草の葉

高山村にある、緑に包まれたギャラリー

満身創痍

2016-10-09 17:47:52 | 雑感
        



        眼球はどぶの中に捨てた
        眼鏡の奥のくぼみには光も射さない
        ほかに方法もなくただ歩いて行く

        地球は苔のごとき隠花植物に掩われ
        ひとつかみの安住の地を見つけるには
        ありあわせの人生の
        大半を投げ出してもまだ足りないのだ
        花のような若さはとうに使いはたし
        油っこい悲哀が
        僅かに気管の底にひっかかっているきりだ
        空は空にあり
        草には草の生える場所があると聞くが
        彼を指名する安住の地などは
        最初からありようもなかったのだ
        おそらく彼の臓腑の内部には
        はかりきれない苦汁がたまってしまったのだろう

        魂はどこへ置いて来たのだ
        彼の顔をして身体だけが先を行く
        いつからあの尨大な天体の運行を真似ているのか
        蹌踉と地球の崖っぷちを前へ前へと歩いて行く

              ____牟礼慶子 『満身創痍』____




楽しいことに心が向かわず、憂いの日々が続いている。

あの日の丸尾さんの木彫展も、
一旦は行くのをやめようと思ったが・・・・
心が沈んだままに、どうにか車は桐生へ向かった。

そこは、丸尾康弘さんのいつもの静謐な世界。
心が、少しだけ安らぐ気がした。
そして、大好きな『巨人』の横にあったのは『レクイエム』
それは、深い青に隠れてひっそりと。

あの熊本地震のあとの作品だそうだ。





何千回もの祈りは届かず、
文字にするのも憚られ、言葉にするのも恐ろしい、
とうとうあれが鎌首をもたげる。
絶望____

吐き出すことのできない苦汁を抱え込んだまま、
それでもなお、キミは生きていかなければならないのか。
戻っては来ない魂に翻弄されながら、
それでもなお、キミは歩いて行かなければならないのか。
光の射さない中を・・・・



     ワタシは、成すすべもなく、
     払っても払っても湧き上がる不安と苦しさと、そして、諦めの中で、
     今、この『レクイエム』像を虚ろに見ている。
     救いはどこにあるのか。

     止むことを忘れた深いため息の中で、
     それでもなお、ワタシは祈ることしかないのか。。




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