ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労働基準法違反で助成金が受給できないケース

2016-10-23 13:09:03 | 労務情報

 雇用調整助成金(かつては中小企業向けには中小企業緊急雇用安定助成金と称していた)は、事業主の支払った「休業手当」の一部を雇用保険制度から補助するもので、休業することで解雇を回避し、雇用の安定に寄与することを目的としている。ただ、不正受給が横行したせいか、支給要件が厳しくなり、昨今は受給申請が下火になっているようだが、今でも制度は存続している。

 ところで、この助成金の申請に際して、支払われた休業手当が「平均賃金の6割に満たない」ことを理由に助成対象から外れてしまう例が散見されている。

 そもそも労働者側に労務提供の意思があるのに事業主側の都合で休業させたのなら、本来は対価(賃金)を支払う義務を負うのが民法の原則だが、当事者間に別の定めがあれば必ずしも100%を支払わなくても良い。しかし、そうは言っても、その交渉に当たって労働者側はどうしても弱い立場に置かれてしまうので、「最低でも平均賃金の60%を支払う」べきことを罰則付きで強制しているのが、労働基準法第26条(休業手当)の趣旨である。
 その「平均賃金」の基本的な算出方法は、「臨時の賃金(慶弔手当等)」・「年3回までの賞与」・「特定の現物給与」を除くすべての賃金を、3か月間の総日数(89日~92日)で割って求めることとされている。この算式の分子は「すべての賃金」(限定列挙された上述3種類を除く)となっていることから、「住宅手当」や「家族手当」はもちろん、「通勤手当」も、さらには「時間外手当」も加えて算出しなければならない。特に“遠距離通勤の人”や“残業の多い人”については要注意だ。
 もし、支払った休業手当が平均賃金の6割未満であったら、労働基準法違反の状態であるから、助成金どころの話ではない。

 ちなみに、平均賃金は、次の場面においてそれぞれの金額の算定基礎として用いられる。
  1.解雇予告手当
  2.事業主の責による休業における休業手当
  3.年次有給休暇を付与した日の賃金(他の計算方法もあり)
  4.労災事故における休業補償や遺族補償
  5.制裁としての減給額
  6.じん肺法による転換手当
 これらに共通するのは、「労働者の収入を補償する」という目的を有していることだ。時間外労働や休日労働に対する「割増賃金」と混同されやすいが、支払いの性格付けも算定基礎の算出方法も異なることを覚えておきたい。


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