他人から見て奇異な言動(例えば、独り言が多かったり、常に体を動かしていたり、些細な事で癇癪を起こしたり…)を示す従業員がいると、職場環境を害するばかりでなく、顧客や取引先に迷惑を掛けてしまうかも知れない。
このような従業員に対して会社としては何らかの対処を講じたいところだろうが、こうした言動は精神疾患が原因であることが多いので、慎重を期したい。
では、どのような精神疾患が考えられるか、代表的なものを4つほど挙げてみる。
A:発達障害(アスペルガー症候群、自閉スペクトラム症、ADHD等)
B:うつ、双極性障害
C:認知症、MCI(軽度認知障害)
D:統合失調症
このうち「A」は元々その者の気質であるが、最近になって様子がおかしくなったのであれば「B」「C」「D」(すなわち病気)である可能性が高い。
病気ならば早期に治療を受けるのが本人にとっても望ましいには違いないが、拙速に話を進めようとすると本人の反発を買ってしまうおそれもある。
なので、会社(上司)としては、まず本人と面談し、「悩み事でもあるのか」を聴いてあげることから始めたい。 「B」のケースでは、この“傾聴”だけで改善することもありうる。
然る後に、問題になっている言動を本人に伝える。
その際、上司自身の感情や評価を交えるのは禁物だ。 事実のみを伝えて本人が自覚していたなら、治療を勧めれば良い。
しかし、厄介なことに、この類いの病気は本人に“病識”が無いことも多い。
特に「C」や「D」のケースでは、幻覚(幻視・幻聴)を現実に起きた事象だと思い込んでいると、それに呼応した言動も本人にしてみれば何らおかしなものではないのだ。 そうした場合は、その場ではそれを否定せず、同様の言動が見られた時に再度面談の機会を設けて、本人が自ら気付くのを待ちたい。
これを繰り返しても本人が自覚しない場合には、その時にこそ医師の診断を受けるよう勧める(または命じる)わけだが、この時点ではまだ病人と決めつけてはならないことに気を付けたい。 それを判断するのは医師だからだ。
そして、精神疾患と診断されたら、会社は、医師の意見を踏まえて当該従業員の処遇を見直すことになる。
とは言え、疾病に罹患したというだけでは処遇変更の理由とならないので、「治療しながら同じ職務を続ける」のを基本に考えるべきだ。
もしそれが叶わない場合でも、「軽易な職務に変える」、「所定労働日数を減らす」等の措置を講じる余地があるかを模索したい。
なお、どうしても労務の提供が難しい状態であれば解雇もやむを得ないが、トラブル防止の観点からは、できれば退職を勧奨して合意退職に持ち込むことを考えたい。
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