「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「バラ一輪」

2012-02-03 15:40:29 | 和歌


          紅の薔薇一輪は抱けるや

          寒に耐えつつ熱き思ひを 


 
 雲の垂れこめた寒い「うつろ庵」の庭に、たった一輪だけの紅の薔薇が咲いた。
この時節で、莟から開花に至るまでの辛苦は並大抵のものではなかろう。花茎自体も頑健には育たず、細首のままだから寒風に吹かれれば、前後左右に振り回される。気の毒なことに、花びらには数か所に棘の傷跡がついたままだ。

 「うつろ庵」のこの真紅の薔薇は、以前にも何回かご紹介したが、「高貴な乙女の化身」だと虚庵居士は信じて疑わない。本来ならば馥郁と香りたつ気品を湛えているのだが、厳寒のこの季節ではそれも侭ならない。にも拘わらず、寒に耐えて咲くのは、こころに熱き思いを抱いているからに違いあるまい。

 寒空に佇み、薔薇の心を忖度しつつ、暫しもの思いにふける虚庵居士であった。


 

          襟元を開いたままに凛と立ち

          首(こうべ)をたれぬは出自を語るや


          ただ独り君を想えば寒空も

          厭うものかは薔薇を召しませ


          化身なるわが身の思ひを如何にせむ

          ただ紅の花に託すは


          見たまふや想寄せにしかの人は

          寒に咲くばら思ひとどけと







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