熊五郎と12名の仲間達
二日目、七時半の起床時間にたたき起こされた参加者達のほとんどが深夜四時頃まで課題と戦っていた。全員の寝不足は明らかである。ロビーのソファーにうつろな目で腰掛けている。
「おはよう!」
熊五郎の声がロビーに響いた。しかし、誰一人として反応がない。皆、ソファーにもたれかかったまま、目はうつろで焦点が定まっていない。そして、無言のままで食堂に入り食事を取り始めた。やがて午前講習が始まった。全員が講習室に集合すると熊五郎は参加者達に雷を落とした。
「みんな良く聞いて欲しい。合宿の目的をみんなには話しておいたと思う。合宿で学力を伸ばすのではなく、本番を控えた時、如何に自分に勝つことが出来るか、それが合否につながる。合宿の目的は『己に勝つ』事だったよな。みんなはもう負けている。今朝のことを思い出してごらん。俺が挨拶しても誰一人挨拶を返してくれなかったろう。寝不足は解っている。辛いことも解っている。だからって自分が辛いと言う理由だけで相手を無視していいのか。俺は非常に残念だった。今後、同じ事があったらすぐ電車で帰ってもらう。ただし、自費で!それから講習費も一切返さない。自分に勝ってこそ合宿に参加した意味がある。もう続けたくない奴がいたら遠慮無く申し出てくれ。この合宿はそんなに甘いもんじゃない。解ったな。」
思いもかけない説教に驚いたのだろう。講習室は静まりかえっている。娘も同じようなことで追い打ちをかける。市村も横井も言葉は優しいが同じようなことを生徒に語りかけた。
「それじゃ午前講習を始めるからな。」
熊五郎の気合いに皆、目の色が変わった。162
二日目、七時半の起床時間にたたき起こされた参加者達のほとんどが深夜四時頃まで課題と戦っていた。全員の寝不足は明らかである。ロビーのソファーにうつろな目で腰掛けている。
「おはよう!」
熊五郎の声がロビーに響いた。しかし、誰一人として反応がない。皆、ソファーにもたれかかったまま、目はうつろで焦点が定まっていない。そして、無言のままで食堂に入り食事を取り始めた。やがて午前講習が始まった。全員が講習室に集合すると熊五郎は参加者達に雷を落とした。
「みんな良く聞いて欲しい。合宿の目的をみんなには話しておいたと思う。合宿で学力を伸ばすのではなく、本番を控えた時、如何に自分に勝つことが出来るか、それが合否につながる。合宿の目的は『己に勝つ』事だったよな。みんなはもう負けている。今朝のことを思い出してごらん。俺が挨拶しても誰一人挨拶を返してくれなかったろう。寝不足は解っている。辛いことも解っている。だからって自分が辛いと言う理由だけで相手を無視していいのか。俺は非常に残念だった。今後、同じ事があったらすぐ電車で帰ってもらう。ただし、自費で!それから講習費も一切返さない。自分に勝ってこそ合宿に参加した意味がある。もう続けたくない奴がいたら遠慮無く申し出てくれ。この合宿はそんなに甘いもんじゃない。解ったな。」
思いもかけない説教に驚いたのだろう。講習室は静まりかえっている。娘も同じようなことで追い打ちをかける。市村も横井も言葉は優しいが同じようなことを生徒に語りかけた。
「それじゃ午前講習を始めるからな。」
熊五郎の気合いに皆、目の色が変わった。162