熊五郎と12名の仲間達
「これだけ頑張れたんだから自分に自信を持って大丈夫だ。辛いことがあったらこの合宿を思い出して欲しい。それと、これだけの環境を整えて下さったホテルの社長さんを初め、健康管理に細心の注意を払って下さった厨房の皆さんがいたからこそ頑張れた事を十分理解して欲しい。」
参加者達は皆、疲労の色を見せながらも、やり通したという自信にあふれた顔をしている。お世話になった厨房のご夫婦とホテルの社長にお礼を述べ帰路に就いた。インターチェンジまでの五分足らずで皆、熟睡に入っている。運転する熊五郎も辛い。いくら最終日は他の講師陣より早く寝かせてもらったと言っても十二時を過ぎている。事故を起こさず参加者達を無事送り届けなければならない。沼田を過ぎ、伊香保までの間、最も眠くなる危険地帯へとバスは突入した。その時である。すぐ後ろの席で寝ていた田島が突然、熊五郎に話しかけてきた。
「先生。合宿って高校生になったら参加できないの?」
「出来ないことないよ。田島さん、どうして来たいの。こんな辛い合宿に二度と来たく無いんじゃない。」
「違うの先生。この合宿で解ったの。今までの勉強法、少し間違ってた。」
「ほう、それはいい事じゃない。何が違っていたの。」
「あのね先生。今まで解らないことは学校の先生や塾の先生に聞けばいいと思っていたけど、自分で調べるって本当に大切なんだって解ったの。だって、苦労して調べたこと忘れないもん。だから、高校生になっても参加していい。」
「もちろん。来年待ってるよ。だけどね、高校生になったら夜間講習、少しだけ手伝ってもらうからね。教えることは自分にとって最も学力がつくんだから。」
田島は、県北の進学女子校をねらっていた。十分合格するレベルである。このまま頑張ってくれれば結果は自ずとついてくる。夢ではなかった。思わぬ会話で熊五郎は眠気に襲われることもなく学習室に戻ることが出来た。もちろん、横山には、徴収した一万円に数倍の利息を付けて返したことはいうまでもない。168
「これだけ頑張れたんだから自分に自信を持って大丈夫だ。辛いことがあったらこの合宿を思い出して欲しい。それと、これだけの環境を整えて下さったホテルの社長さんを初め、健康管理に細心の注意を払って下さった厨房の皆さんがいたからこそ頑張れた事を十分理解して欲しい。」
参加者達は皆、疲労の色を見せながらも、やり通したという自信にあふれた顔をしている。お世話になった厨房のご夫婦とホテルの社長にお礼を述べ帰路に就いた。インターチェンジまでの五分足らずで皆、熟睡に入っている。運転する熊五郎も辛い。いくら最終日は他の講師陣より早く寝かせてもらったと言っても十二時を過ぎている。事故を起こさず参加者達を無事送り届けなければならない。沼田を過ぎ、伊香保までの間、最も眠くなる危険地帯へとバスは突入した。その時である。すぐ後ろの席で寝ていた田島が突然、熊五郎に話しかけてきた。
「先生。合宿って高校生になったら参加できないの?」
「出来ないことないよ。田島さん、どうして来たいの。こんな辛い合宿に二度と来たく無いんじゃない。」
「違うの先生。この合宿で解ったの。今までの勉強法、少し間違ってた。」
「ほう、それはいい事じゃない。何が違っていたの。」
「あのね先生。今まで解らないことは学校の先生や塾の先生に聞けばいいと思っていたけど、自分で調べるって本当に大切なんだって解ったの。だって、苦労して調べたこと忘れないもん。だから、高校生になっても参加していい。」
「もちろん。来年待ってるよ。だけどね、高校生になったら夜間講習、少しだけ手伝ってもらうからね。教えることは自分にとって最も学力がつくんだから。」
田島は、県北の進学女子校をねらっていた。十分合格するレベルである。このまま頑張ってくれれば結果は自ずとついてくる。夢ではなかった。思わぬ会話で熊五郎は眠気に襲われることもなく学習室に戻ることが出来た。もちろん、横山には、徴収した一万円に数倍の利息を付けて返したことはいうまでもない。168