ビストロ レアール

石川県小松市にある「ビストロ レアール」のシェフがつづるあんなことこんなこと

テラスの茂みに隠れて

2005年10月27日 | シェフのコラム
パリから一日かけて

やっとサントロペに着いて

キャスター付きにもかかわらず
重いバリーズを引きながら

サントロペの二つ星レストラン
「シャビシュー」
バス停からてくてく歩いて
目的のレストランを通り過ぎ坂道を登り
民家もまばらになり
ブドウ畑もちらほら見えてきはじめてきた時

向こうから人が歩いて来たので
「シャビシューというレストランが何処にあるか
 ご存知ですか?」とたずねると

「アー レストランシャビシュー セ アヴァン サンク ソン メートルラバ」
(あーそのレストランなら500メートル手前ですよ)と・・・・

指差した方向は苦労して登ってきた今来た道でした

辺りも暗くなり始めた頃
やっとの思いで着いたレストランは
無常にも人影は無く
中をのぞけばまだテーブルも椅子もない
ガラーンとした空間でした

日にちを間違えたのかと
レストランからの手紙を見ても日にちの間違いではなく
途方にくれました

まだ シーズン前で朝夕は冷え込み
その上 小雨まで降り始めました

普通 私たちキュイジニエ達は
労働許可証を持っていないので
ヤミで働いているのです
そのため
コントロール(取締官)が来る前に
着替えて休憩になったり
物置に隠れたりとするのですが
この時も見回りのお巡りさんに
不審者と思われるのを避けて
写真の樹の後ろでバリーズの上に腰掛けて
野宿しましたが
寒いは雨は降ってるはお巡りさんは気になるはで
一睡も出来ず
朝をむかえ
8時に一人のコックコートを着た
日本人が

おはようございます
あのーここで働く人ですか?と

助かったー!

彼の話によると山にあるレストランからの
(冬季オリンピックがあったサヴォア地方)
トラックが遅れて今日からと言うことで
冬はサヴォア地方のレストラン
夏はサントロペとレストランの冷蔵庫から備品全て移動してしまうのです

知らないんですか?と

ええ(聞いてねぇーよー)

そして
その日からすぐに仕事で夜の11時まで働き
上ったり下ったりの
街灯もない真っ暗な山道を30分もかけて
寮に帰りました

そして
自己紹介したり
何処で働いていたかとかいろいろ話結局
横になったのが朝方で
すぐに起きてレストランまで歩いた思い出があります

あの茂みに隠れていた あの頃があることが
今の励みに表れていればいいのですが

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。