熊五郎と12名の仲間達
熊五郎はその姿に思わず笑いがこみ上げてきた。山上は課題が終わって添削のために指導室に来る途中、添削待ちの列に加わったところで力尽き、ノートと鉛筆を持ったままうつ伏せ状態になって寝ていたのである。
「おーい。起きろ。こんなとこじゃ風邪引くぞ。もういいからベットで寝なさい。」
熊五郎は山上が限界に来たことを悟って優しく声を掛けた。
「あれ、指導部屋に行こうとしてたのにこんなとこで寝ちゃった。済みません。」
「山上君。もういいよ。これ以上やったら倒れちゃうから。自分の部屋に行って寝なさい。」
だが、山上は目をこすりこすり言った。
「この課題終わってから寝ます。」
そして彼は一時間もかけて限界と戦いながら課題をやり通したのである。五日目になった。講師陣も相当疲れている。だが、気持ちを入れ替えて臨んでいる生徒達に弱みを見せられない。最後の夜間講習が始まった。この日だけは熊五郎は別格である。なぜなら生徒達を無事に送る仕事が待っている。十二時には指導からはずれ翌朝の運転に備えた。後は娘を中心に市村と横井の頑張りに期待した。翌朝目覚めると既にロビーに全員集まっている。
「おはよう。」
熊五郎が語りかけると全員から
「おはようございます。」
と元気な返事が返ってきた。
「みんな元気じゃないか。昨日は眠れたの。」
「先生。みんな徹夜でした。」
代表して田島が答えた。食事の時も初回とはうってかわって皆食べ終わった食器を
「ごちそうさまでした。」
と大きな声で厨房へ返し、自室に戻っていった。雷が落とされた後、明らかに参加者達の態度に変化が見られたのである。ホテルの従業員にも、厨房で働く方々にも実に良く大きな声で挨拶をするようになっていたのである。帰り支度を整え、十時にロビーに集合した。
「みんなよく頑張った。これだけ厳しい勉強をしたことはなかったろう。」
皆、頷いている。167
熊五郎はその姿に思わず笑いがこみ上げてきた。山上は課題が終わって添削のために指導室に来る途中、添削待ちの列に加わったところで力尽き、ノートと鉛筆を持ったままうつ伏せ状態になって寝ていたのである。
「おーい。起きろ。こんなとこじゃ風邪引くぞ。もういいからベットで寝なさい。」
熊五郎は山上が限界に来たことを悟って優しく声を掛けた。
「あれ、指導部屋に行こうとしてたのにこんなとこで寝ちゃった。済みません。」
「山上君。もういいよ。これ以上やったら倒れちゃうから。自分の部屋に行って寝なさい。」
だが、山上は目をこすりこすり言った。
「この課題終わってから寝ます。」
そして彼は一時間もかけて限界と戦いながら課題をやり通したのである。五日目になった。講師陣も相当疲れている。だが、気持ちを入れ替えて臨んでいる生徒達に弱みを見せられない。最後の夜間講習が始まった。この日だけは熊五郎は別格である。なぜなら生徒達を無事に送る仕事が待っている。十二時には指導からはずれ翌朝の運転に備えた。後は娘を中心に市村と横井の頑張りに期待した。翌朝目覚めると既にロビーに全員集まっている。
「おはよう。」
熊五郎が語りかけると全員から
「おはようございます。」
と元気な返事が返ってきた。
「みんな元気じゃないか。昨日は眠れたの。」
「先生。みんな徹夜でした。」
代表して田島が答えた。食事の時も初回とはうってかわって皆食べ終わった食器を
「ごちそうさまでした。」
と大きな声で厨房へ返し、自室に戻っていった。雷が落とされた後、明らかに参加者達の態度に変化が見られたのである。ホテルの従業員にも、厨房で働く方々にも実に良く大きな声で挨拶をするようになっていたのである。帰り支度を整え、十時にロビーに集合した。
「みんなよく頑張った。これだけ厳しい勉強をしたことはなかったろう。」
皆、頷いている。167