樋口 直哉氏の作品。
樋口氏は1981年生まれ、服部栄養専門学校を卒業された料理人、作家であります。
フランス料理の出張料理人として活躍され、2005年「さよならアメリカ」で第48回群像新人文学賞
を受賞しデビュー。同作で芥川賞候補となる。
著書に「月とアルマジロ」「大人ドロツプ」「星空の下のひなた」「アクアノートとクラゲの涙」など。
なにげなく図書館の新刊コオナアで手にして、料理に関する本だつたので借りた。
予想外に面白かつた。自分が料理が好きなせいもあるのかもしれないが・・・
スープの国の、と題名にあるとおり、物語はスープを中心に始まる。
主人公は昔料理人だつたが、シェフが亡くなつた事を機に料理から離れ、レポオタアのやうなこと
をして過ごしてゐる。
ある日、別れた恋人から料理の仕事を紹介される。
それはある屋敷の専属のコツクで、女主人の夕食を作る仕事だつた・・・
夕食は決まつてゐる、それはスープとバゲツト2切れ。 スープはおまかせ・・・・
時々、この屋敷に客が来る。その客がリクエストするスープ、客が望むやうなスープを
作つていく主人公。
スウプの5話の話が出てくる。
ポタージュ・ボンファム
ビールのスープ
ロートレックのスープ
偽ウミガメのスープ
せかい1おいしいスープ
この作品はスウプだけでは終はらない。
主人公、雇い主、雇い主の血縁関係の人々、執事・・・とその人間関係も面白い。
スウプの作り方、その昔出来上がつたばかりの頃のレシピや民話なども出てきてなかなか面白い。
何より自分が面白いと思つたのは、作者が料理人なのでスウプの作り方を書いてゐてくれて
ゐるところだ。 材料もこの材料を使ふとこんな味になるとか書いてあるので、実際に自分で
作つてみたくなる・・・・・
しかし、これを読むとスウプといふのは実は下ごしらえが大変な料理で、さう簡単に出来るものではない
と思ひ知らされる・・・
じつくり、美味しいスウプを作つて楽しめるのは、ある意味すごく贅沢なことなのかも・・・と思つた