工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

鉄道150年を読む 国鉄の歴史を読む

2022年11月30日 | 鉄道・鉄道模型
 鉄道150年を語る際に当然避けて通れないのが、日本国有鉄道=国鉄の存在です。国有鉄道という意味では明治からの長い歴史がありますが、公共企業体としての「国鉄」は38年間の歴史ということで、そろそろ民営化されてからの期間の方が長くなります。そんな中、国鉄の歴史について書かれた本が出版されております。中公新書の「国鉄 -「日本最大の企業」の栄光と崩壊」 石井幸孝著です。
 本書の著者は昭和30年に国鉄に入社、戦後を代表するディーゼル車輌の設計に携わっていましたが、後に国鉄の経営全般に従事、国鉄の最後の日は九州総局で迎え、民営化と共に初代のJR九州社長となっています。キャンブックスのDD51物語など、鉄道趣味人としての目線で内燃車輛について解説した本も多く執筆されていますが、こちらの本は「硬派」な国鉄の通史となります。
 本書は戦後の占領期に「公共企業体」として発足した国鉄についてその誕生までも含めて書かれており、各章では主に経営目線で国鉄の歴史が語られていますが「鉄道技術屋魂」では著者の「本職」であった内燃車輛の開発について触れられています。また、国鉄の光と影の部分で必ず語られる労働組合についても章を割いています。国鉄における労働組合の存在は何だったのか、というのを国鉄の「中の人」が解説していますので、民営化からだいぶ時間が経つ中で改めて勉強になったという感があります。
 本書を読みますと、国鉄が本当に順調だったと言える期間というのはわずかで、発足から労働問題を内包していたり、昭和30年代までは何年かに一度は起きる大事故への対処といったことも求められたりしました。また、大都市圏・特に首都圏では通勤ラッシュ対策は「終わらない課題」でありましたし、赤字ローカル線は最後まで(というか現在まで)国鉄を苦しめました。
 私も物心ついたときから国鉄=赤字の企業体で何とかしなくてはならない存在でしたから、民営化でJRに生まれ変わったときは、なにかとても明るくなったというか、これでよかった、と思った一人ではあります。本書を読みますと、占領政策の中で半ば強引に「公共企業体」として出発しなければならなかったところから、後の国鉄の問題点が内包されているように感じますし、本社がすべてを握っていたことで、路線も、車輌の近代化も、設備も含めて全国一律に発達したことは必要なことであり、またそれによって多くの方が恩恵を受けたわけですが、それ故に地方・地域のの自主性が育まれなかったのではないかと感じました。既に昭和40年代から赤字が顕在化していたわけですから、大都市間の長距離輸送はともかく、各地域内で解決できることはある程度の自立した経営をすべきだったのでは、と思うのですが、どうでしょうか。
 知ったふりをして私も偉そうなことを言っていますが、著者の「鉄道というものは万人が知っているようで、実は経営から現場のカンまで本当によくその本質を心得ている人が少なく、わかりにくいもの」という述懐が印象に残りました。これは国鉄部内向けに向けられた言葉なのですが、それだけでなく私たち利用者も、それから政治家もああだこうだと口をはさんでくるけど、実はわかってないでしょ、何か変えたくても、新しいことをしたくても、これだけ大変だよ、という意味にも聞こえました。それ故に国鉄時代にもっと説明という名の「言い訳」を国民にしても良かったのではないかとも思いました。そういった言い訳の中に、第三者の指摘から改善できることが見つかったり、構造的な矛盾が明らかになったりすることもあると思うのですが・・・。これはいろいろな組織全体に言えることで、メディアにばかり取り上げられる一面以外に、これだけコストをかけてやっていることがある、こういう決まりごとがあるから、こういう手順と人とお金がかかる、というようなことをもっと言ったらいいのに、と本業に絡めて思ってしまうのでした。
 さて、国鉄が民営化された際には、多くの国鉄マンが国鉄を去り、官庁・企業に再就職しました。ちょうど景気も良かったので、引く手あまただったのです。当時20代の方だったとしても、多くが還暦を迎えていると思います。個人的な思い出になりますが、私が仕事で知り合った方にも元国鉄マンがいて、とても優秀な方だったことを覚えています。電卓よりそろばんを愛用しているあたりに、国鉄マンの名残を感じました。優秀な職員を多く抱えながら、どうして破綻してしまったのか、何ともやりきれないところです。
 本書では国鉄の歴史だけでなく、JR化以降の動きについても触れられていますし、鉄道のこれからについても論じています。想定以上に人口減少や過疎化も進んでおり、地方路線をどのように活用するのかというところは、これからの大きな課題となりましょう。個人的な見解になりますが、人口減少については平成初期の時点で合計特殊出生率の「1.57ショック」という言葉で表されたように、既に問題となっていたわけですから、鉄道の責任ではなく、この間に有効な対策を打てず、無駄な金をばらまくことで少子化対策を「やったことにした」側に責任があるのだと思います。゜
 ちょっと横に逸れてしまいましたが、本書に戻りますと新幹線についても貨物輸送としての活用方法について具体的に触れています。現在でも通常の旅客輸送を「間借り」する形で貨物を運ぶことが行われていますが、著者が提唱しているように新幹線路線において本格的な貨物輸送というのも真剣に考慮されても良いのではと思います。また、これに合わせて著者は鉄道が持つ「安全保障」としての役割を説いています。なにもこれは軍事的な話ではなく、日本国内を結び、つなげる役割という意味でもあり、物流、人の流れを担保するものとして鉄道の役割が大切なのは言うまでもありません。近年は自然災害で鉄道が長期間不通となり、貨物輸送にも影響が出るといった話を聞きます。新幹線を作ったから在来線は地元三セクに丸投げしておしまい、というのではなく、活用しなければいけない、万が一のときには他の路線を補完する役割を持たせる、といった目的で、活用すべき在来線は活用し、保守を絶やさないことも必要だと思うのです。古代ローマは西洋では初めて、規格化された本格的な街道網を整備したことで知られていますが、よく言われる軍事目的というだけでなく、人の流れ、物の流れも活発にして、帝国全体に繁栄をもたらすためのものでもありました。インフラもまた人々の安全を守るために必要な存在であるわけで、それは現代においても全く変わるものではないでしょう。
 ということで、新書とはいえなかなか考えさせる一冊、まだお読みでない方はぜひお読みいただき、これまでの、そしてこれからの鉄道に思いをめぐらせてみてはどうでしょうか。





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鉄道150年を読む 車輌の発達史を知る

2022年11月23日 | 鉄道・鉄道模型
 日本の鉄道開業150年ということで、これに因んだ書籍も数多く出ています。あれやこれやとすべて買うことはできませんので、雑誌からひとつご紹介です。既に「鉄道ピクトリアル」の1000号が鉄道150年と東海道線を特集として組んでいて、拙ブログでもご紹介していますが、10月14日の開業記念日に合わせるように各雑誌も特集を組んできました。いささかどころかだいぶ旧聞に属する話で、既に皆様もご覧になっているとは思いますが「鉄道ファン」は8月発売の10月号で「日本の鉄道車輛150年」という特集を組んでいます。同誌ではおなじみ、フリーランスプロダクツの手により、日本の鉄道車輛の発達史を蒸気機関車、ディーゼル機関車、電気機関車、客車、貨車、電車、新幹線、気動車、設備などに分け、さらにそれを時代区分に沿って解説しています。私も鉄道趣味人のはしくれではありますので、既に知っている事項もあるわけですが、それでも通史として改めて知ることができたように感じますし、著者が1986年以降の「システム変革期」として解説している事項については最近の話題もあって、自分の知識として抜け落ちているところもありますので、勉強させていただいたという感があります。
 蒸気機関車については保存運転として一部を残すのみで、架線(第三軌条もふくむ)から電気を取る車輌、内燃車輛が現在の鉄道の主役であり、そこに磁気浮上などの鉄道が一部ではありますが走っているということになりましょう。リニアモーターを動力とする鉄道がどれくらい発達するかは現時点では未知数で、日本ではしばらく電車と気動車の時代が続くのではないかと思います。電車にしてもポールから電気を取っていた時代とは集電方法、駆動方法も含めて大きな変化と進化を遂げています。また、内燃車輛についても特に近年にはハイブリッド車輌が増えています。これからの50年と言わず、10年後、20年後にはまだ技術変革があるのではないかと思います。
 今回の鉄道ファン誌の特集を見ますと、言うまでもありませんが昭和30年代に電化、動力近代化が進んだことが日本の鉄道のスピードアップ、大量輸送に寄与したのではないかと思いました。戦後の混乱期を脱し、それまでの車輌開発で技術的蓄積を作り、生産基盤などが整い、さらに当時の技術革新の流れに上手く乗れたことが飛躍につながったのでしょう。今回の特集では電車を除くと旧国鉄、JRの車輌の発達について主に取り上げていますが、その電車の発達においては特に日本独特の数多くの私鉄の存在も忘れてはならないでしょう。特に都市部の私鉄路線は国鉄路線を補完するだけでなく、時にライバルとなる存在として発達していきました。鉄道全体のこれからがいろいろと語られている中で、私鉄についても厳しい現実はあるのですが、車輌の発達に今後も寄与してほしいと願っています。

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FFMって何?新しい護衛艦を見てきました

2022年11月13日 | 船だって好き
 船の科学館そばに近年完成した国際客船ターミナルで最新の護衛艦「もがみ」と「くまの」がこの週末公開されており、私も見てきました。なお、写真には12日に撮影したものと13日に撮影したものが含まれています。ご了承ください。

横浜港の公開でも写真をご紹介しましたが「もがみ」型はステルス性を考慮した構造をしており、在来の艦と異なり凹凸や突起物を極力減らした形をしています。
全体形を見てみましょう。客船ターミナル側から撮った写真です。

固定武装は127mm砲が一門と、これは標準的なものです。

甲板上の構造物はすべて箱状の構造で覆われています。

後部のヘリ用甲板。イージス艦等に見られた「オランダ坂」と呼ばれる傾斜もありません。

もはや「マスト」と呼べるものがありませんね。ホイップアンテナが散見されます。


では乗艦してみます。乗艦したのは13日の方で、公開開始の10:30には既に長蛇の列ができていました。乗艦まで2時間ほど待つことになり、午前のみ公開だった「くまの」には乗れませんでしたが「もがみ」には乗艦できました。
この開口部から乗艦します。ラッタルを上がって前甲板に出ました。前甲板のほとんどの面積が滑り止め塗装されていました。

主砲塔部

甲板から見た艦橋。

「くまの」が出航準備をしていました。

ラッタルを降りて後部甲板ら向かう通路を通ります。汎用護衛艦にカバーをかけたような構造となっていて、魚雷発射管も格納されています。
後部甲板、意外に広く感じられました。全幅も広い感じがします。ヘリコプターの運用もできます。

大きさを比較すると「はつゆき」型より少し大きく「むらさめ」型より一回り小さい感じです。久々に登場した「フリゲート艦」という艦種の「FF」という種別がつきますが、そのつぎの「M」というのは掃海任務の一部を行うというのと、多用途(Multi Purpose)のMという意味が込められているそうです。ただし、FRPなどで作られた掃海艇と異なり金属製の艦のため、掃海艇の任務を完全に取って代わることはできず、掃海任務は必要に応じて無人の掃海処分具などで対処するということでした。省人、省力化のために工夫された艦艇でもあり、乗組員の数も「はつゆき」の半分の90-100名程度と言われています。艦番号もこれまでの三桁ではなく、FFM-1としているのも、この艦の違いを際立たせています。
岸壁で待っている方も多いので早々に艦を下りました。岸壁にはこんなミニチュアがいました。隊員が中に入って動かしていました。

イージス艦のヘリ甲板も再現されています。かなり凝っています。

ヘリ甲板には本物と同じ滑り止め塗料が使われているとか。

こちらは一足先に公開が終わった「くまの」です。


さて、列を作って待っている間に中国語の話し声が聞こえてきました。言葉の様子から大陸の方のようです。見学については国籍等は問わないので誰でもウェルカムなわけですが、もし中国の軍港で「もがみ」型と似た「江凱」型のフリゲート艦が公開されているとして、我々日本人が気軽にアクセスできるのかと思いました。両国が緊張関係にある中で、自衛隊・日本政府が寛大なのか、これくらい見られても平気ですよ、という意思の表れなのか、ちょっと気にしつつ埠頭を後にゆりかもめに乗り込みました。






 

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こちらも3年ぶりに・・・

2022年11月12日 | 飛行機・飛行機の模型
 横浜港に行った話を先に書きましたので前後しますが、10月下旬に飛行機プラモデルの一大展示会である「大激作展」に行ってきました。F1ではありませんがこちらも3年ぶりの開催ということで、3年分の思いの詰まった展示となりました。
 各サークルがテーマを決めて出展していますので、それに沿った展示を観るのも楽しいところです。もちろん、テーマに依らず作ったものも展示してあります。
「ほらぶろわーず」はメインテーマを「小国の翼」としています。翼章を見て分かりますか。ハンガリーやルーマニアのスツーカです。


こちらはポーランドのMig21

私もグレー色迷彩のMig21、1/144で作ったことがあります。銀色と違ってまた魅力があります。西側でもF104は特に後年にさまざまな迷彩色に彩られていました。ポーランドの翼章というとこの赤白の模様ですが、スキージャンプのポーランドの選手たちも同じものをヘルメットに描いているのを見たことがあります。
サブテーマの「日本の空を飛んだ機体」から

1/144で揃えた大日本航空のDC-3です。以前私がブログで紹介した「なんちゃって」大日航と違い、こちらは実際の登録記号に沿って作られています。すっきりとした仕上がりがいいですね。

架空の塗装を楽しめるのも模型ならでは。航空自衛隊飛行点検隊仕様のホンダジェット。

実際に同隊はビジネス機を使用していますので、この塗装も似合っています。
「ストール」のテーマは「多発機」ということで、こんな大きな作品も。

1/144のA380・全日空仕様です。このスケールとはいえ巨人機ということもあり、おそらく50cmはあるのではと思います。デカールでウミガメが上手に再現されています。

古いキットも丁寧に作ればこういう仕上がりになります。「ストール」の展示からF2Hバンシーです(旧ホーク製)。

初版は1949年だそうで、大変歴史のあるキットです。
もう一つ歴史あるキットから。旧マルサンのF86Dです。私も10代の頃、作りました。

これ以外にも多くの美しい作例を「浴びるほど」見てきました。このところちょっと飛行機から遠ざかっており、そろそろ仕掛中のものを完成させてあげたいところです。





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文化の日だけど横浜港へ つづき

2022年11月06日 | 船だって好き
 横浜港での艦艇公開、外から眺めただけですが、これらの船もご紹介です。

大さん橋には「いずも」と客船の「飛鳥Ⅱ」が並んでいました。「いずも」の威容です。近寄って見ることもできました。

甲板上には艦載ヘリも見えます。

新港(ハンマーヘッド)には護衛艦「しらぬい」と潜水艦「たいげい」が展示されていました。新鋭艦ということもあって私が行った昼過ぎには整理券の配布も終了していました。

「しらぬい」は以前拙ブログで紹介した「あきづき」の発展型にあたります。

潜水艦、間近で見たのは初めてでした。大きいですね。

「いずも」と大さん橋を分け合っていた「飛鳥Ⅱ」。こちらも今どきのクルーズ船ですので大きいです。

横浜港ということでこちらも。「氷川丸」です。見学もしてきました。


護衛艦の見学記念に「御朱印」ならぬ「護守印」をいただきました。赤レンガパークではフリートウィークに因んだイベントも行われていて、集めた「護守印」に合わせて抽選会も行われていました。効率よく見学して何枚も手にしている人も見かけました。私は2艦分ということで、ガラポンを2回回したところ、こちらのクリアファイルをいただきました。70周年グッズが欲しかったところなので、いい記念になりました。

(右側に艦艇の護守印)
私が行けなかった入間基地の方は2万7千人の幸運なファンがフライトを楽しんだと伝えられています。確かに通常の年の五分の一、六分の一くらいの人数ですね。フライトチェックの新鋭機とか、配備が進むC-2などもぜひ見てみたいです。
文化の日、基地の中で身動きがとれない入間と違ってたくさん歩きました。艦艇公開は東京港でも予定されているそうです。








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