8月 22日

2019-08-21 14:19:15 | Weblog
              棉・棉摘・棉吹く・棉取・棉の実




     細々暮らす人が作りしか畑の棉         細見綾子


     棉の実が弾け三河路晴れつづく         梅田 葵


     綿弓を打ちたる宮司綿まみれ          牧野一古


     棉の実の一つ弾けし白さかな          武山愛子


     棉摘むや窯の煙突見ゆる畑           長江克江


     束ね干す棉に陽の差す庫裏の軒         松平恭代


     棉吹くや一際あをき朝の空           加藤ゆうや


     棉打ちの繭まで綿の飛び散りぬ         安藤幸子


     綿の実のはじけて峡の日和かな         日野圭子




          



     棉の実を摘みゐてうたふこともなし        加藤楸邨


     旅にして棉笑む風の北よりす           臼田亞浪


     棉吹いて空の微塵の見ゆるかな          後藤比奈夫


     棉摘めり四辺の棉の静かなる           森田 峠


     山風に棉ふき出でてましろけれ          太田鴻村
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8月 21日

2019-08-20 14:07:53 | Weblog
              狗尾草・えのころ草・猫じゃらし




     渡し舟待つや岸辺に猫じやらし           栗田やすし


     空き地の子ゑのころ草をまぶしめり         細見綾子


     晴れ渡る登呂に赤毛のねこじゃらし         矢野愛乃


     猫じやらし手をつなぐ子のよく跳ぬる        内田陽子


     空濠はゑのころ草の野となれり           国枝洋子


     夕暮の風と遊べり猫じやらし            太田滋子


     廃校の花壇一面猫じやらし             坂本操子


     雨過ぎし狗尾草に低き風              中山ユキ


     猫じゃらし風吹くたびに触れ合へり         奥山ひろ子


     遺されし徳利に挿しぬ猫じやらし          安藤幸子


     やちむんの里背丈越すねこじやらし         只腰和子



          



     猫じゃらし触れてけもののごと熱し         中村草田男


     捨自転車狗尾草に沈みをり             舘岡沙緻


     ゑのころ草抜きざま湧くよ女知恵          手塚美佐


     草刈機ゑのころ草を噛みにけり           辻 桃子


     狗尾草いたづら好きの童女かな           浦田 宏
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8月 20日

2019-08-19 14:19:45 | Weblog
             榠樝の実・かりん・花梨・唐梨・きぼけ




     くわりんの実教材につき盗るべからず       沢木欣一


     大くわりん風の葉ずれの傷のこる         細見綾子


     榠樝の実海を隔てし子に送る           栗田やすし


     歪みなきものは鬼つ子榠樝の実          伊藤旅遊


     手びねりの茶碗いびつやくわりんの実       長崎眞由美


     たわわなる榠樝の下に無縁仏           山本光江    


     くわりんの実捥ぎし指先ほの甘し         澤田正子   


     朝靄にくわりんの落ちし音響く          山下喜久


     裏山に日の当たりをり榠樝の実          高橋 毅   


     理科室の窓辺に熟るるくわりんの実        本多俊枝



          



     青かりん大きな滝に供へけり            岸本尚毅


     奥伊予や瀬音に太る花梨の実            稲瀬奈加枝


     黄のかりん仏頂面をころがしぬ           野村光子


     一笑の塚に音立てくわりん落つ           茂里正治


     ぴちぴちとくわりん青實に雨跳ねて         高澤良一   
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8月 19日

2019-08-18 14:23:10 | Weblog
               秋茄子・一口茄子




     秋茄子の尻錆びてゐし翁寺           栗田やすし


     窯神に秋茄子供へ茶碗市            奥山比呂美


     秋茄子の紺俎板に移りけり           久野和子


     丸やかな秋茄子の尻地に触るる         松永敏江


     秋茄子の不揃ひばかり屋敷畑          宮地順一


     秋茄子の素揚げの肌の光りたる         石原進子


     笊に採るどれも小振りの秋茄子         丹羽康碩


     真つ先に秋茄子が売れ朝の市          井沢陽子


     神饌の大き秋茄子夜は食ぶ           長江克江


     秋茄子や嫁の両腕たくましき          古賀一弘


     秋茄子を網囲ひして山の畑           中村修一郎



          



     道のべやうす埃して秋茄子            山口青邨


     看護婦の手さげの中も秋の茄子          高橋栄子


     秋茄子の尻キチキチと塩の中           長谷川秋子


     その尻をきゅっと曲げたる秋茄子         清崎敏郎


     日にほてりたる秋茄子もぎにけり         川上梨屋



     


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8月 18日

2019-08-17 14:12:53 | Weblog
            蜩・ひぐらし・かなかな




     ひぐらしのふと鳴きやみし火葬塚        栗田やすし


     蜩や佐渡にあつまる雲熟るる          沢木欣一


     降るやうに蜩が鳴く粟畠            細見綾子


     かなかなをひねもす聞けり能登の旅       山崎文江


     ひぐらしが鳴き初む青岸渡寺の裏        栗田せつ子


     かなかなの声の沁み入る無言館         加藤百世


     かなかなの声か細しや里昏るる         武藤光晴


     蜩に山の一日始まりぬ             小栁津民子


     ひぐらしや細身の大日如来仏          松平恭代


     かなかなや夕闇迫る雑木山           矢野愛乃


     ひぐらしや上杉廟の杉襖            こころ



          



     かなかなの交錯したる谺かな           阿波野青畝


     蜩のこゑの刃先に触れてゐし           福永 耕二


     深山十九時ひぐらしの声折れさうに        秋元不死男


     ひぐらしのこゑの針なす駒ケ嶽          飯田龍太


     蜩が杉の林を濃くしたり             廣瀬直人




          
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8月 17日

2019-08-16 14:49:51 | Weblog
        燈籠流・灯籠舟・精霊舟・流灯・流灯会(八月十六日)




     流燈の月光をさかのぼりたり           沢木欣一


     父母か夫か流灯相ひ寄れり           都合ナルミ


     流燈の堰越ゆる時ためらへり          武田稜子


     川舟に乗るや流灯膝に置き           松永敏枝


     立ち雲や精霊舟に浄め酒            武藤光晴


     精霊を送りし後の闇深し            下山幸重


     夕映えの川へ流燈そつと置く          林 尉江


     川風をさけて火灯す送り舟           野々垣理麻


     流灯会火照りの残る石に座す          井沢陽子


     流燈のみな遡る被爆川             市原美幸


     声かけて膝の流燈波に置く           上村龍子



          
              やすし先生流燈句碑



          流燈会我も流るる舟にゐて           栗田やすし
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8月 16日

2019-08-15 14:06:09 | Weblog
              柘榴・実柘榴




     岩群に翡翠天に石榴の実            沢木欣一


     熟れざくろ猿がかかへて逃ぐるやに       細見綾子


     常滑の沖まで晴れて柘榴爆ず          矢野孝子


     実柘榴やアルミ格子の相撲部屋         国枝隆生


     土塀より食み出し柘榴撓なる          都築恭子


     実石榴に海の日が差す窯場道          掛布光子


     下校児が跳んで撫でゆく柘榴の実        上杉和雄


     落ざくろ拾へば土の温みかな          近藤きん子


     実石榴や征きて還らぬ兵の墓          村井まさを


     雨催ひ石榴のジャムを煮詰めをり        中川幸子


     水神の屋根にはぜたり石榴の実         加藤祐子


     石榴熟る吉野の空の薄曇り           林 尉江


     実石榴の一つ紅濃き翁寺            日野圭子



          



     昨日寸前今日また寸前熟れ石榴          林 翔


     露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す         西東三鬼


     実石榴や五戸より増えぬ隣組           手塚美佐


     実石榴や夕日の奥の絵本棚            能村研三


     ようやくに母の呪縛の石榴割れ          二村典子
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8月 15日

2019-08-14 14:23:40 | Weblog
          敗戦忌・終戦日・八月十五日




     生きのこり黒き句集や終戦日           沢木欣一


     靖国の靖はわが名敗戦忌            栗田やすし


     半月の朱いろに滲む敗戦忌           河原地英武


     敗戦忌チラシの裏に句を記す          国枝隆生


     米櫃に米を満たせり敗戦忌           栗田せつ子


     拭きこみし卓袱台の艶敗戦忌          上杉美保子


     苦瓜の爆ぜて真つ赤や終戦日          都合ナルミ


     早稲の穂の重く色づく終戦日          武藤光晴


     半月に暈かかりたる終戦日           鈴木みすず


     色褪せし父の肩章敗戦日            丹羽一橋


     珊瑚積む墓標八月十五日            関根切子


     引揚げの白き埠頭よ敗戦忌           谷口千賀子


     敗戦忌父かりかりと時計巻く          渡辺慢房



          



     終戦日妻子入れむと風呂洗ふ           秋元不死男


     終戦日夕焼くさき水を飲めり           福永耕二


     隣へ貸す八月十五日の大鍋            寺井谷子


     ハモニカのとんぼ印や敗戦日           政木紫野


     みんみん鳴くゆふぐれ八月十五日         角川春樹



          
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8月 14日

2019-08-13 12:33:39 | Weblog
                 踊・盆踊・踊の輪・踊唄・踊笠・阿波踊・念仏踊




     盆踊り汗水節といふ曲も             沢木欣一


     踊り見に来て川音のよろしもよ         細見綾子


     星近し一揆の里の盆踊り            栗田やすし


     産土にひびく雨乞踊り唄            下里美恵子


     抜け道をして出合せり盆踊           小栁津民子


     合掌に始まる念仏踊りかな           小田二三枝


     あを白く山城灯る盆踊             兼松 秀


     爪先に踊の火照り残りけり           大島知津


     踊りの輪ほどよく伸びて一揆の地        丹羽康碩


     軒端までのびてちぢんで踊の輪         武田稜子


     田面吹く夜風袂に盆踊             上村龍子


     宿に干す赤き鼻緒の踊下駄           服部鏡子


     つまづきて鼻緒ゆるびし踊り下駄        山本悦子



          



     暗き沖へ手あげ爪立ち盆踊            西東三鬼


     念佛のやうに返して踊唄             黒田杏子


     麻痺の手の思はず動く盆踊り           前田芳子


     盆踊恋の仕種をはばからず            井沢正江


     踊唄息つぐときの波の音             鹿喰悦子
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8月 13日

2019-08-12 17:12:12 | Weblog
               盆・魂祭・盆棚・棚経・盆仕度・盂蘭盆・精霊棚




     草刈つて蟹の横ぎる盆の道           沢木欣一


     紙漉村洗ひ干されし盆浴衣           細見綾子


     真白なる十団子を吊る峡の盆          栗田やすし


     魂まつり木匙で掬ふ寄せ豆腐          中野一灯


     山の風背戸より入れて盆用意          矢野愛乃


     盆なれば亡き友も来よ同窓会          武藤光晴


     百日の嬰子を囲み盆供養            上田博子


     盆用意朴葉を洗ふ外厨             山下智子


     蘇鉄の葉短かく刈られ盆の寺          遠藤斎子


     棚経の僧つかつかと来て帰る          丹羽康碩


     盆料理色の褪せたる母のメモ          木全一子


     咳一つこぼし盆僧経始む            河村惠光


     古畳ふいて迎へし盂蘭盆会           塩坂恵子


     亡き母の居る気配して盆の入り         佐々木千種



          



     深山路に雲ふむ尼僧盂蘭盆会           飯田蛇笏


     夕明りして新盆の家二・三            飯田龍太


     新盆の墓へ端山を下りゆく            廣瀬直人


     ほゝづきのわかき青さや魂まつり         鈴木真砂女


     ささやかな魂棚庭の花剪つて           山口青邨




          
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