万緑・萬緑
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
「萬緑の」は「萬緑(万緑)」は紅一点 「万緑叢中紅一点」の一説。 中国の王安石が
作った「詠柘榴詩」という詩にある言葉で、「緑の草むらの中に一つだけ赤いザクロが
咲いている」ということを指していた。 現在では意味を転じて、男性ばかりの中に女性が
一人だけ混ざっていることや、ひときわ目立つ存在のことを言う。
掲句が季語として初めて用い定着させた句である
辺り一面が草木の緑に覆われた状態を万緑(ばんりょく)と言う。
初夏の新緑のみずみずしい緑よりも強い、真夏の深い緑
万緑の目にしむ伊賀と思ひをり 細井綾子
万緑や書を借りて出る赤煉瓦 栗田やすし
万緑の正殿に置く石一つ 国枝隆生
万緑や鳥語それぞれ美しき 武藤光晴
万緑にせり出す寺の大舞台 伊藤範子
万緑に開きし森のエレベーター 利行小波
万緑の上にみどりの伊吹山 福田蓼汀
カーテンは閉めじ万緑裡に寝ねむ 林 翔
万緑の仕上げの雨の五六粒 岡本 眸
水軍の島万緑に盛りあがり 西村旅翠
万緑や動かぬ山の近づき来 永田耕一郎
雲水の声万緑の堂に満つ 加藤耕子
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