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陽だまりの彼女

2013年02月25日 16時29分35秒 | 小説

越谷 オサム氏の作品。

越谷氏は1971年東京生まれ、2004年第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作「ボーナス・トラック」でデビューされた。

本作品は、映画化されるといふことで奥田浩介役に潤君起用と聞き、読んでみた。

最初から中盤までは、単なる恋愛小説のやうであり、恋愛小説に興味がない自分としてはあまりのめり込みもなく、読み流してゐた。

しかし、真緒に何か秘密がありさうだ・・・・といふ中盤以降は少し興味を持つて読んだ。

終盤は・・・・

秘密が明らかになるのであるが、「秘密」と現在共存してゐる人にとつては涙が止まらなくなる終盤であらう。 

詳細を書くとネタバレになるのでこれ以上は書かない。

ただ、自分のところの「秘密」にもその時期が来るんだと思ふと、涙が止まらなくなつてしまふ・・・・
その「秘密」はいつものやうに一緒に食事をしたが

「秘密」が助けが必要なら私があなたの手になりませう 

と思ふ事がけふの夕食であつた

それを考へると

中盤までの「ただの恋愛小説」がものすごく意味のある内容に思へてくる。 

「人間の形をしてない人と一緒に暮らしてゐる」、つまりペツトを飼つてゐる人は必読と思ふ・・・
 
終盤の終盤
 
涙が止まらない
 
拙宅に「いかづち隊員」がゐる
 
いかづち隊員の毛並は、俗に言ふ「キジトラ」といふ雑種の毛並である
 
私は、ネコが大好きだがこの
 
「キジトラ」といふ毛並には格別の思ひ入れがある
 
3歳の頃に家にゐて、いつも一緒にゐてくれた存在が 「キジトラの毛並」だつたのである
 
その存在は父親の転勤による引越しで
 
ゐなくなつた
 
元々母親が「猫嫌い」であつたせいであらう、頭のいいその子はうち以外の「ウチ」を探してゐたやうだ
 
引越の前から、気配を見てゐたその「キジトラ」
3歳の自分には力などない、と見ぬいてゐた「キジトラ」
 
いつからか夜は別の所で過ごし、昼間に3歳のりゐべと遊ぶためだけにやつてきた「キジトラ」
 
すべてを見抜いてゐた「キジトラ」は
 
引越の日に来ることはなかつた。 自分も、「キジトラ」はその日に来ないだらうと予感してゐた。
 
でも、あの日、「キジトラ」が来るのではないか、来たら一緒に連れて行かふと心に決めてゐた
 
「キジトラ」は来なかつた。 どこかで見てゐたのかもしれないが、一生懸命探してゐる3歳のりゐべをどこかで見てゐたかもしれなかつた
 
「キジトラ」がどんな人生を過ごしたのか、わからない。無力な私は看取ることが出来なかつた。
 
しかし
 
自分の心にあるのは、「キジトラ」であり ネコの姿を見ると「キジトラ」が一番と思つてゐた
 
だから
 
今も「キジトラ」と一緒にゐる。 毛並に拘るなんて人間の勝手な欲望と思つてゐるけれど
「キジトラ」を求めずにゐられなかつた。
 
好きになつた人の面影を求めるのと一緒
 
でも
 
ネコ他の寿命は生物学的の「ヒト」より短い
 
自分は、だうすればいいのか?と思ふ
 
自分より先に逝つてしまふ存在・・・ 「陽だまりの彼女」はその覚悟を人間に求めてゐるのかも
 
普段何気なくやり過ごしてゐたけど
 
この小説を読んで、気にせずにゐられなくなり・・・ 「なんでおれを連れていかなかったんだよ」の台詞に共感した。


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