だらしない服装や、無精ひげや、あるいは派手すぎる化粧など、身だしなみに問題のある従業員がいた場合、会社はそれらを直すよう指導することはできるのだろうか。
この疑問への正解を先に述べてしまうと、それによって業務に支障が出るなら、会社は改善するよう指導できる。と言うより、そういう場合には、むしろ「指導すべき」だ。
例えば、顧客と対面する業務(外回りであれ内勤であれ)に就かせているなら、相手に不快感を抱かせるような身だしなみは改めさせなければならないし、業態によっては、会社のイメージに合った服装や髪型を従業員に求めることもあるだろう。
また、事故防止や職場の衛生状態保持の観点から指導が必要なケースも考えられる。
こうしたものに関しては、問題が起きてから指導するよりも、就業規則(服務規律)や「社内ドレスコード」といった類のルールを設けて予め従業員に周知しておく方が、より効果が期待できよう。
しかし、反面、この論は「業務に支障が無いなら指導できない」という意味でもある点には、注意を要する。
すなわち、会社が、顧客と接する業務に就いていない者の身だしなみに関して会社が指導したり、企業イメージや事故防止等に関係なく服装や髪型を指定したりするのは、許されないのだ。
これに関しては、「長髪やひげを理由とする人事評価の引き下げと賃金カットは無効」とした裁判例(神戸地判H22.3.26)を参考に覚えておきたい。
ところで、冒頭のような疑問を持つのは、もしかしたら「身だしなみに関して会社が指導するのはセクハラやパワハラに該当するのではないか」との懸念があるのかも知れない。
確かに、身だしなみというものは個人的な趣向に属する問題であり、本来、会社にどうこう言われる性格のものではないのだが、業務に必要な指導を行うのは正当な行為であって、それは、セクハラでもパワハラでもない。
問題になるのは、その指導内容が業務に必要な範囲を逸脱してしまうケースだ。それを防ぐためにも、やはりルールを設けて、その基準を明確にしておくことが望ましいと言えよう。
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