にいる人(伊東さんのこと)が持って行ってしまうから・・・」と評していましたが、スクエアがこういう形で存続していく中で、ギタリストの役割もまた、少しずつ変わって行くようです。
 また、ライブではちょっと遠くて見られなかった松本さんの演奏も、配信ではよく見えました。映像も素敵で、サントリー白州の缶ハイボールを飲みながら見ておりました。
 ということで拙い文章ではありますが、スクエアの「レコ発ライブ」でした。45周年を記念したライブもありますし、その前にちょっと大きなライブも予定されています。今年は5年に一度の「特別な一年」を楽しみたいです。
 
 追伸 スクエアもライブで演奏し、私も何度も足を運んだ中野サンプラザが7月2日で幕を閉じたそうです。次回はこの話をしたいと思います。

 

 


 

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