ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

転籍には原則として個別同意が必要。在籍出向も要注意。

2010-07-13 13:26:26 | 労務情報
 業務の都合や従業員のキャリアアップのために配置転換を行うことは、時として必要である。しかし、それが自社内での「人事異動」でなく他社への「出向」である場合は、故意でなくとも違法状態に陥ってしまうことが有るので、手続きは慎重に進められたい。

 自社から他社に籍を移して勤務してもらう「転籍出向」(単に「転籍」あるいは「移籍」とも言う)は、会社が一方的に命じることはできないとされている。「転籍」とは、元の会社との雇用関係を終了させて、転籍先との新たな雇用関係を結ぶという意味だからである。
 転籍を命じるには、整理解雇に準ずる場合における例外はあるものの、原則的には対象者から“個別同意”を得ることが必須である。そして、転籍命令を拒んだことを理由として対象者を不利益に扱ったり、あるいは「不利益に扱う」と脅したりするのは、「退職の強要」とみなされるので、やってはならない。
※本稿を書き終えた後で、最高裁が「会社分割に際して部門ごと別会社に転籍するような場合であっても、会社が従業員と協議を行わなかったり内容が著しく不十分だったりすれば、その転籍命令は無効」との判断を下した(H22.7.12最二小)というニュースが耳に入ってきた(グッドタイミング!)が、特に目新しさはなく、従来からの一般的な労使間の認識を再確認したものと言える。

 さて、それに対して、自社に籍を置いたまま他社に勤務してもらう「在籍出向」(単に「出向」とも言う)は、不当な動機によるものや対象者に著しい不利益を強いるもの等でない限り、本人の希望とは関係なく会社が命じることができるとされている。ただし、出向の可能性が有ることを雇用契約や就業規則で定めていないと労使間のトラブルになるケースもある。
 また、出向先に費用を負担させる場合には、その負担額が出向者の人件費を上回っていると「派遣」と判断されてしまうこともあるので、その点に注意しなければならない。

 転籍出向であれ在籍出向であれ、自社の労働力を他社に提供するのであるから、その実施に際しては、安易に目先の損得だけで考えず、長期的かつ広範的な視野を持って検討したいものだ。


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