「青少年健全育成条例改正案の成立に関する緊急要望」というものを都小Pが出しました。
これについて多くの方々が違和感を抱いたのは、ネットを見ていればよく分かります。
ぼくはここでは、都小Pの皆さんとは違ったルートで、PTAに深く首を突っ込んで思索を重ねてきたものとして、世でよく言われていることとは別のタイプの違和感を表明しておきます。
都小Pの方がもしもこれを読んでくださるなら、ぜひ、ご意見を伺いたいですし、また、それ以外の方にも、都小Pの緊急要望には、PTAという団体の性質に照らした意味でも、問題性があるとぼくが考えている点、伝わればうれしいです。
逐一、コメントしていきます。
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報道によれば、昨年の児童ポルノ事件は全国で前年比約4割増の935件と過去最多であり、小学生以下の被害者も約7割増の65人となるなどの状況にあり、保護者の不安はこれまでになく高まっています。
「保護者の不安」について、何か調査があるのかふと疑問に思います。PTAは保護者にアクセスしやすい立場にある団体(構成員のほとんどが保護者)なのですから、「不安が高まっている」ことについては、具体的な証拠がほしいところです(不勉強で知らないだけなら、ぜひご教示を)。
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また、漫画やアニメであっても、幼い子どもが自分から性交を求め、快楽を得ているかのようなもの、親子や姉弟・兄妹間の激しい性交が愛情表現の一環であるかのように片付けられているものなど、大人ですら良識のあるものなら目をふさぎたくなるようなものが、何ら規制されることなく書店の店頭に置かれています。このように、現状では、児童が性的対象になることが野放しの状態で蔓延しています。
上記のようなものが書店に並んでいるのは事実であると認識しています。そして、ぼくもそういうものが子どもの目の届くところに簡単にあることを憂慮します。
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しかし、私たちは、子どもたちが児童ポルノの犠牲者となり、その姿が大人の性的視線にさらされ、インターネット上で永久に広まっていくことを許すことができません。
また、こうした漫画等の蔓延によって、青少年の判断能力や常識、価値観が幼いときから歪められてしまう危機感を強く感じています。
漫画やアニメの話なのか、「実在の」被害者のいる児童ポルノ話なのか、よく分からなくなってきましたが、それはここでぼくが深く考え解きほぐすべき問題ではないですのでスルーします。
むしろ、
「私たち」という主語が誰なのか気になります。
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子どもを守るため、子どもが健やかに育つために、児童ポルノを根絶すること、子どもを性的対象にする図書が青少年の目に触れないようにすること。たったこれだけの願いであるにもかかわらず、一部には、えん罪や表現の自由の規制を理由に、この条例改正案に反対している人がいると
聞きます。これは、子どもを守るよりも自分を守ることが大事だ、と言っていることに他なりません。
PTAという組織の基本は、多様な価値観を持つ保護者と教師が話し合い、学びあうことです。
「民主主義の学校」として設計され、民主的な運営が期待されます。
都小Pの綱領やら定款やら会則やらは、ネットでは公開されていないようなので詳しいことは分かりませんが、個々のPTAや都小Pを構成する区市町村のP連は、社会教育関係団体であり、この場合、「教育」は、保護者どうし、保護者と教師の学びあいを意味するのです。そして、その成果を子どもたちに還元するのがPTAの本旨です。
「都小Pの会員であるP連に属するPTA会員」(ややこしい表現ですが)の中には、漫画やアニメの制作側に身を置く、直接の利害関係者もいるでしょう。
また、別の観点から(たとえば、要望書に出てくるような、えん罪の懸念、表現の自由などの観点から)、強すぎる規制に反対する人もいるはずです。
会費を支払い(都小Pに入会しているPTA連合に所属している個々のPTAの会員は、払った会費の中から200円ほど【うろおぼえ】を都小Pにおさめます。ぼくも今年度はじめに払いました。もっともそのうち60円は日Pにいわば「上納」されるのですが)活動を支えている人たちの中に確実にある
違った意見を無視して、断罪するようなスタンスに強い違和感をおぼえます。
また、
子どもを守るためにはえん罪を認めてもよいと、読めるところにも「PTAらしくない」と強く感じます。
子どもは守るべきだし、えん罪もあったら困る。表現の自由も民主主義の根幹とされるほどの大切なことですから、PTAがないがしろにしてよいはずがありません。
これらのことを鼎立できるような手段を求めるのが、
多様な価値観を内包する巨大組織であるPTAの連合組織(この場合は都小P)が持つべきコモンセンスであると信じて疑いません。
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このような主張に与し、大人が子どもを性的対象として弄び、傷つけることを許すことが、「人権を守る」こと、「自由を守る」ことなのでしょうか。
私たちは、親として、このような主張を受け入れ、「児童ポルノは、見るだけならいいのよ」、「強姦や近親相姦も、漫画なら表現の自由だからいいのよ」と子どもに教えることなど決してできません。子どもの尊厳を守る社会、子どもを守る社会、そうした社会の実現を目指す私たち(社)東京都小学校PTA協議会は、この条例改正案を支持し、その成立を期されるよう強く要望します。
文中に出てくる一人称について、「私たち」=「親」=「(社)東京都小学校PTA協議会」であることが、理解できました。
PTAは、親と教師からなります。「親として」を「親と教師として」としない理由はなにでしょう。ひょっとして、
都小Pに参加している先生たちは、賛同していないのでしょうか。
もちろん、PTAが実質的に保護者団体として扱われてきたことは承知の上で、違和感を表明しておきます。
また、ぼくが理解するPTAの性質に鑑みると、繰り返しになりますが、都小Pはこの条例改正案について
「人権(大人も子どもも)を守ること」と「自由を守る」ことと、「児童ポルノの規制」を、うまく成り立たせるバランスをぎりぎりの努力で求めていくべきだろうと思います。
なお、ここから先、私見をさらに強く前に出しますが、
「子どものため」は社会の中で最強のカードです。だからこそ、そのカードを切る時には慎重に。
子どもは次世代を担う大事な存在であり、また、自分の子どもの笑顔は他の子の笑顔と一緒にある、とぼくは確信しいてます。都小Pのみなさんもそう確信していると勝手に確信しています。
強靱な善意から発した条例案支持および緊急声明であることに敬意を抱きつつ、残念なことですが、児童ポルノを根絶するために、直接関係があるか分からない「実在の被害者はいないけれど、目に余る創作物」まで根絶したいという「管理への欲望」の先には、子どもたちが担うはずの「次世代」を破壊しかねくらいの副作用があるとぼくは思うのです。そういったことを、子どもたちの未来のために考えてあげるのも、やはりPTAの守備範囲ではないでしょうか(もっともぼく自身の立場としては、PTAの役目というよりも、一義的に保護者の役目、と言いたいことろですが)。
実際、条例の改正に慎重な立場の中には、「子どもを守るよりも自分を守ることが大事だ」というのではなく、
「実効あるかどうか分からない規制を推し進めるよりも、子どもたちのために民主主義の根幹を守っておきたい」と願っている人たちも確実にいる(それも、都小Pに会費を払っている人たちの中にも)のです。
最後に、都小Pがこのような条例改正案支持と緊急声明を、個々の子育てが行われている現場から遊離した形で行ったように見えることを非常に残念に思っていると表明しておきます。
条例案も継続審議になったことですし、都小Pはぜひ、加入しいてる各区市町村のP連との間で「条例案」について、話し合いを持って頂きたいと切に願います。
また、都内の保護者からの(加盟地区に限らず)パブリックコメントを求めることもぜひ行っていただければなおよいと思います。
とりあえず、気がついたのは、この程度。
また、思い当たることがありましたら、追記します。