平成29年5月、民法(債権法)改正案が成立し、公布の日から3年以内に施行されることとなった。今般の改正事項のうち、短期消滅時効の廃止については、労働法にも影響する可能性がある。
改正民法第166条は次のように定め、これ以外の短期消滅時効の定めを削除した。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
2 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
(第2項・第3項は省略)
これは、現代では合理性に乏しい短期消滅時効の規定を廃止し、時効期間を「10年」に統一・簡素化を図り、その一方で、単純に消滅時効期間を10年とすると弁済の証拠保存のための費用が増加するとの懸念等を踏まえ、「主観的起算点から5年」という新たな消滅時効期間を設けたものだ。
これを受けて厚生労働省は、昨年12月26日に有識者会議「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を立ち上げ、労働基準法の改正も視野に入れた検討を始めた。
現行の労働基準法第115条は、退職手当以外の賃金・災害補償等の請求権に関する消滅時効を「2年間」としているところ、これを「5年間」とすべきか否か、その在り方について、今年の夏を目途に(まもなくか?)論点整理を行うとのことだ。
検討会における論点中、経営者にとって問題となりそうなのは、「未払いの時間外手当」と「未消化の年次有給休暇」の2点だろう。
時間外手当については、現に就労した分の賃金を支払わないのは庇うに値しないが、会社が「就労していなかった」として支払わなかった賃金に関して、その当否を争われるリスクを負う期間が延びるということを意味する。これは会社にとって大きな負担となろう。
また、年次有給休暇については、最大100日間(年20日×5年間)、給料を払いながら休ませなければならなくなる可能性がある。会社としては、計画的付与(過半数労組または過半数代表者との労使協定が必要)や時季変更権の行使等により、そのインパクトを軽減する方策も考えられるが、これらは労使関係が正常な場合にしか機能しない。労使トラブルによって出勤しなくなったケースでの訴訟案件においては、これを丸々請求されると思っておかなければならないだろう。
現実的に労働基準法を改正することにはなるとは限らないが、これからの議論の行方を見守っていく必要はありそうだ。
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