ライブドアも楽天もIT企業の成功事例としてもてはやされた会社である。
私は、この2社に非常に大きな成功した共通点があると思う。
それは、『技術へのこだわりのなさ』である。
楽天の三木谷氏は、ご存知の通り、元日本興業銀行の行員である。このような経歴に人がIT企業を興したこと自体が驚きである。
IT企業といえば、それまでは、技術屋社長という概念が当たり前であった。
また、三木谷氏が行ったインターネットを使った『仮想モール』とうコンセプトは、それまでにも数多くの先駆者がいた。しかし、その多くの先駆者は、最新技術であった3Dを使ったようなものであり、インフラが整っていなかったり、開発コストに莫大な費用がかかったりして、事業としてはことごとく失敗していた。
しかし、三木谷氏は、もともと技術屋ではないので技術に対するこだわりはない。むしろ、事業やマーケティングに対してのこだわりを持ち成功したのである。
ライブドアの堀江氏は、もともと、技術屋であったが、途中で技術を捨て、収益にこだわったところが常人ではない。一見、技術屋に見えたのだが、実は、最初から利益のみにこだわっていたのかもしれない。
いずれにしても、両者にある成功パターンは、一般的にIT企業の経営者ではない。
では、一般的なIT企業の経営者はというと・・・
もちろん技術へのこだわりを持っている。
私の知人で、IT企業の経営者をしている社長は、ライブドアを以前から技術がないといって批判していた。
元、顧客であったIT企業家は、『インターネット総研』が株式公開し、1株6千万円になっていた頃、痛烈にインターネット総研を批判していた。「あそこは、ルーターの技術があるだけだ。ただそれだけである。あそこに技術がないのは業界の常識である。」というようなことを言っていた。
IT企業の経営者の多くは、儲かっているIT企業に対して「技術がない」といって批判する傾向にある。
最初の私の知人は、数人で受託開発を行っている、いわば零細IT企業である。後者の元顧客は、身売りをし跡形もなくなっている。
IT企業の多くの経営者は、「技術力」を売りにしようとする。しかし、本当に技術力で儲かっているIT企業が日本に存在するだろうか?
儲かっているIT企業は、「技術力」ではなく、「マーケティング能力」なのである。
技術は一瞬に陳腐化するのである。
10年前、多くのIT企業は、圧縮技術にこだわっていた、インフラが整っていなかったためである。しかし、光ファイバーが普及すれば、そんな技術は一瞬で陳腐化してしまう。
かつては、パソコンもネットワーク設定が大変であった。しかし、今は、ケーブルを差し込むだけである。
技術革新とは、技術屋をいらなくするためにある。
つまり、SEは、自らの開発によって自らの職を失いことすらあるのである。
技術で勝ち続けることは、至難の業である。しかし、マーケティングで勝ち続けるのは、技術で勝ち続けるよりはるかに楽である。
我々は、何に価値を置き経営すべきか?
誤ったこだわりが、誤った経営をしてしまうのである。