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ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子のブログ。
お金に関する情報や日頃感じたことを発信していきます。

日本コムジェストとセゾン投信の共同セミナー報告(その3)

2014-05-07 16:02:46 | 直販投信

最後に、トークセッションの内容を抜粋してリポートします。

(中野さん)達人ファンドの4分の1をアルノーさんが運用している。そして、一度も解約をしたことはない。

 (アルノーさん)優良な企業に長期的に投資することを考えたほうがよい。株式市場は素晴らしい会社だと認めるのに時間がかかる。皆さんがセゾン資産形成の達人ファンドにお金を出すと、(コムジェストの投信を通じて)投資先の企業に投資をし、そのリターン・配当がファンドのゾン資産形成の達人ファンドパフォーマンスに跳ね返ってくると思ってください。

一例として、1919年に上場したコカ・コーラは利益成長は10.5%だが、株価は4000倍になっている。この利益と株価の差は複利効果。配当を再投資していくので、長期的に資産が拡大していく。いい企業はあるが、知られていない会社も多い。我々はいい企業に投資していきたいし、そのパフォーマンスをセゾン資産形成の達人ファンドを通して還元していきたい。

(中野)リサーチはどうしているのか?

(アルノー) アナリストは現場に行くこと、現場を理解することが大事。四半期ごとに投資先の企業とMTGを行うだけでなく、その会社の顧客や競争相手などもリサーチしている。グローバル企業が多いので、アジアや南米の工場まで出かけていくこともある。

(中野)会社の価値・理念はどう引き続くのか?

(アルノー)長期投資ということは20年、30年と投資をしていくわけで、理念は継続しないといけない。コムジェストの第一世代(創業者2名)はすでに引退しており、我々第二世代が引き継いでいる。そして、第三世代についても、若いうちから運用理念を叩きこんでいる。また、そうできるできるように、運用チームも、シニア、中堅、若い層と幅広い年齢層でチームを組むようにしている。
 

<Q&A>
-売りのタイミングは?
(アルノーさん)知識と辛抱強さが必要。ビジネスについて理解する、その先に確信度。株価が割高か割安か。割高であれば、1年でも2年でも待てる。株価が30%下げても、ビジネス的に揺るぎがないと思ったら、投資し続ける。

―成長予想が外れたときの基準は?
(アルノーさん)四半期ごとにデータを確認し、5年先までの利益予想を立てる。そして、四半期ごとに成長力が落ちてきたら、ウエイトを0.5%引き下げる。利益予想以上に買われていたら、(一部)売却。全く利益成長が期待できない場合には売却を考える。

-社員の勤続年数が長いと以前きいたが、欧州の運用会社ではそれが普通なのか?
(アルノーさん)欧州でも金融機関は人の入れ替わりは激しい。離職や転職が少ないのは稀だと思う。従業員のほぼ全員が会社の株主になっているし、独立系運用会社とうこともあり、自分の会社という意識が強いこと、頑張ることで報われるという想いがあるのではないか。

以上です。 

*2010年の12月に、コムジェストのフランス本社を訪れたことがあります(プラス機関投資家さん向けのセミナーも参加させていただきました)。そのときに、アルノー・コッセラさんにもお話をうかがいましたが、投資先企業の選定ポイントや投資先企業の例などがほとんど同じ(笑)。ブレていないなあと感じました。


日本コムジェストとセゾン投信の共同セミナー報告(その2)

2014-05-07 15:20:51 | 直販投信

続いて、コムジェスト・グループ取締役兼副CIOでヨーロッパ株式戦略のポートフォリオマネージャー、アルノー・コッセラさんからお話がありました。

①コムジェストの会社概要と運用理念

・1985年設立、株式投資に特化した独立系運用ブティック。
・残高は150億ユーロ(約2兆円)
・設立以来、同じ運用哲学で運用してきた
・社員は40名弱。
・フランス本社のほか、ダブリン、香港、東京、シンガポール、デュッセルドルフに拠点。
・欧州株は25年、エマージング株は20年の運用実績がある
・運用手法はどのファンドも共通。少数の銘柄に厳選投資を行い、長期運用をする。

・欧州は日本と共通点がある。高齢化がすすみ、全体としての成長はむずかしい。しかし、企業をみると、成長力がある素晴らしい企業がある。そこに厳選投資を行う。欧州企業はそれぞれの分野でノウハウを持った企業がたくさんある。たとえば、エルメスやルイ・ヴィトン、プラダなど。

・多くの欧州企業は、国内の戦時ア的な市場規模が限られていることから、昔(18世紀)から海外展開を進めてきた。その結果、新興国へのビジネスに早いうちから展開している会社も(ハイネケンやダノン、アディダスなど)
・マクロ経済は予測しにくい。あくまでも「個別の企業がどんなビジネスをしているか」に注目している
・3年前のセミナーではユーロに投資して大丈夫かと質問された。2年経って、欧州株式は53%上昇している(円ベースでは94%)


②投資をする企業の選定ポイントとは

・企業の成長力をみている。具体的にはEPS(1株当たりの利益)がどれだけ伸びるか、そして、配当とキャッシュフローをみる

・ニッポンコムジェスト・ヨーロッパ・ファンドSAのポートフォリオ(組入れている企業)のEPSは(2014年は)年率10%(ユーロベース)伸びるとみている。株価の動きは短期的にはノイズ(感情などいろんな要因)に左右されるが、長期的には企業の利益にリンクして動く。14年前から投資してきた補正レンズメーカーEssilorなどがいい例だ。

・クオリティの高い、グローバル企業をどう見つけるか。共通しているのは「持続可能な売上成長があること」、そして、ユニークな商品やサービスを提供していて、価格支配力があり、利益を継続的に出していけること」。これがEPSの成長につながる。

・ただし、PERが高いときに買ってはだめで、株価が適正な水準になるまで辛抱強く待って投資を行う

・ここでいう成長企業は「メガトレンド」にのっていける企業。メガトレンドというのは、経済サイクルとは関係なく、持続的に拡大していくトレンドのこと。たとえば、
「生活様式の西欧化」→新興国の人たちの生活様式が西欧化し、使われるモノや食品、サービスなどを提供するブランドのある企業→ハイネケンやロレアル、プラダなど
「人口の高齢化」→長く生きたい(しかも小ぎれいに、健康)→補正レンズや薬品など
「デジタル化」→世の中でデジタル化が進むことで、未整理のデータを企業と消費者を結び付ける企業 などだ。

・「厳選投資」。1994年から2013年までの間、115銘柄がポートフォリオに組み入れられた(欧州6000社くらいある)。平均年6銘柄しか新たに加わっていない。

・成長力のある企業はめずらしい。(投資したら)いかに長期的に保有するか。長いものでは10年、20年と投資を続けている。たとえば、ロレアルは1991年から、SAPは1992年から投資している。
・株価は上昇していない。経済が低成長だから。個別の企業をピックアップすることが重要だと思う。企業の利益成長をとりにいく。ポートフォリオは(各社の)利益を足したもの。だから、リーマンショックの時でも(ファンドの基準価額は)あまり下がらなかった。その結果、市場平均と大きな差がついている(市場平均はあまり回復していない)

・いくつかポートフォリオ内の銘柄を紹介する

○インディテックス(スペイン)→ZARAを展開。ファストファッション。市場の反応をすぐに取り入れることができる(4週間で市場に商品を出すことができる)柔軟でユニークなビジネスモデル
○ロレアル/フランス→マーケティング戦略を積極的に展開。若い人から高齢者まで幅広い層に、商品を提供できている。健全性の高い財務体質。
○ノボノルディスク/デンマーク→インシュリンの世界的な市場シェア48%を占める、糖尿病治療の世界的な会社。中国をはじめ、これから糖尿病患者は増える見通し。
○リンツ/スイス→高級チョコレート。市場派拡大していないが、高級なものを少し食べたいという方向にマッチ。米国では年率10%の伸び
○ARM→携帯やスマートフォン向け半導体でシェア100近くを占める世界有数のチップ設計企業。