熊五郎と12名の仲間達
さらに後輩の横山がアルバイトをしている気安さもあったのであろう。市村から横山へ連絡が入った。
「塾長、市村さんが通いの講習にも乱入しても良いか連絡あったんですけどどうしますか。」
と嬉しい知らせである。
「尚さん(学習室のスタッフに加わって以来、『尚』から『尚さん』に格上げされていた。)が良ければかまわないんじゃない。」
「わっかりました。早速連絡しときます。」
「その代わり、夕食つけるけど合宿以外の乱入した分のバイト料は出ないって言っといてな。」
夏期講習が始まると市村は愛用の自転車に乗ってやってきた。
「市村君。悪いな。」
「いいっすよ。どうせ暇だから。」
「講習、尚さんと話し合ってよろしくやってくれ。」
「解りました。」
その日から市村のバイト料なしの乱入講師が毎日出没することになった。こうして前年同様、夏期講習の重要なスタッフの一員として、また合宿講習の伝統を受け継ぐ一人の指導者としての地位を確立したのであった。一日五時間、十二日間の講習は順調に終わった。休みを二日取った後、いよいよ越後湯沢で実施される合宿は現地まで高速を利用する。タイヤ事件から八ヶ月が過ぎ、事故のトラウマから多少逃れられたと言っても、やはり後遺症が残っている。それでもどうにか時速一〇〇キロメートルぐらいまでは出せるようになっていた。しかし、ハンドルを握る手には汗がにじんでいる。十二名の仲間達は環境の違う場所で行えることや宿泊が伴うことでバスの中は賑やかである。
「先生。飯、うめえかな。」
「もちろん。新潟はコシヒカリの産地だぞ。たらふく美味い飯食えるぞ。」
「おい、猪野沢。夜、何して遊ぶ。」
「馬鹿言え。遊んでる暇なんかねえぞ。きっと。」
「越智君。遊びに来ているみたいね。」
「先生。いつまで夜間講習やるの。時間制限あるんでしょ。」
「残念でした。時間制限はありません。毎年必ず徹夜組がいるから森下さんも仲間入りすると思うよ。」
これから始まる地獄の特訓をまったく感じていないようである。十一時半、いよいよ目的地の越後湯沢に着いた。出迎えに出てこられたホテルの社長に挨拶した後、部屋割りの発表である。156
さらに後輩の横山がアルバイトをしている気安さもあったのであろう。市村から横山へ連絡が入った。
「塾長、市村さんが通いの講習にも乱入しても良いか連絡あったんですけどどうしますか。」
と嬉しい知らせである。
「尚さん(学習室のスタッフに加わって以来、『尚』から『尚さん』に格上げされていた。)が良ければかまわないんじゃない。」
「わっかりました。早速連絡しときます。」
「その代わり、夕食つけるけど合宿以外の乱入した分のバイト料は出ないって言っといてな。」
夏期講習が始まると市村は愛用の自転車に乗ってやってきた。
「市村君。悪いな。」
「いいっすよ。どうせ暇だから。」
「講習、尚さんと話し合ってよろしくやってくれ。」
「解りました。」
その日から市村のバイト料なしの乱入講師が毎日出没することになった。こうして前年同様、夏期講習の重要なスタッフの一員として、また合宿講習の伝統を受け継ぐ一人の指導者としての地位を確立したのであった。一日五時間、十二日間の講習は順調に終わった。休みを二日取った後、いよいよ越後湯沢で実施される合宿は現地まで高速を利用する。タイヤ事件から八ヶ月が過ぎ、事故のトラウマから多少逃れられたと言っても、やはり後遺症が残っている。それでもどうにか時速一〇〇キロメートルぐらいまでは出せるようになっていた。しかし、ハンドルを握る手には汗がにじんでいる。十二名の仲間達は環境の違う場所で行えることや宿泊が伴うことでバスの中は賑やかである。
「先生。飯、うめえかな。」
「もちろん。新潟はコシヒカリの産地だぞ。たらふく美味い飯食えるぞ。」
「おい、猪野沢。夜、何して遊ぶ。」
「馬鹿言え。遊んでる暇なんかねえぞ。きっと。」
「越智君。遊びに来ているみたいね。」
「先生。いつまで夜間講習やるの。時間制限あるんでしょ。」
「残念でした。時間制限はありません。毎年必ず徹夜組がいるから森下さんも仲間入りすると思うよ。」
これから始まる地獄の特訓をまったく感じていないようである。十一時半、いよいよ目的地の越後湯沢に着いた。出迎えに出てこられたホテルの社長に挨拶した後、部屋割りの発表である。156