ビストロ レアール

石川県小松市にある「ビストロ レアール」のシェフがつづるあんなことこんなこと

パンダな大根?

2005年10月27日 | シェフのコラム
フランスから持ち帰った野菜の種のうち

日本では珍しい

まわりが真っ黒のラディノワール radi noir
「黒大根」というと言う大根があるのですが
ちなみに以前書き込んだ
二十日大根はラディッシュは radi
フランスで中国人が作っている
日本でいう大根は
radi blancラディ ブラン 
白大根と言うのですが

ここでは黒大根の事を
お話しましょう

寒くなって鍋料理や煮込み料理が美味しくなってきました
この黒大根もそんな鍋や煮込みによく用いられていて
皆さんご存知の

ポ ト フゥー

(ポは土鍋のようなもので
トはリエゾンといって言葉の単語をつなぐため
トと言っていますがauオー 加えるとか何々に と言う意味で
フゥーは火で
ストーブのような火にかけてコトコトゆっくりと煮込んだ
スープ煮という意味の煮込みです)

ポ ト フゥーに欠かせない野菜のひとつに
黒大根があります
ほっこりとして芋系の味がする大根で
長い間煮込んでも煮崩れず
美味しい大根なのです

義理の父に頼んで
作ってもらったところうまく出来まして
料理に使っていたのです が
ある日
気が付くと
隣りに植えてある普通の白大根が
なんやら黒っぽい斑点のようなものが

なんと
黒大根の花粉が白大根に移ったようで
まるでパンダの大根に
このままでは
周りの畑の大根までパンダになりかねないと
思ったのか次の年からは
父は黒大根を作るのをやめました

近所中の大根が黒と白のまだらになったら
パンダではなく

牧場の牛を見ているかのようになっていたかも

テラスの茂みに隠れて

2005年10月27日 | シェフのコラム
パリから一日かけて

やっとサントロペに着いて

キャスター付きにもかかわらず
重いバリーズを引きながら

サントロペの二つ星レストラン
「シャビシュー」
バス停からてくてく歩いて
目的のレストランを通り過ぎ坂道を登り
民家もまばらになり
ブドウ畑もちらほら見えてきはじめてきた時

向こうから人が歩いて来たので
「シャビシューというレストランが何処にあるか
 ご存知ですか?」とたずねると

「アー レストランシャビシュー セ アヴァン サンク ソン メートルラバ」
(あーそのレストランなら500メートル手前ですよ)と・・・・

指差した方向は苦労して登ってきた今来た道でした

辺りも暗くなり始めた頃
やっとの思いで着いたレストランは
無常にも人影は無く
中をのぞけばまだテーブルも椅子もない
ガラーンとした空間でした

日にちを間違えたのかと
レストランからの手紙を見ても日にちの間違いではなく
途方にくれました

まだ シーズン前で朝夕は冷え込み
その上 小雨まで降り始めました

普通 私たちキュイジニエ達は
労働許可証を持っていないので
ヤミで働いているのです
そのため
コントロール(取締官)が来る前に
着替えて休憩になったり
物置に隠れたりとするのですが
この時も見回りのお巡りさんに
不審者と思われるのを避けて
写真の樹の後ろでバリーズの上に腰掛けて
野宿しましたが
寒いは雨は降ってるはお巡りさんは気になるはで
一睡も出来ず
朝をむかえ
8時に一人のコックコートを着た
日本人が

おはようございます
あのーここで働く人ですか?と

助かったー!

彼の話によると山にあるレストランからの
(冬季オリンピックがあったサヴォア地方)
トラックが遅れて今日からと言うことで
冬はサヴォア地方のレストラン
夏はサントロペとレストランの冷蔵庫から備品全て移動してしまうのです

知らないんですか?と

ええ(聞いてねぇーよー)

そして
その日からすぐに仕事で夜の11時まで働き
上ったり下ったりの
街灯もない真っ暗な山道を30分もかけて
寮に帰りました

そして
自己紹介したり
何処で働いていたかとかいろいろ話結局
横になったのが朝方で
すぐに起きてレストランまで歩いた思い出があります

あの茂みに隠れていた あの頃があることが
今の励みに表れていればいいのですが