「経営者は、つらいよ」という経営者によく出会うことがあります。
果たして、本当のところは・・・
おそらく、落語でいう「饅頭怖い」という意味なのでしょう。本当は、こんなに楽しいとみんなに言ってしまうと、みんなが経営者になりたがってしまう。だから、経営者同士で、口裏を合わせて「経営者はつらいのだ」と言っているのです。
もっとも、本当につらいと思う経営者がいるとすれば、経営者に向いていないだけです。これほど楽しい職業は、世の中に存在しません。
私は農家の次男として生まれました。愚か者という意味で、「たわけ」という言葉があります。「たわけ」とは、「田分け」が語源です。親が子供を可愛がるあまり、長男以外の子供に「田んぼを分ける」、つまり、財産分与を行うと、兄弟で分け合った少ない土地では、誰も農家として生きていけなくなる。長男以外に田を分けることは、愚か者がすることだという意味です。
農家では、家長である長男以外に財産分与することは行ってはならないという掟があるのです。
私は次男として生まれたので、生まれもって親に頼らず、「自立」することが要求されたのです。9学年上の兄は、田舎の町役場に勤め、公務員との兼業農家となりました。
そして、父は、私に対して、「お前は農協だ!」と言いました。はっきり言って、かなり焦りましたが、田舎の農家にとって、町役場や農協に勤めることは、農家の中でもエリート・コースなのです。
しかし、次男である私は、何を行ってもよい自由が与えられていることに気づいたのです。もし、長男であれば、全ての財産をもらえる代わりに家に縛られるのです。そして、私は公認会計士になりました。
親からは、「お前は、農家の息子なのだから、絶対に商売には向かない」と散々いわれてきました。私自身も商売に向く性格ではないと思っていました。
しかし、ADHDのため、思いつくと直ぐに監査法人を辞め、個人事務所をオープンしたのです。自分が経営者に向くかどうかは考えていませんでした。しかし、私が経営者を行った方がより顧客に対してもっと良いサービスができると信じていたのです。
独立して最高の気分になれたのは、上司がいなくなったことです。誰のお伺いも立てることなく、自由に行動できるようになりました。
まさに自由を手に入れたのです。
「平社員と社長は、誰にでもなれる」といいます。社長になるにためには、昇進は必要ないからです。自分で会社を興すだけでなれるのです。むしろ、上司に評価されなくてはならないので課長や部長になる方が難しいのです。
経営者(起業家)という生き方は、本当にすばらしいものです。
生きている意味をこれほど実感できる職業は、他に存在しません。
私は、一人でも多くの起業家が日本に現れ、社会を動かしていって欲しいと願っています。