眼球はどぶの中に捨てた
眼鏡の奥のくぼみには光も射さない
ほかに方法もなくただ歩いて行く
地球は苔のごとき隠花植物に掩われ
ひとつかみの安住の地を見つけるには
ありあわせの人生の
大半を投げ出してもまだ足りないのだ
花のような若さはとうに使いはたし
油っこい悲哀が
僅かに気管の底にひっかかっているきりだ
空は空にあり
草には草の生える場所があると聞くが
彼を指名する安住の地などは
最初からありようもなかったのだ
おそらく彼の臓腑の内部には
はかりきれない苦汁がたまってしまったのだろう
魂はどこへ置いて来たのだ
彼の顔をして身体だけが先を行く
いつからあの尨大な天体の運行を真似ているのか
蹌踉と地球の崖っぷちを前へ前へと歩いて行く
____牟礼慶子 『満身創痍』____
楽しいことに心が向かわず、憂いの日々が続いている。
あの日の丸尾さんの木彫展も、
一旦は行くのをやめようと思ったが・・・・
心が沈んだままに、どうにか車は桐生へ向かった。
そこは、丸尾康弘さんのいつもの静謐な世界。
心が、少しだけ安らぐ気がした。
そして、大好きな『巨人』の横にあったのは『レクイエム』
それは、深い青に隠れてひっそりと。
あの熊本地震のあとの作品だそうだ。
何千回もの祈りは届かず、
文字にするのも憚られ、言葉にするのも恐ろしい、
とうとうあれが鎌首をもたげる。
絶望____
吐き出すことのできない苦汁を抱え込んだまま、
それでもなお、キミは生きていかなければならないのか。
戻っては来ない魂に翻弄されながら、
それでもなお、キミは歩いて行かなければならないのか。
光の射さない中を・・・・
ワタシは、成すすべもなく、
払っても払っても湧き上がる不安と苦しさと、そして、諦めの中で、
今、この『レクイエム』像を虚ろに見ている。
救いはどこにあるのか。
止むことを忘れた深いため息の中で、
それでもなお、ワタシは祈ることしかないのか。。
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