職場におけるハラスメントには、「セクシャルハラスメント(セクハラ)」・「パワーハラスメント(パワハラ)」・「マタニティーハラスメント(マタハラ)」・「モラルハラスメント(モラハラ)」等がある。
これらのうち「パワハラ」について、厚生労働省は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義している。ここで言う「職場内での優位性」には、職務上の地位の上下に限らず、人間関係や専門知識や経験などの様々な優位性が含まれるのがポイントだ。
したがって、パワハラは一般的には「上司から部下に対する嫌がらせ」と解されているが、「部下から上司に対する嫌がらせ」もパワハラに該当しうる。
具体的には、
① 上司を無視する(業務指示違背を含む)、
②過度に「パワハラ」を主張する、
③上司の誹謗中傷(その内容が事実であるか否かを問わない)、
④上司への暴力行為等、が挙げられる。
労災事案ではあるが、飲食店の料理長が部下からいわれのない中傷を受け“うつ”を発症し自殺したのを業務災害と認めた裁判例(東京地判H21.5.20)もその一例と言える。
ちなみに、こうしたケースを「逆パワハラ」と称するメディアも見受けられるが、厚生労働省の定義に拠るならば、これらも「パワハラの一形態」と理解するのが正しいだろう。
もっとも、そもそもこれらは職場秩序を乱す行為であるから、会社(上司)は、「パワハラ」という概念を持ち出さずとも、相応の対処を講じれば良い。就業規則違反行為があれば正させ、あるいは制裁を科し、名誉毀損や暴行・傷害等の犯罪行為があれば司直の手に委ねることも視野に入れて検討するべきだ。
しかし、そういった“割り切り”ができずに自らを責めてしまう生真面目な上司は、メンタル不調に陥ってしまうことがある。経営者は、“上司の上司”として、こういう事態も起こりうることを想定しておかなければならないだろう。
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