最初に書いておくと、このエントリ、統計学の素養がある方とか、社会調査の経験がある方などにコメントいただきたい内容です。ぜひお目通しを。もちろん、そうじゃない人も。
で、本題。
自分の本でも、日Pの「子どもに見せたくない番組」について、非常に違和感を持っていると表明してきたわけですよ。
いったいどうやって調査しているのかも分からないし、結果もなんだか「もやもや」するし。
けれど、最近、日Pも情報公開に熱心になってきたようで、ウェブでいろいろな資料が公開されるようになりました。
とはいえ、なぜかFlashで読まねばならず、閲覧性はきわめて低いので、なかか通読する気にもなれず……とぐだぐだしていたところ、このブログにもよく来てくれる「PTA仲間」(というか「PTA問題仲間」)が、読みにくい資料をPDF化して読破し、いろいろなことを明らかにしてくれました。
もう感謝感激。興味のある方には、まず、とまてさんの
「日Pサイト☆ツアーへのお誘い―その1」を読んでいただくことにして、とりあえず、ぼくはとりわけ衝撃的だったことを書いておくこととします。今まで謎だった調査方法についてもある程度分かってその意味でもうれしいのだけれど、そんなのをすっ飛ばして驚いたことがあって……。
とりあえずみていただきたいのが、こちら(図表はとまてさんから許可いただいて、Jpeg化して使用)。
平成19年度の「子どもにみせたくない番組」の順位表。
「ロンドンハーツ」「めちゃ×2イケてる!」「クレヨンしんちゃん」がワースト3。
このうち「ロンドンハーツ」と「しんちゃん」は、ほぼ毎年ワースト3入りする常連中の常連。
だから、この順位自体は、驚くことじゃないのです。
でも、びっくりしたのは、ワースト3の「得票」。
1位から順に、10.5%、7.9%、7.7%。
ワーストというからには、それぞれ最低でも数十パーセントくらいの「見せたくない人」がいて発表しているのだと思っていたのですよ。
この程度の数値で、わざわざ、公表する必要なんてあるのでしょうか??
と思っていたら、「構成比」というよく分からない、項目があるじゃないですか。
10.5%、7.9%、7.7%、というのは、アンケート回答者の中の割合ではなくて、アンケートで「子どもに見せたくない番組がある」と答えた人が回答した番組の中での「構成比」なのでした。
ちなみに、「子どもに見せたくない番組がある」と答えたのはこの年の場合、29.4%。逆に「見せたくない番組はない」が65.9%で、無回答が4.7%
つまり、「特に見せたくない番組がない」人の方がずっと多い中で、あえて少数派の意見を汲み取り「構成比」という面妖な数字で順位をつけたのが、日Pの「みせたくない番組」というわけ。
とまてさんが、これを素直に有効回答数の中での何パーセントなのかに書き直してくれているので、それを参照すると、1位から順に3.5%、2.7%、2.6%ということに。
これってどういうことなのだろう。
ぼくは社会調査の経験はないけれど、素人の目で平らにみると、「だれもがイカンと思うような番組は今の日本にはない」と解釈するのがまっとうだと思うのですけど。
2%や3%の人が「ダメ」といっただけで、「ワースト」として発表され、全国紙に報道されてしまうのって、あんまりじゃないですか?
もっとも、この手の「気軽」なランキング調査って、よく分からないものが多いのも事実。
http://www.sanspo.com/geino/news/080923/gng0809231016000-n2.htm
↑こちらで、毎年恒例になっているananの「好きな男」ランキングの報道が読めるけれど、母集団の大きさは書いてあるものの、1位のキムタクの得票数は書いていないのですよ。
それこそ星の数ほどいる「スター」の中から、誰かを選んで投票するわけだから、こちらもそれほど大きな数になっておらず、せいぜい、割合でいえば10%を切る得票割合の中での1位争いなのかも知れないなあと想像したり。
このあたり、わたしたちの社会では、わりと「いい加減」に「気軽」に誰かがランキング発表して、それをメディアがわりと無批判に、細かいこと気にせずに報道しちゃうというのが当たり前なのかも。
さて、日Pの「みせたくない番組調査」については、どう考えるべきなんでしょうね。
統計学の素養がある方とか、社会調査の経験がある方などにぜひ、コメントいただきたいもの。
ちなみに、ぼくの意見としては、個別の番組の得票がこんなに小さいなら、もう「みせたくない番組」のランキング発表はやめて、むしろ、今の子どもとメディアとの関係の動向(たとえばテレビの影響力が減じて、携帯電話、ネットのコンテンツの影響力が増しているとか)調査に徹してくれた方がいいんじゃないかと思ったり。
だって「見せたくない番組の発表」って、ぼくの個人的な感じ方かもしれないけれど、PTAが持っている「杓子定規でヒステリックな団体」のイメージの根源にあるような気がするんですよね。
個別のPTAについてのイメージというよりも、我々の社会がざっくりと共有している、すっごく曖昧なイメージ、それこそ、「とんがり眼鏡・ザーマス言葉」みたいな。
それにつながっている。
それって、今の会員である多くの人にとって、「迷惑」なんじゃないかなあ。
というわけで、発表の仕方、変えた方がいいんじゃないかと思う次第。
見せたくな番組を個別に発表するのをやめるか(調査自体やめたっていいし)、あるいは正直に有効回答数の中での得票数と得票割合と一緒に発表した上で、報道するメディアの側にゆだねるか。
そんなふうにぐだぐだ考えるのでありました。