平成23年度税制改正大綱では、法人税等の5%減税が定められました。日本の法人税等の実効税率は、アジア諸国と比較し高く、法人税減税は日本企業の国際競争力を増す上で重要なことです。
しかし、これにより減少する財源をどのように補うかが問題となりました。消費税改正は一切行わず、相続税最高税率を50%から55%に引き上げるなど、高所得者や富裕層に対する課税強化がなされました。
民主党は、雇用促進・格差是正を金科玉条の如く考え、法人税減税によるコスト削減により、国内投資を促し、内需拡大・雇用促進を図っています。高所得者・富裕層への課税強化は、格差是正を促すものです。果たして、有効策と言えるでしょうか?
内需減少は、長期的トレンドである人口減とグローバリゼーションに伴うデフレによるものです。このトレンドは、簡単には変化しないため、内需拡大政策は、ことごとく失敗に終わります。若年層の失業率の増加もグローバリゼーションの影響によるものです。世界の労働市場は、一つになろうとしています。日本人は世界の人々との競争をしなければなりません。同じ能力・技術を持つのであれば、安い賃金の人が選ばれます。高い賃金を得るためには、相応の能力・技術が必要となります。
多くの大企業が海外進出を加速させる中で、採用もグローバル化し、同じ新卒であれば、英語力・ネゴシエーション能力が高く、かつ、賃金が安い新興国のアジア人が雇用されています。
日本の若年層の高い失業率は、労働市場で競争に負けた結果なのです。失業率が増加すれば、労働供給過多となり、賃金は下落します。益々、日本はデフレ化しますが、賃金の下落は、企業にとって国際競争力の増加を意味します。にもかかわらず、民主党は、賃金下落を避けるため、最低賃金の引上げをしようとしています。
戦争・飢饉・疫病ではなく、長期的トレンドでの人口減少は、人類にとって初めての経験です。初めて我々が経験することを、伝統的政治システムでは対処不可能なことなのかもしれません。伝統的政治システムとは、「デモクラシー」です。民主党は、ポピュラリズム(大衆迎合主義)に陥り、抜本的改革が出来ません。税収の2倍を上回る歳出を予算編成し、赤字国債でその穴埋めをし続けています。消費税1%アップで二兆円の税収増と言われていますが、プライマリーバランスを均衡させるためには、現状の5%の消費税を25%に引き上げる必要があります。もちろん、これを行えば国民の実質賃金が大きく下がるため、経済に与える影響は測り知れません。
結論として、いま直ぐに日本が行うべきことは、「小さな政府」を作ることです。このためには、公務員の削減・民営化と年金の削減が不可欠です。大きな痛みですが、この痛みを国民が甘受できなければ、日本の国家破綻を免れることは不可能です。
果たして、政治家にこの判断が出来るでしょうか?ギリシャ・アイルランドに続き、ポルトガル・スペインも極度の財政難に陥っています。なぜ、このようなことが起きたのか真剣に考えなければいけません。これは、対岸の火事ではないのです。私は既に「デモクラシーは死んだ」と思っています。大衆迎合し、わずかな消費税のアップですら出来ない。民主党の存続ではなく、国を存続させるべきです。
今後、日本企業は、自らの存続のために益々海外への投資を増やすことでしょう。多くの人が、日本が破綻すると考えた時、何が起きるのか?それは、加速度的な資金の海外流出です。戦前の知識人は、日本の敗北を確信し、資産を海外に移した人も少なからずいました。国家が破綻すれば、急激な円安となります。その後に海外投資することは不可能となります。海外投資は、円高の今しかありません。そして多くの資金が海外流出した時、これが国家破綻の引き金となります。
日本の国債の95%は、日本人により購入されています。資金流出は、国債の引き受け手がいなくなることを意味します。その結果、日銀が公開市場買付によって、「実質的」な国債引受を行い、貨幣超過供給・インフレーション・円安・信用不安・国債の下落と連鎖し、国家破綻することになります。
日本の現状は、70年前の太平洋戦争に突入する時期に似ています。数年後には、大きく国が荒れるかも知れませんが、日本人の勤勉さによって必ず復活してくれるものと願っています。
久野康成