ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

休職制度の意味を正しく理解していますか

2016-07-23 17:35:44 | 労務情報

 就業規則に休職制度を設けている会社は多いが、経営者がその意義を正しく理解していなかったためにトラブルに発展する事例が見受けられる。

 「休職」とは、会社の責めによらない理由により労務の提供ができなくなった従業員に対して、会社は、本来なら労働契約が履行できなくなったことを理由として契約を解除(すなわち解雇)することができるところ、一定期間を経過すれば再び働けるようになる可能性がある場合に、その間、解雇を猶予する、というものだ。(「出向休職」のごとき会社都合による休職制度を設けている会社もあるが、ここでは例外としておく)

 この趣旨からすれば、猶予した「一定期間」を満了してもなお職場復帰できなかったなら、当然に解雇できると考えられそうだが、それほど簡単な話ではない。こうした場合にも、会社には解雇回避義務が課せられるからだ。
 これは、就業規則で「休職期間満了時に、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復していなければ、自動退職とする」と定めていたとしても(一応の「合理性」は主張できるかも知れないが)、「社会通念上相当か」という視点からは疑問符が付され、文字通りの「自動退職」を事務的に進めてしまうのは危険と言えよう。

 具体的なケースを挙げると、私傷病により休職していた従業員が休職期間満了時に、原職に戻れる程度にまで健康状態を回復していなかった場合、会社は、そのことをもって解雇するのは許されず、その者の状態に見合った業務量の軽減や配置転換等により雇用を継続するよう努めなければならないのだ(大阪地判H11.10.4等)。ただし、その従業員のためにわざわざ新たな職務を用意することまでは求められていない(東京地判16.3.26)。

 こうしたトラブルは、特に「完治」という概念の無い「精神疾患」の場合に発生しやすく、加えて、精神疾患は業務に起因するケースもしばしばあって、その場合は解雇ができない(労働基準法第19条)ため、そもそも休職制度が適用されない点には注意を要する。
 昨年12月から義務づけられたストレスチェックにおいて精神疾患を持つ社員が見つかった場合にも、これらを踏まえて対処できるようにしておきたい。

 以上はすべて、「休職=解雇の猶予」ということが認識できていれば、理解しやすい話だろう。単なる「長期欠勤」とは意味が違うのだ。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする