「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「富士山の影法師」

2011-11-03 00:29:02 | 和歌

 夕暮れに虚庵夫人と連れだって、海岸のプロムナードを散歩をした。

 夕陽を背中に受けて、ごくゆったり歩いていてふと気が付いたら、二人の長~い影法師が揺らめきつつ、どこまでも一緒に付いて来た。 子供の頃には、お友だちと一緒に「影踏み遊び」をしたことが懐かしく思い出された。 大人気もなく茶目っ気を出して、影の踏みっこをして童心に還って遊んだ。

 前後を散歩していた人々は、じじ・ばばが突如として「影踏み遊び」に興じたから、怪訝に思ったに違いあるまい。老夫妻にとっては他人様の眼など気にならないから、いい気なものである。天真爛漫に、ひとしきり「お遊び」を楽しんだ。

 夕陽が沈み、影法師が見えなくなって、ふと振り返ったら、三浦半島の低い山並みの向こうに、「富士山の影法師」が見えた。
夕靄の様なごく淡い雲に、富士山の南の稜線が延長したかのように、空高く影法師が伸びていた。駿河湾、更にはその向こうの遠州灘に太陽が沈まんとして、水平線の彼方から富士山に残照を投げかけているのであろう。

 じじ・ばばの「影踏み遊び」に合わせて、富士のお山も「長~い影法師」を残して、暮れなむとしていた。



 

          ばば様と夕焼け小焼けの散歩には

          供する二つの影法師かな


          揺らめきて何処までついて来るのやら

          身の丈いとど伸ばしてやまずも


          童心に還って影踏み興ずれば

          激しく揺れる影法師かも


          影法師踏み交わしつつお遊びに

          齢を忘れるじじとばばかな

        
          いや長く伸びにし影もやがて消え

          陽は山の端に入りにけるらし


          振り返れば富士のお山の影法師も

          われ等に和して共に遊ぶや


          茜空の富士のお山の影法師よ

          名残とどめよ せめて暫しを
         






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