廃線跡を歩く(羽村山口軽便鐵道) Vol.1


かつて、記事廃線跡を歩く(立川飛行機専用線)でも触れましたが、自分にとって地理的にも関わりが深い地域なだけに、この羽村山口軽便鐵道だけは、一度再訪してみたいと考えていた所です。実は数年前、廃線に(;´Д`)ハァハァする世界へ出戻った頃、一度短いながらも探索をした事がありました。しかし、その時は終点のあたりをさまよう内に日が暮れてしまい、とてもその全容を確かめるには至らなかったのです。




<<羽村山口軽便鐵道について>>
 玉川上水や神田上水等の開渠河川が汚染され、水道水が直接多摩川から取水され浄水場経由で供給される様になったが、渇水時などに供給量不足となり、その対策として村山貯水池が建設される事になった。その導水管工事用として羽村から現在の貯水池まで敷設されたのが羽村山口軽便鐵道である。その様な背景もあり、敷設年は1921 (大正 10) 年と歴史は古い。その後、村山貯水池の完成に伴い廃止となったが、東京都の人口増加に対しての水不足は否めず、さらに山口貯水池が建設される事になり、この廃線跡は改めて1928 (昭和 3) 年に現役軌道として復活した。


 通常であれば、廃線跡が復活する事は少ないのであるが、山口貯水池の完成後に廃線となった軌道は、歴史に翻弄され3度目の復活を遂げる事になる。第二次世界大戦中に米軍の本土攻撃に備え、両ダムの堤体補強工事 (村山・山口貯水池防衛工事) が行われる事になったのである。1943 (昭和 18) 年 4 月頃に復活した軌道は、工事終了と共に廃止され、再び蘇る事はなかった。1944 (昭和 19) 年 12 月、実に現在から遡る事65年前の事である。




実はこの廃線跡、都下の廃線跡としてはかなり著名です。また、この廃線跡に関する情報もインターネットを通じて沢山入手できます。しかしながら、CABEZÓN個人の色々な記憶を遡りながら考えに考えた結果、この世界にのめり込むきっかけとなったのが羽村山口軽便鐵道に違いないという確信を得る様になってきました。というのも、CABEZÓNが中学生の自分、当時の悪友とこのあたりを自転車で彷徨ったおりに遭遇した西武山口線羽村山口軽便鐵道に関しては、記事廃線跡を歩く(立川飛行機専用線)で触れましたが、それとは別に、羽村山口軽便鐵道にまつわるとても印象深い思い出があるのです。




中学生の時分、悪友達と恒例の如く自転車を駆って村山方面を目指した時の事、山道を登ったり降りたりと忙しく走り回り、ふと、途中立ち寄った場所で友人が言うのでした。「ちょっと中を見てみるべ」。一緒にいた連中は、言われるがままに自転車を動かし、ある山間の道から路地の様な所に分け入りました。そこは、鼻を異様な硫黄臭がつき、へんぴな上に怪しい雰囲気が立ちこめる場所。たった一件の民家しか存在せず、あたりは深い緑に覆われています。そして、その民家の前から右と左を見渡してみると、そこには人々から忘れ去られた様な隧道が、それぞれぽっかり暗い闇を湛えていました。友人は言いました。「行けるだけ行ってみるべ」。我々は自転車に乗ったまま左側の隧道の中に入って行きました。中はひんやり冷たい空気に覆われ、地面は大きな水たまりの様、ペダルをこぐ度にバシャバシャと水をかき回す音ばかりが響きます。彼方に見えていた明るい出口がそろそろ近づいたところで、彼は言いました。「やべぇ、出られねえ」。よく見ると出口はフェンスで道路と区切られていて、車道側からは進入できない様になっていたのです。「戻ろう!」。複数の人間で連れ立っていながら、大きな不安がよぎりました。置いて行かれたら、、、大急ぎで進入した方向へ戻っていったのです。隧道を出ると、更なる先にもう一つの隧道がぽっかり闇を湛えていました。出口こそ見えるものの、途中で曲がっているからでしょうか、いびつな明かりが遥か先に見えるのみです。「あっちは止めておこう」。
 帰り道に、友人に尋ねました。「あのトンネルは何だったんだろう?」「親父から聞いた話だと、戦争中に部品を組み立てていた場所らしい。飛行機のエンジンだか何だか知らないが」「防空壕か?」「まぁ、そんなもんだろう・・・」。





この世界に戻った頃、インターネットで色々と調べている内に、驚くべき事実を知りました。かつて友人とくぐったあの隧道が、羽村山口軽便鐵道の横田隧道であったこと、すなわち廃線跡であった事を20年以上を経て初めて知ったのです。そして、あの頃は放置されるがままになっていた廃線跡が、現在はサイクリングロードとして整備されていて、快適に通行できる事も知りました。あまのじゃくな私は、その後にこの廃線跡を訪れたものの、整備されていない終点のあたりに踏み込んだだけにとどまりました。


「いつかあの隧道をみてみたい」


その様な思いを抱きながら数年の歳月が流れて行きました。


つづく


Editor CABEZÓN


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