リンカーン見ました。
最初に思ったことは、
①スピルバーグは、歳をとった
②この映画は、興業的には大きな成功はしないであろう
ということだ。
人間は、歳をとると、目先の成功より、本当に大切なことにこだわるようになる。
今までのスピルバーグの映画は、社会的ムーブメントまで巻き起こしてきた。
それほどのヒットをこの映画がするとは思えない。
本当に大切なことは、簡単には世の中には広がらないからだ。
もう私が何を言いたいのかお分かりであろう。
この映画が、スピルバーグの最高傑作なのかはともかくとして、私が最も感動した彼の作品だということだ。
戦争というのは、
「ある目的のために人を殺すことが正当化されるもの」である。
奴隷解放のための南北戦争であれば、戦争の終結は、奴隷解放とセットでなければならない。
そうでなければ、その戦争は、単なる人殺しと何ら変わらなくなってしまうからだ。
これがリンカーンの苦悩の本質である。
しかし、経済的に見れば、南部にとっても北部にとっても得になることは何もない。
当時の奴隷の代金が、600ドルとか、兄弟の子供二人で700ドルとかと映画で出てきたが、今でいえば、車1台分くらいであろうか?
いずれにしても奴隷を購入した南部の農民にとっては、奴隷解放は重要な農業用の資産を失うことになるのである。
また、北部にとっても安い賃金の黒人が白人の仕事を奪い取る構図ができてしまい、経済的な損失を白人がこうむるのである。
その意味で、奴隷解放は、単なる人道的意味でしかない。
経済的なメリットを捨てて、人を動かし、人道的立場を本当に人間は取れるのか?
これを実行しきったリンカーンは、それゆえ尊敬されるのであろう。
私は、この映画は、スピルバーグからオバマへのメッセージではないのかと思う。
オバマが、リンカーンが使用した聖書を使って宣誓したことは有名である。
しかし、行動が全くともなっていない。
リンカーンは、経済以上に大切なものを優先させた。
しかし、オバマは、いまだ経済優先で、最も大切な「財政再建」は先送りのままである。
今のアメリカにとって(日本にとってもまったく同じであが)、経済以上に大切なことを優先すべきというメッセージではないかという気がしてならない。