「うつろ庵」の玄関先に置いた万両の鉢植えが、雨に濡れて雫を湛えていた。
ゆっくりと昼食を摂ってからカメラを携えて玄関にでたら、キラキラと輝いていた雫は乾燥して消え失せ、誠に残念だった。
二週間ほど前に「千両」を掲載した際に、「時には小鳥たちの置き土産から、思いも掛けない可愛い芽生えがあったりして、じじ・ばばを狂喜させることもある」と書いたが、この万両は将に「小鳥の置き土産」なのだ。
「うつろ庵」には、謂わば小鳥の寛ぎの庭木が数あるが、そんな木の根方に何時の間にか万両が芽生えていた。 万両は徒長しないので、「其の侭お気軽にどうぞ」と暫らくは放置してあった。 赤い実を付けたので二株を鉢に移植し、置き場所を時々変えて愉しませて貰っている。
面白いことに、鉢を置く場所を替えれば、その都度万両は表情を変えて、じじ・ばばを愉しませて呉れる。万両の容姿が変わる筈はないのだが、置かれた場所の雰囲気により、観る者の受け止め方が微妙に変わるのであろう、如何にも表情が変わったように観えるから不思議だ。 そんな些細なことであれ、お遊びに代えて愉しむのがこの頃の虚庵夫妻だ。
雨に濡れ雫を湛えた万両の
風情を逃しぬランチの合い間に
小鳥たちの寛ぐ庭木の足元に
万両芽生えぬ小鳥の土産か
芽生えにし万両若木に 「お気軽に
其の侭どうぞ」と 囁く妹子ぞ
暫らくは庭木の根〆に放置すれど
鉢に植え替え 赤実を愛でむと
時どきの気分に応じて置き場所を
替えれば万両 表情豊かに
朝な夕な万両実房のご挨拶は
小粒の輝き 雨の雫も
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