「ゲーム脳」を保護者会で紹介した先生に手紙を書いた。
参考までに掲載します。
もっとも、もう出してしまったので、今更ああしたほうがいい、こうしたほうがいい、というアイデアを頂いても、反映させられないのだけれど。
ちなみに、子供に聞いてみると、やはり、授業でも「ゲーム脳」についてふれて、「ゲームは一日15分くらいにしておいた方がいいですよー」と言っていたとのこと。
子供にとっては、やはりインパクトはあったみたい。
そういう意味で、嘘も方便的な効果はあるみたいです。
その時に、同時に失ってしまうものであるとか、派生する危険は、どちらかというとマクロなもので、個別の指導としては、むしろ効果的、というのは悩ましい現実ですね。
以下、お手紙本文……
お世話になっています。
先日の保護者会で配られた「ゲーム脳」についての資料がちょっと気になりまして、お便りさしあげます。わたしは、科学畑の仕事が多く、たまたま「ゲーム脳」についてかわされてきた議論を知っていますので、情報提供させていただきたいと考えました。
実は「ゲーム脳」は、森昭雄氏の『ゲーム脳の恐怖』(2002年)が出版されて以来、よくいって「議論の的」、悪くいうと「批判の的」になっている概念なのです。
森氏の著作の科学的な面での杜撰さを指摘する議論は本当にたくさんあるのですが、あまりに煩雑ですので、Wikipediaというウェブ上の百科事典の記述をプリントアウトし添付いたします。かなり冷静に問題を整理してくれています。
いずれにしても、森氏の議論はいまのところ科学的な根拠はなく、また、問題提起としても素朴なものだ、と言わざるを得ません。昨年から始まっている文科省の「1万人の乳児、10年間追跡調査」の結果が待たれるところですが、目下のところ、「ゲーム脳」をあたかも科学的な合意のある概念かのように紹介するのは危険だと思われます。
実際、ゲーム脳論者の中には、テレビゲームや、携帯ゲーム、携帯電話などの、情報機器を一切、「悪」と決めつけて、本来、目を向けるべきかもしれないほかの諸原因から目をそらすような論調をとる者もいます(少し違う例ですが、森氏自身、「自閉症の原因はゲームをさせた親の責任」などと論じて、ひんしゅくを買ったことがあるようです)。
また、今後、わたしたちの子供が、高度な情報社会の中で生きていくにあたって、ゲームを含む情報機器は、一面的に排除することはできないものです。良いところもあれば、悪いところもあるものとして、「付き合い方」を教えていかなければならないものと感じています。「ゲーム脳」の議論は、ゲームを一面的に「悪」と決めつけることによって、「付き合い方」を探ることも否定しかねません。
もちろん、「ゲームをしすぎてはいけない」というのは、小学生に対して、保護者ならきちんと指導しなければならないことです。先生はその意味も込めて、記事をご紹介してくださったのだと思います。そのことに、感謝しております。その上での、情報提供であるとご了解下さい。
ちなみに、この「ゲーム脳」についての資料配布は、どのあたりから来たものなのでしょうか。
先生がたまたま何かでごらんになった、ということですか?
あるいは学校単位でどなたかの問題提起があり、各クラスの保護者会で配られたのでしょうか。
実は、『ゲーム脳の恐怖』が出版された際、好意的に伝えるメディアもあり、教育の現場、あるいは保護者の中に、熱心な支持者もいたと記憶しています。その後、著作中のデータの不備や、論理の破綻、基本的な知識の欠如などが専門家から指摘され、最近ではあまり目にしなくなりました(もっとも、一部の論客、一部の扇情的メディアは今もこの概念を使っています)。
もしも、学校全体として紹介しよう、ということになったものでしたら、ぜひ、ほかの先生方にも、このお便りの内容をお伝えいただければさいわいです。
参考までに掲載します。
もっとも、もう出してしまったので、今更ああしたほうがいい、こうしたほうがいい、というアイデアを頂いても、反映させられないのだけれど。
ちなみに、子供に聞いてみると、やはり、授業でも「ゲーム脳」についてふれて、「ゲームは一日15分くらいにしておいた方がいいですよー」と言っていたとのこと。
子供にとっては、やはりインパクトはあったみたい。
そういう意味で、嘘も方便的な効果はあるみたいです。
その時に、同時に失ってしまうものであるとか、派生する危険は、どちらかというとマクロなもので、個別の指導としては、むしろ効果的、というのは悩ましい現実ですね。
以下、お手紙本文……
お世話になっています。
先日の保護者会で配られた「ゲーム脳」についての資料がちょっと気になりまして、お便りさしあげます。わたしは、科学畑の仕事が多く、たまたま「ゲーム脳」についてかわされてきた議論を知っていますので、情報提供させていただきたいと考えました。
実は「ゲーム脳」は、森昭雄氏の『ゲーム脳の恐怖』(2002年)が出版されて以来、よくいって「議論の的」、悪くいうと「批判の的」になっている概念なのです。
森氏の著作の科学的な面での杜撰さを指摘する議論は本当にたくさんあるのですが、あまりに煩雑ですので、Wikipediaというウェブ上の百科事典の記述をプリントアウトし添付いたします。かなり冷静に問題を整理してくれています。
いずれにしても、森氏の議論はいまのところ科学的な根拠はなく、また、問題提起としても素朴なものだ、と言わざるを得ません。昨年から始まっている文科省の「1万人の乳児、10年間追跡調査」の結果が待たれるところですが、目下のところ、「ゲーム脳」をあたかも科学的な合意のある概念かのように紹介するのは危険だと思われます。
実際、ゲーム脳論者の中には、テレビゲームや、携帯ゲーム、携帯電話などの、情報機器を一切、「悪」と決めつけて、本来、目を向けるべきかもしれないほかの諸原因から目をそらすような論調をとる者もいます(少し違う例ですが、森氏自身、「自閉症の原因はゲームをさせた親の責任」などと論じて、ひんしゅくを買ったことがあるようです)。
また、今後、わたしたちの子供が、高度な情報社会の中で生きていくにあたって、ゲームを含む情報機器は、一面的に排除することはできないものです。良いところもあれば、悪いところもあるものとして、「付き合い方」を教えていかなければならないものと感じています。「ゲーム脳」の議論は、ゲームを一面的に「悪」と決めつけることによって、「付き合い方」を探ることも否定しかねません。
もちろん、「ゲームをしすぎてはいけない」というのは、小学生に対して、保護者ならきちんと指導しなければならないことです。先生はその意味も込めて、記事をご紹介してくださったのだと思います。そのことに、感謝しております。その上での、情報提供であるとご了解下さい。
ちなみに、この「ゲーム脳」についての資料配布は、どのあたりから来たものなのでしょうか。
先生がたまたま何かでごらんになった、ということですか?
あるいは学校単位でどなたかの問題提起があり、各クラスの保護者会で配られたのでしょうか。
実は、『ゲーム脳の恐怖』が出版された際、好意的に伝えるメディアもあり、教育の現場、あるいは保護者の中に、熱心な支持者もいたと記憶しています。その後、著作中のデータの不備や、論理の破綻、基本的な知識の欠如などが専門家から指摘され、最近ではあまり目にしなくなりました(もっとも、一部の論客、一部の扇情的メディアは今もこの概念を使っています)。
もしも、学校全体として紹介しよう、ということになったものでしたら、ぜひ、ほかの先生方にも、このお便りの内容をお伝えいただければさいわいです。