桜が散り、葉桜に変わった。
東日本大震災では岩手・宮城・福島の被災地の皆さんは、そして福島第一原発の事故対応に追われる人々には、桜の繚乱たる様も桜吹雪も目に入らずに、必死の戦いの日々であったろうとお察しする。
リタイヤ組の虚庵居士は、気持がせくばかりで何も出来ぬ無力さに、悔しさのみが募り、グラス片手に深夜までパソコンに噛り付く毎日であった。気が付けば深夜の2時・3時までも、鬱積した思いを深酒の酔いに晴らして来た。
たまたま日経新聞に掲載された、「放射線と生活習慣の発がんリスクの相対比較表」を見て愕然とした。毎日2合以上の酒を飲み続けると、発がんリスクは飲まない人に比べ1.4倍、3合以上では1.6倍にもなる。毎日2合の飲酒は、原爆被災者の1000~2000ミリシーベルトの被ばくに相当するリスクだと知った。
福島原発事故に関連して放射線被ばくが話題になっているが、事故時の被ばくは年間の累積線量で管理される。原爆の被ばく量はおよそ1分間程度の短時間被ばくだから、双方の人体に及ぼす放射線の影響は凡そ
500,000倍もの差がある。
1000ミリシ-ベルト(1シーベルト)の被ばくでは、1万人あたり4000人が癌死亡の可能性があると評価されているのだ。虚庵居士は、既にその領域に足を踏み入れて、いやアルコールに己が身を漬けているのだと知らされた。
葉桜に変わった公園の片隅で、名も知らぬ木の芽吹きが夕陽を浴びていた。被災地で悶々たる思いに塞ぐ皆さんへ、「黄金の芽吹き」を贈りたい。細い枝先から逞しく芽吹き、夕陽に煌めく「芽吹き」は被災者の皆さんに、胸の内から湧き出る思いを掻き立ててくれるに違いない。被災地の片隅にも、同じような芽吹きがあるに違いない。それぞれの胸に、それぞれの芽吹きを育んで貰いたい。
夕陽浴びて黄金に煌めく芽吹きかな
ただひたすらに芽吹くぞ麗し
桜咲く苑の片隅ひそやかに
命の芽吹きを胸に刻みぬ
願わくば心塞げる諸人も
芽吹きに倣い こころに芽吹きを