星のひとかけ

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何度でも…?:ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 第710回定期演奏会

2023-05-23 | LIVEにまつわるあれこれ
  ** 5/21記 **

東京交響楽団 第710回 定期演奏会 サントリーホール
指揮=ジョナサン・ノット

リゲティ:ムジカ・リチェルカータ 第2番
 ピアノ=小埜寺美樹
マーラー:交響曲 第6番 イ短調 「悲劇的」


昨夜行って来ました。 楽しかった!
本日のミューザ公演のニコ生中継もあるので、その後にまた書こうと思いますので簡単に。。

最初のリゲティ。 予習で初めて聴いた時は(ベルトラン・シャマユさんの演奏でした) はぁ? とびっくりしましたが、 なるほどピアノもハンマーで叩く楽器である… そうピアノは打楽器でもあるのね… と思って だからノットさんはマーラー6番と結びつけたのかしら、、 と考えておりました。 その予想が実際に聴いてどう感じるか、 楽しみにしていました。。

つづく マーラー6番。 こちらも生演奏を聴くのは初めて。

ノットさんのマーラーは うねる、流れる、渦巻く・・・  こちらも予習で聴いたのとは全然ちがうマーラーでした。 圧倒的な緊張感に始まる第一楽章。 なんて美しいんだろう… と胸がいっぱいになる部分が何度もあった第二、 第三楽章。 驚きと混沌と示唆、思索、課題、、 いろいろ考えさせられた第四楽章。

緩急を複雑に変化させるノットさんの指揮だから、 その中で(特に打楽器さんなどは)そのうねりの中で音を奏でるのは大変だろうなぁ と感じたのと、 それゆえに (もっとノットさんをちゃんと見て!)という想いがちょっとしたのと。。 決して乱れているとかではないのです、 (金管さんなども)精度はもっともっと上がるんじゃないかなと思わせてくれる期待度が東響さんには感じるのです。 (こちらが素人耳なのでわからないけれど)

弦さんは素晴らしかったなぁ… ニキティンさん美しかったなぁ。。

以前にも(東響さん以外の楽団さんのときに) 音を終える瞬間を大事にして欲しい、 音の終着点をどう奏でるか、、ということを感じましたけど、 昨日のように大編成だと 特に出だしでバンと合わせる瞬間はものすごく美しいのに、それぞれが鳴らし終えるそのときどきをもっと大事にして欲しいと思ったり、、 (音としてそう聞こえているのか、それともこちらの眼が勝手にそう判断しているのか、 自分でもその辺があやふやなので) それはニコ生さんの中継を見て聴いて、 もっとよく考えてみたいなと思っているところ。。

、、 なんだかんだ言っても 東響さん&ノット監督の演奏は楽しい…♪

ひさしぶりのサントリーホール、 しあわせな時間でした。


  ** 追記 **

ニコ生のタイムシフトでミューザ公演のほうも視聴しました。 サントリーホールで感じたもうちょっとの部分は、 ミューザの演奏では殆んど感じなくて、 じつに生き生きとした演奏でした♪

第二楽章の各パートさんが入れ替わりソロを奏でる部分とか、 東響の木管さんやホルンさんの巧さに聞き惚れたり、、 あれ?ここでこんなフレーズあったんだ…とか こんな音が重なっていたのね… と気づかされる部分もいっぱいで、 この曲は1904年完成だそうだけれど、 オーボエさんが奏でるソロのところとか 時おりすごくモダンな、 まるでジャズの前ぶれみたいなフレーズもあったりして、 20世紀の音楽の予兆みたいなのも感じるのでした。

第三楽章は美しい郷愁の世界で、 それぞれの楽器さんの名演にずっと浸っていたくなる美しさ。 ニコ生で聴いていても美しいですが、 ホールで聴くと あちらとこちらのパートさんのソロが重なり合う音の波が、 まるで海の波があとからあとから寄せ来るようでそれが得も言われぬ感動で、 なんども涙出そうになりました。

それもこれも ノットさんの緩急をたゆとわせるゆったりと遅いテンポで聴かせるドラマチックな演奏だからかな、、と思ったり。。 実際ホールで聴いた時も、 なんてドラマチック! まるでオペラみたいにさまざまな映像(音像?)を感じる… と驚いていました。

このゆっくりとしたテンポがとりわけ意識される第四楽章。 この演奏を聴いていると、この遅さが良いと感じられるから不思議。。 そして驚きのハンマー5回は、、 会場ではハンマーの方が立ち上がるのが見えるので、 (え? もう叩くの?) (え、また叩くの?)と友と顔を見合わせていましたが、、むしろ面白かったです。。 この5回の意味って何だろう… とやっぱり考えてしまいました。

これだけゆっくりとした演奏でなかったら ハンマー5回は無理のはずですよね、 うっとうしくなってしまう。。 これだけ時間をかけて演奏しているから5回も成り立つんでしょうけれど…

ハンマーの意味は人生を襲う悲劇の打撃だそうだけれど、 当日 聴き終えた時に (5回だったね…) (マーラーがこの曲を書いてから100年以上経ってるからその間に起こった悲劇が追加された?) (世界を襲った悲劇の数…) などと話していたのです、、 けれど 聴き直してもまだわかりません。

ただ、ハンマーの《音色》も、 いろんな動画のものを聴き比べるのも面白くなって いくつか聴いてみたりして、、 特にバーンスタインの2回のなどは木槌もすごーく巨大で、 打撃音も木が砕けるみたいなメリッ‼ って音まで聞こえる。。 あんな打撃だったら2回が限度、、

東響さんの5回ハンマーの第四楽章は、 なんだか聴いていても見ていても、 打ちのめされる悲劇の音という感じには聴こえなくて、、 なんというか、、 人生のドラマの中で運命に翻弄されながら、 時に打ちのめされ でもまた立ち上がり、 ふたたび困難に襲い掛かられ、 でもまだ前に進み、、 っていう感じに七転び八起きではないけれども、 まるでドリカムさんの歌のような、 「何度でも立ち上がってみせるよ」みたいな… そんな印象も。。

馬が駆けていくようなリズムや めまぐるしく変化する混沌の調べを突き破って打ち鳴らされる打撃音は、 なんだか悲劇のハンマーというより 逆に人生を鼓舞するハンマー5回のようにも聞こえてしまうのでした。 行けーーーーー! みたいな(笑

第四楽章の後半て、 なんだかゲーム音楽みたいな(勇ましい)フレーズがたくさん感じられません? いろんな打楽器さんの入れ替わり立ち替わりも見ていて楽しかったし、 シンバル3人揃い踏みも良かった♪ 最後にまたハンマーさんが立ち上がった時にはラストは、あの箱を打ち砕いてくれないかしら… なんて思ったり…。 う~ん やっぱり悲劇のなかにも勇気を感じる演奏だったなぁ…


こんな長丁場の演奏を熱演してくださった東響さん&ノット監督には拍手拍手です。 とても刺激的な演奏会でした。