環境を知るとはどういうことか (PHPサイエンス・ワールド新書) 価格:¥ 840(税込) 発売日:2009-09-19 |
とてもお勧めできる本だ。
養老さんのガイドにより、岸さん大いに語るというふうな仕組み。
これまで、岸さんの本で推薦するとすると、まずは、「自然へのまなざし」だったのだけれど、非常に今の状況に即したかたちで、いいかんじに仕上がっている。これからはこの本を、ファーストオプションとして薦められる。
いつだったか、岸さんと対談した際に、彼がしきりと述べていた、人は成長段階で解かなければならない微分方程式のごときものをあらかじめインストールされており、そこに投入されるパラメタによって、あっさり解けたり解けなかったり、ということが、その後のその人のライフスタイルを決定していく要因ともなる、みたいな話もフォローされていて懐かしかった。
本の紹介という意味で、重要な点が2つあって、ひとつは、アメリカの教育界の大転換のこと。
ソベルの訳本は、ぼくも自分の学校の校長に手渡したほど重要なものと感じる。
あと、小網代にせよ鶴見川にせよ、市民運動としての裏舞台がちょっとほのみえること。
いや、本当にいろいろあるのだとよく分かる。
ぼくにとって、キシユージが偉人であるということは、まさにこのあたりの粘り強さにある。
さらにいうと、養老さんが、喫煙問題について、非常に偏った一面的な嫌悪感(ぼくは養老さんのこの方面の議論をそのようなものとして読んでいる)を示す理由もちょっと理解できた気がする。
彼は、原理主義が嫌いで、この十年間に台頭してきた「反喫煙」なる動きが、原理主義的(喫煙を一面的に悪と決めつける)と感じているのではないか。
ちなみに、ぼくも原理主義が嫌い。
寛容でありたいと常に願っているけれど、原理主義に基づいた不寛容にだけは、寛容になれないのだった。
では、疫学はどうか。
喫煙の害、受動喫煙の害を確立したのは疫学だけれど、それは、小手先の因果推論ではなく、因果をネットワークとして理解する。
そのあたりのところを、養老さんにも、おそらく岸さんにもinstallできたらきわめて面白い展開になるんじゃないかと感じた。
関連書籍として、
川の名前 (ハヤカワ文庫JA) 価格:¥ 735(税込) 発売日:2006-07 |
本書の中でもちょっとだけ言及してもらっている。
しかし、「若手小説家が書いた」などと言われると、違和感。
すでに、新進だとか、若手だとかいう惹句が似合わなくなってきた。
足もとの自然から始めよう 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2009-02-19 |
そして、これも言及される重要な本。
子どもの自然教育について、大切な指摘をしている。
さらに、
学校を基地に「お父さんの」まちづくり―元気コミュニティ!秋津 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:1999-03 |
岸由二は小網代で、岸裕司は秋津で、それぞれ、「不可能を可能にした」。
ぼくにとって、キシユージは本当に偉人なのだ。