滝沢 隆一郎氏の作品。 本作品で第1回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞された弁護士の方である。
本作品は損保会社が舞台の中心となつてゐる。
損保会社に40年勤め副社長として退職した仲田のもとにある日、週刊誌の記者が訪れる。記者はどこから入手したのか、社内の重要会議の議事録を持ち仲田に取材を強行する。記者のもつ極秘のはづの文書に思はづ、取材に応じる形となつた仲田。
後日、この記者の寄稿した記事が発表され、仲田の勤めてゐた会社は顧客から契約の解除など損失を被ることとなつた。会社は、議事録の流出および社内の機密事項を漏らしたのは仲田であるとし、仲田は会社から損害賠償を請求される。
会社を辞め、年金暮らしの人が会社から不貞行為を理由に訴えられたときだうすればよいのか? 先立つものは金であるが、退職した身にとつて巨額の損害賠償額を基準とした弁護士の着手金など相当な負担となる。
会社から訴えられることは、ともかくとして、思ひもかけないトラブルに巻き込まれたとき主人公仲田の事は他人事ではないであらう。
結末には少し不満と疑問があるが、世の中さういふものなのか・・・と思つた。